「ケン・ノートン氏が70歳でこの世を去った。氏は、モハメド・アリとの3戦でも有名で、その端整な顔立ちや筋骨隆々の肉体でスクリーンにも登場した。ラリー・ホームズと演じた最終ラウンドは、両者の潜在的な力を出し合ったヘビー級史で最も有名なラウンドでもある。(その映像はボクシング・メタボリックさんの記事で観ることが出来る。)
当時アリがフレイジャー戦のような全盛期をすでに過ぎていたにしても、アリに比べて身体能力やボクシングテクニックが優れているわけではなかったノートンは、現在ボクシングの世界では当然のように重要視されるリングジェネラルシップの有効性を証明した存在でもある。
ノートンは、ジョー・フレイジャー、ジョージ・フォアマン、アーニー・シェイバースといったテクニックや身体能力に特別なパンチ力といったものを持ったボクサー達に比べると、いたって平凡だった。しかし、そのギャップを埋めて巧く相手に働きかけるボクシングをする事で、あの熾烈な時代のヘビー級にあって42勝33KO7敗1分という戦績を残した。実際、ノートンのスパーリングパートナーだったフレイジャーは、ノートンのそういった面と、お互いの手の内を知っているという事から対戦を拒否した云われる。
ノートンは、戦績以上にそのスタイルが方法論的でとても価値があった。
極端な例で言えば、それまでのボクサー達、例えばソニー・リストンのようなボクサー達は優れた精度を誇っていながらもアリと対峙したときに誘われるままにパンチを当てにいく事をして失敗した。之がアリの能力である相手のミスを誘発するテクニックとインテリジェンスである。しかし、ノートンはそれを無視して、相手を追いかけるのではなくロープに閉じ込めてからパンチをまずしっかり振るい、ガードの上からでも相手の脱出口を塞いでしまってからパンチを上に放ち、逆にアリの方からパンチにぶつかりに来るようにした。

アリとノートンほどの差があってもリングジェネラルシップというのは、それを埋めてしまうもので、3度の対戦を全て優位に進めた。おそらくこの事が、その後のアリや、特にラリー・ホームズのフットワークに大きな影響を及ぼしたと私は考えているし、例えば現代のグレートであるメイウェザーは完璧にその足運びを受け継いでいて、こういった危機を何度か危うく脱している。
逆に言えば、これからメイウェザーなどのボクサーと対峙する者は、このケン・ノートンの試合から学ぶ事があるという事だろう。
素晴らしいボクサー、ケン・ノートン氏のご冥福をお祈りいたします 。」
R.I.P. Champion


