今回は、伊豆急行の観光列車「リゾート21」について。
【1】リゾート21とは?
「リゾート21」とは、熱海と伊豆急下田の間を走る伊豆急行の車両だ。1985年から走っているから、30年以上になる。
基本的には、特別料金が不要で全車自由席だ。ただし、「リゾート踊り子」として、東京始発の全車指定席の特急として、運転されたこともある。「リゾート踊り子」として運転される際は、3列座席のグリーン車も連結される。
食事や車内販売はないが、海に向いた座席は、リゾート車両の原型になったとも言えそうだ。
【2】キンメ車両と黒船車両
現在、「リゾート21」は、2種類の塗装がなされている。
《その1》キンメ車両
伊豆の温泉旅館で出される料理・金目鯛をイメージした車両だ。
《その2》黒船車両
幕末の日米和親条約で開校した下田。それにちなんで黒船車両が作られた。
《参考》他のリゾート21
「リゾート21」の車両は、様々な塗装がある。たとえば「リゾート ドルフィン」塗装の車両がこちら↓。(2014年3月撮影)
【3】先頭の展望室
「リゾート21」の先頭車両の半分は、展望室になっている。
最前列は低い座席。2列目、3列目になるにつれ、少しずつ高い座席になっている。
だから、3列目あたりから席が埋まる時もある。
リクライニングはしない。乗車券だけで乗れる列車だから、当然とも言えるけど。
展望室は、段差があるため、事故防止の観点から立ち席での利用はできない。またストロボの仕様は禁止となっている。
運転士の様子が良く見えるのも、ポイントだ。
なお、先頭はさすがに人気で乗客が写ってしまう。だが、最後部は人はまばらだから、撮影しやすかった。最後部が、狙い目だ。
【4】海側を向いた車両
展望室以外の車両も、独特な座席の配置になっている。
「2人ボックスシート」「4人ボックスシート」に加えて、「海側に向いた席」がある。
海を向いた座席は、3人がけのシートが並ぶ。
伊豆急行線は、海が見える方角が決まっているので、人気の座席だ。
なお、弁当を食べるようなテーブルは無い。
ソファー席の裏側には、荷物が置けるスペースがある。
山側2人席には網棚があるが、海側には網棚ないから、丁度良いと言える。
黒船車両の3号車には、写真↓のような席もある。グループ客には最適の席だ。
【5】キンメ車両の中
伊豆の温泉旅館で出される金目鯛が、車両にあふれている。
車両の外にも、描かれている。
座席にも、金目鯛の模様がいっぱい。
写真のように、飲み物が載せられるテーブルがある席もある。
山側席には網棚がある。
網棚から、稲取で有名な吊るし飾りが提げられている。→(間違った点を修正しました)
デッキには、古い木で魚が作られている。ちょっとした芸術作品だ。
7両編成の列車は、地元の市と町の魅力をPRする車両になっている。
1号車は南伊豆町、2号車は下田市、という具合だ。
ただし、3号車だけは「キンメダイの博物館」になっている。
キンメダイの知識を紹介している。
こちらは、伊東市の車両。具体的な観光PRというよりは、車両の雰囲気を良くする装飾で埋まっているという印象だ。
【6】黒船車両の中
黒船車両は、車両の海側の網棚部分が撤去されて、黒船&幕末に関する資料が飾られている。
全部の車両を見て回るのも面白い。
1号車「ペリーと黒船写真絵巻」、2号車「幕末開国絵巻」、3号車「下田開国絵巻」、4号車「伊豆急沿線の歳時記」、5号車「日本人が描いた外国人絵巻」、6号車「世界で発信された幕末ニッポン」、7号車「下田と坂本龍馬」となっている。(普通列車運転時)
説明文もあるが、絵や写真が多くて分かりやすい。
坂本龍馬の写真が、扉の前に張られている↓。実物大のようだ。
ペリーの全身写真もあるぞ。↓
【7】凄いぞ「リゾート21」
伊豆急行の「リゾート21」は、凄い車両だと思う。
《1》30年以上前からの観光列車
この5年なら、新しい車両を導入して観光客を増やそうという動きは、当たり前のように見られる。しかし、バブル前の1985年から、座席が海を向いた車両を作ったのは、素晴らしい発想だと思う。他の観光列車にも影響を与えたと思う。
《2》豪華な普通列車
一時期は、特急列車にも使われた車両だが、普通列車でありながら、乗って楽しい豪華な車両なのは、素晴らしい。前方が良く見える展望室、海に向いた席ともに素敵だ。
観光シーズン以外は、7両編成はやや過剰だが、短くせずに「客が席を選べる」状態で走るのは、有難いことだ。
《3》進化していく
「キンメ車両」「黒船電車」と、新たなコンセプトを再構築して、更に進化している。とりわけ、「黒船電車」の、博物館のような利用の仕方には、驚かされた。
強いて言えば、車内販売が無いのは残念だ。
地元の観光協会あたりが、列車を限定して、土産物でも売るのなら、十分可能だと思うのだけどなあ。