遠野放浪記 2013.05.24.-05 県境の晩春 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

藤田駅を過ぎると、列車は少しずつ高台へ上って行く。5月初頭にはまだ県北の田圃には水が入らず、荒涼とした風景を見せていたが、今は期待した通り、此処も一面水鏡と化していた。


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初めて遠野を訪れたときからずっと、いつか厚樫山の高台から見下ろす街が水と輝きに包まれる光景が見たいと思って来た。

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そして列車はいよいよ山裾へ……。

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見慣れた筈の箱庭のような街には、俺の小さな願いを叶える湖が幾つも出来上がっていた。

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またひとつ、いつか見たかった風景が見られた……。

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貴重な晴天にも恵まれ、福島県北の大地は太陽の光をいっぱいに浴びてキラキラと光っていた。

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列車は次第に街から離れて行く。遥か彼方の山裾に広がる街を眺めながら、宮城県へ差し掛かる。

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貝田駅が福島県最後の駅で、其処から数百メートルで白石市。

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宮城県南端の田園地帯は比較的水が入るのが早く、5月初頭には既に一部の田圃に水が張られていたが、今はそれも終わり、ほぼ全ての田圃に稲が植わっていた。

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太陽は空高く昇り、眩しいくらいに東北の大地を照らしている。

宮城にももう夏が近い。

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列車は刻一刻と東北一の大都会・仙台に近付いているが、沿線の風景は概して長閑な農村のそれである。田圃に入って作業をしている人の姿が見えた。

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幾つもの小さな街を見送りながら、県南の主要駅である白石駅へ。隣の越河駅(通過)から実に8.2kmもあり、暫くの間のんびりとこの美しい風景を眺めていることが出来る。

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この街のひとつひとつに、俺が知らない物語がある筈だ。いつかそれを自分の目で見に行きたいと思うのである。