クロフォード対ガンボア 考察・予想 | ボクシング原理主義

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「週末は何気にエロール・スペンスの試合。

しかし何といっても目玉はアンチョビファンにはたまらないクロフォードの試合。今回は彼のホームで王者としての凱旋試合。

相手は倒し倒されのキューバン・リトル・タイソン、ガンボア。」


身長差がありますな。


「ライト級のタイトル戦ですが、
ライトには現在、群を抜いて高い能力を見せる塩の双璧が存在する。
まず一人が  ミゲール・バスケス 



そしてもう一人が今回タイトルを防衛する
                テレンス・クロフォード 


                         である。

写真のように左から来たものを右に受け流す事ができる柔軟な適応力を持つボクサーであり、観衆のガツガツした期待も受け流すので塩職人とまで呼ばれるこの二人。

その正体(スタイル)は相手をまな板の上に広げて乗せるように相手の能力を中和し、そういう意味で相手を既に殺しておいてから致命的に刃を入れ始める料理人であり、そういうのが好きな人からすると彼の下ごしらえには涎を垂れさせられる思いがするのである。

武器はその基礎と落ち着き払ったリングジェネラルシップ。
ディフェンスと併用した被せるパンチにカウンター、シューシャインや縺れ合いでの巧さ、逆ワンツーなどで常に新しい切り口をつくろうとするボクサーにして置くには惜しい料理人気質。


おそらく、
もっとも特筆されるべきは効き目のあるスイッチヒッターであるという事。

 
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               一方の挑戦者は 
            ユリオルキス・ガンボア 。

塩とは無縁、センセーショナルで甘~いスタイルの金メダリストで今回がライト級二戦目。
スリックな強打者で先のペレス戦では普通に圧勝。



その前のファレナス戦ではスーパーフェザー級の減量苦からかスロッピーさが目立ったが・・・


勝利した。」




「ファレナス戦で評価を落としたらしいガンボアだが、ファレナスは強い。
バッティングですぐ終わってしまった内山戦をみても決して簡単な相手では無いのは確かだろう。


その後のライトに上げたガンボアには階級の壁が生じるにあたってみれる急激な変化が肉体的にもスタイル的にも見られ、それが今回の注目点である。

つまりガンボアが対格差を克服するために後ろ足重心のボクシングをとり、あまり引かないリング中央陣取り型になったのである。

(以前までのガンボアは前足重心で相手のプレスをいなしながら誘うサークリングとカウンターで距離を支配するボクシングであった。これは使うパンチの種類以外は基本的にリゴンドーと同じ南米系の堅いアウトボクシングで、それに機を見るに敏な出入りがあってサリドやポンセを難なく圧倒した。)


ガンボアもクロフォードもお互いに前回の相手が格下だったのであるけども、両試合を見比べてみたところスタイルの相性としてはガンボアの方が有利そうに見える。

今回クロフォードは小さなガンボアの
・圧力不足
・相手を追いつめる時に見せる事で多く被弾するスクエアスタンス
・試合をつくるのに多用するパンチ
に対して対策を練っているだろう。

仮定として、
ここでクロフォードが上記の事柄から導き出した考えを想像してみよう。

おそらく彼は、
(ガンボアはおそらく俺が前に出れば下がるだろう)
(ガンボアは俺が隙を見せれば懐を開けるだろうからアッパーやショートあるいは何かしら視界の外からの速いパンチをしっかり当ててやる)
と、思っているかもしれない。


もしかしたらこれらが彼の思考の骨格となるのである。


・・・もしそうだとすれば危険な気がする。


何故ならガンボアは、

・現在のスタイルをとる事で接触を恐れない。

・現在のスタイルであるためにアッパーは貰わない。

・全体的な速度と小回りで上回るためにパンチを被せて相手を操作したいクロフォードほど距離の変化に過敏ではない

はずであるからである。


こうなると、
試合の流れをまず掴んでおいてから相手と接触したいクロフォードと最初から打ち合いも辞さないガンボアではメンタル的にクロフォードの方が下がり易いだろうし、少し下がったりサークリングしてパンチを通したりするために中央を明け渡すのはお互いにやる事だとしても、いつでも中央を取り返しに行ける分戦術的撤退すら可能なガンボアのそれとでは余裕に違いがあるように思える。

更に興味深いのはガンボアが現在のスタイルになったことで攻めの基盤をストレートパンチにしている事である。これは詰めの意味でガンボアのジョーカーであったスクエアスタンスを伏せて切り札に変える行為である。ただ、これはスタイルの話であってクロフォードの打たれ強さにパンチ力というのは侮れないものがるし、特にフィジカル・パワー面でのガンボアのパンチ力不足は拭い去れないし一番気にかかるのはスタミナの消耗。サイズ差というものが引き起こす様々な状態異常がありそうです。」


「サイズ差という事ですが、

逆にクロフォードが流れを呼ぶために使うパンチを打つために体勢を低くすること、崩すことは小さなガンボアにとってはコンビーネーションの絶好の的であり、リーチと高さを活かした攻めは打ちおろしのためこの構図ではリスクのほうが高いためにリズムを壊しやすい。特にリーチを生かそうとすればするほど後退しやすくなるだろうし、ディフェンス面でも反応が読みやすそうだ。

逆ワンツーなどのストレートパンチで角度を作ってもテレンスが動く事になるだろう。」


個人的な予想では、クロフォードもなんでもこなせるし対応できるのでガンボアは体格差のハンデを無くすためにこのスタイルにして戦法を確立したのであるから、わざわざ侵入し辛いスイッチヒッター相手に下手なスピード勝負して距離を与えるとは思えない。そして距離をガンボアが支配できればクロフォードの武器はより体力に近いだけのものになると予想。


あらゆる距離における適応力はガンボア。
距離を支配するのはクロフォードに分がある筈がガンボアのスタイルチェンジで五分に。
よって予想はまさかのガンボア判定勝利。」



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