Chet Baker Sings | ScrapBook

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チェット・ベイカー・シングス/チェット・ベイカー

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ジャズマンの多くは破天荒な生き方をしているようだが、Chet Bakerほどその破天荒を絵に描いたような人物はいないだろう。若き日のポートレイトなど、ジェームス・ディーンかと思うばかりの容貌から麻薬にまみれた彼の影の人生を伺い知ることはできないだろう。

50年代の初頭から活躍を始めるが、その絶頂期は案外短く、60年代以降もこつこつとアルバムを出しているものの、彼を聴くなら晩年の枯れた味わい深いアルバムよりもパシフィックレーベルに残された若き日の彼を聴きたい。

特に有名なこのChet Baker Sings にはモノラルバージョンとステレオバージョンが発売されている。曲順が違っていたり、疑似ステレオにされていたり、ギターがオーバーダビングされているなどの違いはあるものの、彼の演奏や歌声が変えられているわけではないから、よほどのマニアでない限りどちらを聴いてもChet Bakerを充分堪能できるだろう。

My Funny Valentineの歌唱が有名だが、僕はI Fall In Love Too Easilyに聴かれるやるせなさや、Look For The Silver Liningのはにかみや若々しさを聴くためにこのアルバムに耳を傾ける。

ちょうどこんな秋の夜、温かい紅茶を飲みながらひとり聴きたいアルバム。ジャケットのデザインも秀逸。