(21) 「野球ばかりで女性は苦手だった。そんなこともあり親から『早く結婚しろ』言われて、気が付いたら冬子が近くに居たんです」
「恋愛結婚だったの?羨ましい」
「どうですかね?」
「私たちも野球の試合に応援に行ったことあります」
「あ〜知ってましたよ」
意外な返事「え、そうなの?」
「僕だけじゃなくて、野球部の皆が知ってますよ。一組の鈴木さんや滝口さんの事は」
「野球部では有名でしたよ。特にテニス部の鈴木涼子が来ているって知ると、それで皆が奮起してましたからね」
「ここに来たのは二人が来ると聞いて、懐かしくって来ちゃいました」
「えーそうなんだ!嬉しいですね」
「滝口さん!・・知ってますか?逆転ホームラン」
「あった、あった!。泣けちゃったよ良く打ったよね、二番松田くん」
「その松田浩之は滝口さんが好きで、応援に来ていることを告げると人が変わったようになってましたよ。いつもボールが怖いと言ってたのが、嘘のように食らいつて打てたと後で聞きました。それが、あのホームラン」
「えええ、感動しちゃうな、その時に知ってれば付き合っていたかも」
酔いが、弘美の心を駆り立てた。
「今、松田はラーメン屋をやっていて食べに行くと、今でもホームランの話で盛り上がります」
そのラーメン屋は、隣の駅の雑居ビル内でマツヒロラーメンだと知ると「涼子、今度行こうか」と誘う。
「そうだね、行きましょう」
「ええ、ダメよ歳だし」
「大丈夫です。僕たちもオッサンばかりです。でも二人とも変わらないですね。僕も野球ばかりやってないで恋愛もしたかった。人生やり直したいくらいだ」その考え方は涼子の心にも同じ思いがあった。
「参加は考えておきますけど、それよりお子さん大丈夫ですか?」
「熱は少し下がったようですが、一緒に暮らす母が少し耳が遠いので任せられないですよ」
「うちは子供居ないから羨ましいわ。それに比べて涼子の娘さんは嫁いだと言うから人生色々ね」
「あはは、もう人生やりとげたようで、あたま空っぽよ」
涼子は自分をさらけ出すと「いやいや、これから第二の人生です」
渡辺の言葉は積極的だった。つづく
