メイウェザー対パッキャオ考察・予想 | ボクシング原理主義

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ボクシングの原理原則に則っとりながら技術論や方法論を分析考察。技術や意識の向上を目指したい、いちボクサーの見識メモ。
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ビッグマッチが目前まで迫ったせいか、
髭を伸ばしていると、パッキャオ!と呼んでくる外国人がいる。」




「シバくぞっ!」




いや、

外国人はこっちの方か。」




男らしい独善。」




今回で考察・予想となり、例によって両者の比較になるんだが、まずは両者の性格を比較してみようか。」



よく思う。
偉大な選手とは、おそらく、
認知的不協和を突き抜けた者だと。」




煮詰めに煮詰めたその向こう。


他者をそういうところまでもっていって、それを利用する連中もいれば、

自分をそこまでもっていって、自分を超えていく人もいる。


そういう意味でもメイウェザーやパッキャオの両者は、
それはもう高いところにいるわけだね。

彼らだから知っている・わかっている事が沢山あるのだろうし、
それは勿論彼らが大切にすることなんだろう。



メイウェザーの場合はトンネルヴィジョンに入る、自分の考え以外のもので、勝利に向かう自分の意識に悪影響しそうなものは自分の中に入れないよう一切遮断してしまうような感じがある。

リングでは、
自慢のディフェンスで相手に攻めさせて、何気にやられたことを積極的にやり返したり、

してやられたら打たれ強さで凌いだ後に同じ事をやってみろといわんばかりにミス修正した同じ動きを繰り返したりして、実は正々堂々相手を負かすタイプ。


ハグラーのようだ!」




パッキャオの場合はなんだか和気藹々としていて、色んなことがあるほど楽しそうで、色んなことに手を出しながらも増大していく、まさに国民的英雄といった感じである。

リングでは、
その烈火のような勢いとは裏腹に冷静で、チャンスを虎視眈々と狙いすまし、相手のミスを見逃さないでものにする類をみないキレがあって、同時に同じ事を成功するまで繰り返し、調整したりできる。相手の目の前に居ながらも不意を打つ事が出来るタイプ。」



デュランのようだ!」




パンチスタッツ❶と❷でわかるように、両者ともパンチを当てる数では対戦相手を上回る全体を通してボクシング的にしっかりした選手であり、放つ・当てるパンチ数で終始劣勢で一発当たって勝ったとかいう種類の試合はしないし、両者ボクシングを代表する選手に相応しいキャリアである。




・ メイウェザーが有利な試合をする時は相手よりもパンチを少なく放つが当てる数で大きく上回る。

・ サウスポーや変則的な相手との時は相手と同じかそれ以上の数を放ち、一生懸命なところがらしくない印象をあたえ、苦戦の時は当てる数に相手との差が少ない。


放つパンチ、当てるパンチ共に相手を上回った試合はオーガスタス、モズリー、コット、そしてオルティス戦がある。





・ パッキャオが有利な試合をする時は相手よりもパンチを多く放ち、当てる数も大きく上回る。

・ 苦戦する時は相手と同じかそれ以下の数を放つときと、勿論、当てる数を下回る時。

ブラッドリー戦では放つ数を上回られる。モラレスとの初戦ではパンチ数を競うように放たれつつ、当たる数で下回る。天敵マルケスとの試合もパンチ数を競われて、2戦目では当てた数で下回る。」





「じゃあ、
この試合はメイウェザーが、
ブラッドリー、モラレス、マルケス戦を踏襲して、
パンチ数を競うように多く放ちながらもより多く当てる作戦かな。」



そう単純ではないかもしれない。

思い出してみてくれ、メイウェザーが相手に均しい数のパンチを放つときは彼がらしくない時だ。サウスポー相手のこれは避けられない傾向と思われていたが、ゲレロ戦はまるでオーソドックスを相手にしているようだったし、それは数字にもでている。


ところで、両者に対して同じ質のスタッツを出した選手にモズリーがいる。



両試合とも放った数と当てた数共に相手を大きく下回り、両方とも大きくユナニマス判定負け。

モズリーは両者に対してフィジカルとパワー、経験を頼りに一発のきっかけを狙い、正面をキープすることでプレッシャーをかけたが、二戦ともスピードとタイミングで釣り合えなかった。

彼との試合をみる事で、両選手の本質的な距離感と動きの質が割り出せると思ったので、比較してみたところ、どうやら、最初に相手と保つ距離はパッキャオの方が長いようだ。」



「?

身長もリーチもメイウェザーのが長いのに?」



「そう、踏み込みもバックステップもメイウェザーの方がはるかに長いのに、だ。

パッキャオの長さには、対戦した相手にしかわからないような意外性というのが多分あって、つまり、それは彼のスタミナ速度カウンターの間合いによるものだと思う。 


その意外性を説明するとこうだ。

パッキャオの踏み込みの極意は、上体で瞬間的に二度違う動きをするところにある。
(これには運動量とスピードが必要で、これを試合中何度も何度も試みるパッキャオの体力には驚くばかりである。)

パッキャオが最初に定位置のようなのをつくる時、相手はちょっと遠いんじゃないか?と感じるはずである。実際遠くて、相手のジャブも届かないほどである。

相手が放つリードも返しもギリギリ届かないところまで出ていくメイウェザーと違って、ギリギリ届かないところに居るパッキャオがそれ以上相手に間合いを潰させないためのカウンターを持ちながら相手を後退させて踏み込む時、相手はパッキャオがギリギリ届かないと思う。ところが、相手がパッキャオの第一の上体の動きを目安にジャブや腕を伸ばして体を触ろうとしたならば第二の動きで見事に打ち抜かれてしまうのである。


そしてこれが、モズリー戦でわかる両者の動きの性質の違いであるが、自分のボクシングを構築し機能させる上で、ジャブを基本とし非常に重宝するメイウェザーに対してパッキャオはジャブをそういった基礎とはしていないのである。


メイウェザーはジャブで試合をコントロールするし、意識的にもそうしようとする。

ジャブが通しにくいサウスポー相手にも生真面目にそうすることで今までらしくなさを見せてきたり、ジャブが得意な相手に手を焼いたりしたが、ジャブが武器のサウスポーであるゲレロ戦では、そういう自分の性分に囚われないで相対的に対オーソドックスのようにリングを掌握した。


パッキャオは逆で、ジャブで試合をコントロールするというよりは、逆ワンツーを多用するように、パワーパンチをジャブのように使うバリエーションと機会に富んでいる。

パンチスタッツで少し触れたが、パッキャオに目に見える変化があったのはディアズ戦。パワーを使ったアウトボクシングと形容したが、ジャブをストレートのためのセットアップや露払いとしてくらいにしか使っていなかったパッキャオが、この辺りからジャブを優先的に当てる事を意識し始めたのである。

勿論、強豪との対戦ではジャブをメインに持ってくる事にあまり力を入れる事は出来ないが、ここ数年のパッキャオのKOの無さと、ストレート以外の効果的なパンチをカウンターなどで使うためにジャブを中枢にし始めた事が比例するんだと思っている。」



「じゃあ、

パッキャオが衰えたというのは?」


「僕らとしては、あんまり支持できない考え方だね。

同様にメイウェザーも、マイダナ1戦目ではキャリアで最も多く被弾する試合となってしまったが、続く2戦目で合理的にプリティボーイスタイルに戻ってロープを背負わないで圧勝した。一戦目に続いてタイミングよくパンチを効かされたりしていて、本人が衰えたというよりはそういうアウトボクシング自体に不慣れになってしまっているという印象である。

ほぼ一年半前くらいだけど、
同じロープを背負わない戦法をとったカネロ戦を思い出してもみたまえ。

そもそも半身を切って広い歩幅で体のテコを使うあのスタンスは、相手のサークリングが弱点だ。それのために多くの選手は中央を陣取るリングジェネラルシップに頼るが、メイウェザーはこの動きにくい四股を踏んだ形で相手の周りを小回り良く旋回できたんだ。ハンドスピードがあるだけじゃ出来ない芸当で、それが果たして衰えていると言えるのか?」




「確かに、

両者の打たれ強さの比較をしたとき、軍配はメイウェザーにあがる。

頭も腹も非常に打たれ強く、
コーリー、モズリー、
なにより直近のマイダナとの二戦でも、
効かされても立て直すというかぶれないことが出来ているな。」


「パッキャオも頭部は打たれ強く、
ある種打たれても仕方ないというのがあるのか、こちらもマルケス戦のように効かされても立て直してくる、というか攻め込んでくる。

ただ、ボディは打たれ強いわけではないようで、
マルガリート戦でも圧倒的な内容ながらもボディを効かされた場面があるし、ボディでのKO負けもある。



・・・さて、


我々がこれらの事から導き出した展開予想は、
メイウェザーとパッキャオの双方が、お互い接近戦を仕掛けるというものだ。

主な理由は、技術的に出来る事の選択肢で優るメイウェザーに対してパッキャオがスタッツ的にはプレスしても動いても良いという事があるので、メイウェザーが有利なスタッツにしようと思ったらパンチの数を競うよりは相手のパンチを封じ込めて、文字通り武器を奪ってしまう方が合理的だからである。というか、おそらく同じことを選択してくるパッキャオに対してこうしておかないと、脅威のスタミナで後半飲み込まれてしまうと思う。

さらに具体的な理由には、お互いが距離の違うカウンターをもっているためにロープを背負いたくないという事とサイズがある。


メイウェザーとパッキャオは共に常に自分より大きな相手と戦ってきたボクサーである。
よってスピードとタイミングと距離には第六感的なものがあり、メイウェザーは大きな相手を翻弄するマイケル・スピンクス的なフットワークで、パッキャオは相手を打ちのめすタイソン的なもの。今回はパッキャオがいつも通り小さく、メイウェザーはいつもと違って自分が大きいとい
う状況で対戦するのだから、これだけでもメイウェザーがロープを背負わないでアウトボクシングするのは大変そうである。

お互いのカウンターの距離が違うので、パッキャオはメイウェザーが打ちながら踏み込んでくるのに強烈にカウンターできるだろう。メイウェザーの懐を深くして相手を引き込んでのカウンターは多分機能しないだろうし、それをパッキャオにやろうとすると背中を取られて滅多打ちにされるかもしれない。

パッキャオを相手に半身をとるとロープを背負ってしまう、背中を取られてしまう、インサイドにステップインされて脚がそろった状態で倒されてしまうなどの危険が倍増してしまう。(パッキャオも、ロープを背負えばメイウェザー最大の武器であるストレートパンチが機能してしまう。)


このためにメイウェザーは正面構えで前傾する筈。

こうする事で逃げる移動は出来なくても攻める移動は出来るし、何よりパンチに距離を増やせる。ここではパッキャオ陣営がおそらく狙っているであろう事、つまり、カウンターを掛けることでメイウェザーにジャブを選択させてそれを足掛かりに一気に突入してしまう作戦、がある筈。

メイウェザーはこれに対して相手の右の攻撃には右を被せてジャブを誘われないようにする事くらいか。打ちながらの接近は危険で、スマザーして接近してからの攻撃の方が現実的である。

お互いに懐を探り合う・潜り合うと思われるので、
両者共に鍵となるのはガードフェイントアッパ
特にメイウェザーがボディ打ちの名手であるのは注目すべき点である。

両者ともにストレートフックは最大の武器だがより決め球として機能しそうで、逆ワンツーがある分パッキャオの方がジャブを有利に使えそうである。メイウェザーは近距離でのジャブは打たない方が賢明だろう。

ここまでみれば勝負はパッキャオ有利だが、お互いが付着から離れていく場面ではよりリーチのあるメイウェザーが有利だろう。接近した後にパッキャオが必ず左右何方かに流れる事も考えれば、それをメイウェザーが右ストレートで狙い撃ち・追い打ちするのは簡単に想像できるし、それを当てれば、左フックが当たりはじめるだろう。


そういうわけで、
結果予想はメイウェザーがアッパーを上手く多用してKO勝利かな。」



「ついでに、

オーソドックスとサウスポーが対戦した時、どうしても起こってしまう事がある。

それは、
靴を踏む事や頭突きで、故意なら反則で偶発的でも一時中断もありえる。

メイウェザーとパッキャオの二人の場合、
オルティスのようにそれを知っているから追いつめられた時故意に頭突きしてしまったり、カネロのように第五ラウンドでメイウェザーの肘を巻き込んだり、その他の選手のように危機脱出のためにマウスピースを吐き出したりローブローしたりという浅ましい展開はおそらく無いだろう。

ただまぁ靴の踏みあいは起こるだろう。
特に体を沈ませるメイウェザーに対して体を浮かせるパッキャオは靴を踏まない良いマナーで足場を譲ってしまうとマルケス戦のように付け込まれてしまう筈。」




おまけ