Dimaとモスクワの「デーモン」でも共演したバス歌手、アレクサンドル・ツィムバリュクのインタビュー記事を見つけました。
彼は故郷ウクライナで国立オペラに出演するため、キエフでインタビューを受けました。
その中でDimaについて語っている一文が、とても心に突き刺さりました。
Shortly before his death, Dmitri Hvorostovsky confessed:" I have not yet sung ... "
原文はロシア語ですが、その部分を英語でコピペしておきます。
"Recently, we often corresponded, I visited Dima in London, when I had a tour in Covent Garden. We were supposed to sing together, but, unfortunately, for the health of Dmitri could no longer poeform.
I remember I came to his house in London. Dima tried to keep fit, he laughed. But I saw that it was bad for him. He always felt terrible pain, which simply destroyed him. According to the forecasts of doctors, he had to live only six months, but he held on to three more. I think, thanks to my crazy will power, the desire to live and sing. As Dima admitted to me: "After all, I have not sung yet ..."
まず、ツィムバリュク氏がロンドンのDimaの家を訪れた時期ですが、コヴェントガーデンでDimaと一緒に歌うはずだった…という言葉から、ROHの「イル・トロヴァトーレ」に出演中の時期だと思われます。
このトロヴァは2016年12月から2017年2月までありましたが、Dimaは12月からは病気の再発のためオペラからは全撤退していますし、さらに肺炎で入院もしましたから、ツィムバリュク氏が会ったのはDimaが退院してからの、2017年2月頃ではないかと思われます。
その頃、Dimaは酷い痛みに耐えながらも気丈に振舞い、笑っていた…とあります。
さらに医師の予測では、この時既に余命6ヶ月だったようですが、Dimaはさらにそこから3ヶ月持ちこたえた…とのこと。
2月から6ヶ月…。
つまり、Dimaは夏までもつかどうか…と言われていたことになります。
でも、彼は頑張りました。
10/16に55歳をむかえ、さらに1ヶ月生き抜いたのです。
"After all, I have not sung yet ..."
Dimaは残された時間、できるだけ歌いたかった、歌うことを選びました。
4月のトロントでのネトレプコ&エイヴァゾフ夫妻とのコンサート、5月のMETガラへのサプライズと、サンクトペテルブルクの野外ガラ、そして6月のクラスノヤルスクと、最後のパフォーマンスとなったグラーフェネック…。
すべて、痛みに耐えながらのパフォーマンスだったんだよね?
夏までの命といわれたから、グラーフェネックの時、共演のアイーダちゃんに「これが僕の最後のコンサートだ」って言ったんだよね?
亡くなった時より今のほうが悲しみが深いのは、あとから色々な情報が入ってきて、Dimaの気持ちを考えるようになったからなのかも…。
病気…しかも癌なんだから、Dimaの肉体的・精神的な苦しみは凄まじかったはず。
当たり前だよね。当たり前なんだけど、Dimaはずっと隠し続けていたし、私たちを騙し続けていたから気づかなかった…。
医者に「あなたは死なない」と言われた…と、Dimaは最初のインタビューで語っていた。
あれも嘘だった。
ちょっと考えればわかったのに…。
Dimaの嘘に騙されて、彼の苦しみに気づいてあげられなかった。
もっと一緒に苦しみたかった。
長い間Dimaを苦しめて、家族から、友人から、そして私たちファンから彼を奪い去った病気が本当に憎い…!
Dima、ごめんね、ごめんね。
痛かったよね。苦しかったよね。
最後は話すこともできなくなって、本当に辛かったよね。
わかってあげられなくてごめんね。
早くDimaに会いたい。
感謝の言葉をいっぱい伝えたい。
あなたに出会えて、あなたの歌を聴けて幸せだった…。
2015年1月、モスクワの「デーモン」で。右側の男性がツィムバリュク氏。