JR九州の観光列車の中でも、特に人気があり乗車率が高いのが「指宿のたまて箱」だ。
「指宿のたまて箱」は自由席なしの全車指定席だから、地元の住民ではなく観光客を想定した列車と言える。全車指定席の観光特急でも、「A列車で行こう」「海幸山幸」は土曜休日運転が基本だ。
しかし、「指宿のたまて箱」は「ゆふいんの森」と共に、毎日運転だ。更に「指宿のたまて箱」は、満席の日が多く、乗車を断念したことが何度もある。
今年2015年2月に、九州に旅行した時は、さすがに観光シーズンではない時期だけあって、直前に旅行が決まったのに何とか指定席を確保できた。ようやく2回目の乗車ができた。今回は、その時の乗車記だ。
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【車両のつくり】
鹿児島中央駅のホームに、白と黒の「指宿のたまて箱」が入ってきた。列車が到着すると、扉の上部から、白い煙が出る。↓
列車は2両編成。繁忙期は3両になる日もある。
座席は、様々な種類の座席に分かれている。さすが水戸岡車両だ。
まずは、よくあるリクライニングシート↓だ。800系つばめ型と似ている座席だ。
ボックスシートもある。リクライニングはしないが、大きなテーブルがあり、グループ利用には有難い。
そして私が一番好きな座席が、こちら↓。海に面したカウンター席の後方に、ソファー席がある。カウンター席の窓が大きいから、後方でも景色がよく見える。そして座席がゆったりしていて、非常に快適だ。
今回も往きは、このソファー席を利用した。
ちなみに、子ども用の座席もある。この席は指定席ではなく、他の指定席を取った客が自由に使える。大人が座るのは、小さすぎて無理だ。
【車内販売】
2両編成だが、JR九州自慢の観光列車だけあって、車内販売がある。弁当はないが、様々な飲み物、お菓子類、お土産が揃っている。
写真のような木製ワゴンで巡回してくる。直接カウンターに出向いても買うことができるが、アテンダントさんが車内に放送案内をするなど他のサービスをしている時は、買えない。
ワゴンの上段は、主にグッズが乗っている。カウンターの左には、乗車記念証とスタンプが用意されている。
今回私が鹿児島中央・指宿間を往復乗車して、車内販売を4回利用した。
★発泡酒「さつまゴールド」520円、つまみ「茶々丸」170円
遠くの観光地に出かけると、やはり地元の酒が飲みたくなる。豆でできた「茶々丸」も、面白い。
★車内限定「いぶたまプリン」410円
写真にはないが、ホットコーヒー260円と共に注文。「いぶたまプリン」のフタを開けて写真を撮っていると、列車の揺れで、プリンが真っ逆さまに落下。濃厚なプリンなのが幸いして、ほとんど出なかった。私は少しだけ出た床をふいて、ビンのふちをふいて、スプーンで食べたけど。
こんなわけで、味わう状態ではなく、味は忘れてしまった。
この時も、ビンは動いたけど、JR九州紙コップはビクともしなかった。
★土産「玉手箱スイーツ(空豆クッキー)」720円
これは、お土産用に買ったスイーツだ。少しの量で720円だから、かなり美味いと思われる。
★「クリアファイル」260円
アテンダントさんが2人乗務しているので、片道で二人から買いたくなる。
車内販売のメニューも用意してあった。
≪1枚目≫今度乗ったら、面白そうだから車体と同じ白と黒の「カメロンパン」を買いたい。
≪2枚目≫この中では、指宿サイダー260円も人気だ。
【おもてなし】
「指宿のたまて箱」では、JR九州の観光列車の中でも、トップクラスの「おもてなしの心」が見られた。これは、非常にうれしい。
乗車記念証とともに定番となったのが、記念撮影だ。主に子どもがかぶる帽子もある。
この日は中国からの観光客がほぼ半分を占めていたが、何枚も撮影して時間がかかったものの、楽しそうな表情だから、こちらも楽しくなった。引率された団体旅行ではなかったが、言葉が通じなくても、分かってくれるのがうれしい。
指宿に到着したら、地元の方が観光客に対して「写真撮りましょうか?」だ。中国人にも日本語が結構通じるものだ。
列車に手を振るのも、観光客をもてなすことになる。指宿の直前の菜の花が咲いている畑で、多くの人が黄色い旗を振ってくれた。
更に驚いたのは、次の写真だ。小学校の二階から、子どもたちが黄色い旗を振ってくれたのである。毎日ではないようだが、気持ちが伝わってくる。「こういう凄い人気の列車が、ここを走っているんだ!」と誇りに思う気持ちが伝わってくる。
指宿から鹿児島中央に行くには、運賃は1000円、特急料金は1130円が必要だ。特急に乗ると倍以上の費用が掛かり、満席の日も多いから、地元の人は現実には乗る機会はあまりないと思う。
でも、こういう光景を見ると、観光特急は地元の人に歓迎されて走っているのだなと、あらためて感じる。
車内販売などで、丁寧な応対が有難かったので、アテンダントさんに「鹿児島ベースの方は、立派な接客で凄いですね」と、マニアだと分かる表現でお礼を言った。
すると「いえいえ・・」と自分なんてまだまだと強く否定するような表情をした。謙遜、というよりは、「先輩の中には自分より数段上の人がいるから、自分なんて、まだまだです」と言いたかったのではないかと推測する。
JR九州では、「かもめ」「ソニック」で車内販売が廃止された。しかし、「指宿のたまて箱」のような観光列車は、いつまでも頑張ってほしい。