【実験】紙コップの滑りにくさ | 車内販売でございます。

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 今回は、車内販売のコーヒーでお世話になっている「紙コップ」の話。


【1】「はじめに」 

 車内販売のホットコーヒーに使う紙コップは、各社で異なっている。


 この2月3月と各地で車内販売のホットコーヒーを飲み、その紙コップを持ち帰ったのだが、いくつか並べると、いろいろ違っているのが分かる。

 さまざまな種類の紙コップを並べてみると、紙コップの「性能」を比較したくなった。

 紙コップの「性能」とは、たとえば揺れても動かないことだ。

 以前、東京行の東海道新幹線「のぞみ」に乗っていたら、台風が直撃して、2時間途中で停止したことがある。停止した場所が、浜松駅の直前の急カーブだった。速度をあまり落とさずに急カーブを通過するために、線路が傾いている。その地点で停止したものだから、さあ大変。テーブルに置いた飲み物が、滑り落ちるのだ。私は手で押さえたから落ちなかったが、あちこちでテーブルからペットボトルが落下していた。

 逆の例もある。JR九州の肥薩線、八代~吉松間は、かなり列車が揺れる。しかし、ホットコーヒーを車内販売で頼んだが、列車が左右に揺れても紙コップは全くずれない。揺れても動きにくい工夫がされていそうだ。

 よしっ!これだけ紙コップがあるなら、性能を比べられる。実験をすることにした。


【2】『実験する紙コップ』

 どのくらいの傾きで紙コップが動くかを、実験することにしたが、調べる紙コップは、次の7種類だ。

  

【1】東海道新幹線・・・3月のダイヤ改正からSuicaなどのICカードが使えるようになった。このことをPRする絵柄の紙コップ。(使うのは1種類だが、絵柄を見やすくするため写真には2個映っている)


左【2】山陽新幹線で「みそ汁」を注文した時の紙コップ

右【3】山陽新幹線でホットコーヒーの紙コップ。柄以外は全く同じに見える。


左【4】スーパービュー踊り子のグリーン車で、無料のホットコーヒーを頼んだ時の紙コップ。

右【5】JR九州でホットコーヒーを頼んだ時の紙コップ。JR九州の紙コップだけ、背が高い。他社は約8.4cmだが、少し背が高く9.3cmだ。


左【6】普通の紙コップと比較するために、100円均一の店で買ってきた紙コップ。「くまもん」の柄だ。

右【7】「はやぶさ」などJR東日本の多くの列車で使われている紙コップ。



 以上の7種類の紙コップで、滑りやすさを実験した。

【3】『実験方法』

 車内販売で使われていた紙コップに、150mLの水を入れる。そして自宅にあった木の板を傾けた状態にする。そして、どの程度の傾きで、紙コップが滑り落ちるかを調べる。



 45cmの固い板の片方に、CDのケースを入れて傾かせる。(CDのケースは下から36cmの場所で板と接する) 

 ここに150mLの水を入れた紙コップをゆっくりと置いて、紙コップが滑り落ちるか調べる、というわけだ。「ゆっくり置く」とはいっても、それなりに水は揺れる。動摩擦係数と静摩擦係数は違うが、全部の紙コップが同じ条件で比較することに変わりはない。

 CDのケースは、10個で10.3cmだった。ほぼ1個で1cmと言える。


【4】『実験結果』

何枚のCDで傾けたら紙コップが滑り落ちたか、その実験結果を発表する。

(1)最初に滑り落ちたのは、

「100円均一くまもん」でCD8枚。(斜面の角度は約13度)

当初は、5枚(斜面の角度8度)くらいで滑り落ちるのでは?と思ったが、すべての紙コップは健闘した。初めて滑り落ちたのは、「100円均一くまもん」だ。

(2)次に滑り落ちたのは、

「山陽新幹線」「SV踊り子グリーン車」でCD9枚。(斜面の角度は約14度)

「山陽新幹線」と「みそ汁」のカップは同じ材質と思えたが、微妙な差が出てしまった。もしかしたら、実験したカップの下の方が持ち帰る時にすり減った等の違いがあったのかもしれない。

(3)そして続いて滑り落ちたのは、

「JR東日本」「東海道新幹線」「みそ汁」でCD10枚。(斜面の角度は約16度)

よくぞここまで頑張ったという印象だ。

(4)今回、最後まで滑り落ちなかったのは、

「JR九州」の11枚だ。CD10枚では斜面に踏みとどまったが、11枚だと滑ってしまった。(斜面の角度は約18度)

 次の写真↓は、JR九州の紙コップだけ踏みとどまった様子。この角度で滑り落ちないなんて、凄い性能だ。




 紙コップコンテストは、各社想定外の健闘を見せたが、JR九州の紙コップが優勝した。

 JR九州のホットコーヒーは、値段が260円と他社より安く、ほぼ例外なく笑顔で丁寧な接客が魅力だ。更に僅差とはいえ、滑りにくい紙コップを使っていることが判明した。JR九州に拍手っ!。パチパチ。


【5】『他の飲み物は?』


 JR九州が優勝したが、ここで気づいた。ペットボトルや缶コーヒーは、滑りやすいのだろうか?

 そこで、追加実験を行うことにした。

「缶コーヒー・ボス」「コカコーラ300mL」「朝の茶事」の3種類だ。普通列車グリーン車でグリーンアテンダントさんが販売しているものだ。(ドリンクバーで飲み放題の直後にグリーン車に乗っても、もう飲みたくはない。しかし、頑張るアテンダントさんがいると、つい買ってしまう。こんなわけで、飲まないで持ち帰る飲み物が手元に何本かあったのですよ)



 すると、驚く結果になった。

 ペットボトル製の「コカコーラ300mL」と「朝の茶事」は、CD5枚で滑り落ちてしまった(角度は約8度)。

 缶でできた「缶コーヒー・ボス」は、ペットボトルよりは良いものの、CD6枚で滑り落ちた。(角度は約10度)

 紙コップで最低の「100円均一くまもん」でも8枚だから、ペットボトル・缶は、テーブルから動きやすいことが分かる。


【6】「考察」

 材質によってまとめたら、こうなった。

  ペットボトル・・・CD5枚(約8度)

  缶コーヒー・・・CD6枚(約10度)

  紙コップ・・・・CD8~11枚(約13~18度)

 3種類の材質を比較すると、紙コップの圧勝である。よく考えてみれば、これは当然とも言える。なぜなら、最も熱くてヤケドしやすいホットコーヒーを入れるからである。

 自動販売機でもホットの缶コーヒーは販売しているが、スチール缶だから熱すぎると持つことができない。缶コーヒーは、車内販売のコーヒーと違って、ヤケドするほど熱くはないのだ。

 更に缶コーヒーは、飲む穴が狭く、倒してもすぐ立てれば、多くはこぼれないで済む。車内販売の紙コップは、温度が高い状態なら一度倒したら、全部かかってしまう。

 このように、車内販売のホットコーヒーは、缶入りやペットボトルの飲み物より、倒したら大変なのである。だから、車内販売で利用する容器には、列車の揺れで倒れないように、コップの材質などに気を遣っているである。