遠野放浪記 2013.01.14.-02 目覚める街 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

澄み切った闇が充満する遠野盆地を、始発列車は直走る。時折遠くに見える小さな集落の明かりは、人の温もりを求めて泣いているようだ。


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めがね橋から見下ろす宮守の市街地。何処にも行けない明かりが寂し気に、闇の中に浮かんでは消える。

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しかし、夜の闇がいくら濃かろうとも、いつか何処かで朝は来る。空は次第に淡い色合いに変わっていき、やがてそれは長い夜の終わりを世界に告げる白となった。

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綾織を出発して一時間弱、田圃と山ばかりだった車窓に別れを告げ、列車は花巻市街地に突入した。

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ようやく目を覚ました街は、切り付けるような寒さに身震いしながらも、いつもと違って仕事に出発しなくても良い月曜日の朝を楽しんでいるように見える。

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列車は一先ず旅を終え、花巻駅の1番ホームに到着。祝日ということでいつもよりも少ない乗客たちは、足早に改札の外か、東北本線へ乗り換えるために2番ホームへ向かって行った。

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やがて盛岡行きと北上行きの列車が行ってしまうと、ホームの上からも人がいなくなった。

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次の一ノ関行きの列車が来るまで30分くらい時間があるので、のんびりと列車の到着を待つ。

東北本線の待合室には暖房が備え付けられ、暖かい空気に満ちているが、俺はホームの上で寒風を楽しむ方が性に合っている。

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跨線橋から見上げた花巻の空は曇っているが、心なしか雪は少ないように見える。

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ホームの上にも、全くと言って良いほど積もっていない。

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酷い日には、簡単な屋根などまるで役に立たないくらい、横殴りの雪が容赦無くホームを埋めていくのだ。

今日は本来の色合いをしたホームに立てるだけ、充分に穏やかな天気だと言えるだろう。