遠野放浪記 2013.05.24.-04 福島の晩春 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

今まで白河以北の田圃に水が入っている風景というものは見たことが無かったが、今日は満面の水を湛えた大地に出会えた。


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東北にもようやく、麗らかな晩春が訪れている。


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白河駅を出てすぐ左手には、桜岡前山桜岡裏山という丘陵が連なっている。それを過ぎると、広大な平原が一面水鏡と化した光景に出会うことが出来る。

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明るい日差しに照らされた福島の大地はキラキラと輝いていた。

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この当たり前にある筈の景色が毎年訪れることを、福島の人も旅人もどれだけ願っていることか。

少しの間、心を裸にして、今年も福島に戻って来た春の輝きを有るが儘に享受しようと思う。

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郡山を過ぎ、本宮を過ぎ、二本松を過ぎ……どれだけ北へ向かっても、車窓には何処までも只管に一面の水鏡が広がっている。福島の春が永遠に続くかのように。

願わくは来年も、その次の年も、百年後も此処を通った旅人が同じ風景に出会える日本であって欲しい。そんな当たり前のことを神に祈らずにはいられない、儚くも美しい邂逅だった。