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大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

 (23) 隣の駅ってどっちかな。今日は皆が集まりやすいように吉祥寺で飲んでいた。西なら私の帰る方面の三鷹、東なら西荻窪に。冬子なら渋谷方面に乗っていける場所なのだ。それで、ここが集まりやすかった。

 

渡辺くんが指で方向を示していたが、建物の中なのであっちと指されても方向音痴の涼子にはどっちだか良く分からない。

 

弘美は分かっているのだろうか。私がしつこく聞くのは、なんか嫌らしくもみえてしまい、頭の中でどっち ? と考えていたら「ここからでも歩ける距離です。実は健康のために公園内を通り仕事場から歩いて来たんです」

 

「仕事は大丈夫だったのですか」

 

「今日は予約のお客さんは午前中だけだったので、夜は閉めて来ちゃいましたよ」

 

「あはは、個人経営者は自由でいいですね」そんな公園内を通り抜ける近道なのは知っていた。その後、冬子も来ないし、久しぶりに会った渡辺くんなので緊張、突っ込んだ話も出来ず解散した。



涼子は酔って帰宅、夫は泊まると前もってメールが入っていたので少々深酒する。普通なら落ち込む気持ちになるのだが、今日は気分は最高。誰も居ない暗い部屋に明かりを点けると「ただいま」とソファーに倒れ込んだ。

 

こんな酔い方は、いつの日以来だろうか?考えてみれば、成人式の日に遅く帰宅した時、気持ち悪く、もう二度と飲まないとの思いがあったが、今は心地好い。

 

誰も居ない家で・・渡辺くん格好良かったよ、逢えて嬉しかったぁ〜でも 冬子と結婚してたのはショック・・会に出席してサプライズ了解したよ。また会える・・


折角だから、また制服を穿いてみようかなと先生の前で一度、披露したので躊躇はなかった。

 

シャワーを浴びた後「今日は行けなくてごめん。夫は、野球部の集まりにサプライズで来てくれることに感謝しますと言ってたよ。勝手なこと言って涼子や弘美には迷惑だよね、断ってもいいからね (笑) 日が決まったらLINEするね」と冬子から連絡があった。

 

・・涼子は断ることは考えてないけど、冬子も来るのだろうか ? つづく

(22) 「僕も言ってみれば第二の人生かも」

 

「え?どうして」

 

「プロ野球を目指していたんだけど、致命的な怪我をしちゃって、今はスポーツトレーナーで頑張ってますから」

 

「へー、スポーツ選手に関わるお仕事?」

 

「健康を意識した整体やリハビリなどもやってますけど、美容にも良いですよ」

 

「へぇ」

 

「開業してるけど、妻は子供や母の面倒も看ないといけない時なので雑用頼めないのですよ。もっとも仕事の手伝いなど、やる気も無いみたいですけどね」

 

「あはは、冬子らしい」

 

「最近はちょっと忙しくなってきたので、受付などを依頼しようかと思ってるんです」

 

「そうなんだ、人気があるんだね」


どこで開業しているのだろうかと気になって「どこでやってるの?」



「松田と同じ雑居ビル内ですよ」

 

「え?・・それは心強いね」

 

「お互い切磋琢磨です。あいつは立ち仕事だから足や腰が痛いと言うので施術してあげるけど、その代わりラーメン無料で食べてます」

 

「あはは、今度の集まりの会、何処なんですか?出掛けてみるかな、涼子どう?」

 

「いいよ」場所はマツヒロラーメンの空いてる時間帯を貸し切ると言う。つづく

 (21) 「野球ばかりで女性は苦手だった。そんなこともあり親から『早く結婚しろ』言われて、気が付いたら冬子が近くに居たんです」

「恋愛結婚だったの?羨ましい」

「どうですかね?」

「私たちも野球の試合に応援に行ったことあります」

「あ〜知ってましたよ」

 

意外な返事「え、そうなの?」

「僕だけじゃなくて、野球部の皆が知ってますよ。一組の鈴木さんや滝口さんの事は」

「野球部では有名でしたよ。特にテニス部の鈴木涼子が来ているって知ると、それで皆が奮起してましたからね」

「ここに来たのは二人が来ると聞いて、懐かしくって来ちゃいました」


「えーそうなんだ!嬉しいですね」

「滝口さん!・・知ってますか?逆転ホームラン」

「あった、あった!。泣けちゃったよ良く打ったよね、二番松田くん」

「その松田浩之は滝口さんが好きで、応援に来ていることを告げると人が変わったようになってましたよ。いつもボールが怖いと言ってたのが、嘘のように食らいつて打てたと後で聞きました。それが、あのホームラン」

「えええ、感動しちゃうな、その時に知ってれば付き合っていたかも」


酔いが、弘美の心を駆り立てた。

「今、松田はラーメン屋をやっていて食べに行くと、今でもホームランの話で盛り上がります」


そのラーメン屋は、隣の駅の雑居ビル内でマツヒロラーメンだと知ると「涼子、今度行こうか」と誘う。

「そうだね、行きましょう」



その話が終わると渡辺くんは「今度、俺たち野球チームの集まる会があるんだけど、お二人をサプライズで呼んだら皆が感動するだろうな、来てくれませんか?」

「ええ、ダメよ歳だし」


「大丈夫です。僕たちもオッサンばかりです。でも二人とも変わらないですね。僕も野球ばかりやってないで恋愛もしたかった。人生やり直したいくらいだ」その考え方は涼子の心にも同じ思いがあった。

「参加は考えておきますけど、それよりお子さん大丈夫ですか?」

「熱は少し下がったようですが、一緒に暮らす母が少し耳が遠いので任せられないですよ」

「うちは子供居ないから羨ましいわ。それに比べて涼子の娘さんは嫁いだと言うから人生色々ね」

「あはは、もう人生やりとげたようで、あたま空っぽよ」


涼子は自分をさらけ出すと「いやいや、これから第二の人生です」


渡辺の言葉は積極的だった。つづく