「考察・予想は①と②に分けて書かせてもらおう。
*今回考察する事は、ゲレロがサウスポーのボクサーパンチャーである事と、如何にリングジェネラルシップがそれに影響するかについてだ。
先週のセルジオ・マルチネスの試合を観たんだが、やはり彼はザブ・ジュダーと同じくボディーをほとんど打たないサウスポーのボクサーパンチャー。
ゲレロもまた同様にボディを積極的には打たない。
つまり、彼もまた相手に攻めてきてもらうほうが都合のいいボクサー、相手の反撃を避けるボクサーという事で、けん制力は持っていても、抑止力は持たないという事だ。
人間というのはそれぞれ着目点が違い、それが後に生き方の違いとなって現れてくるのは当然なのだが、ボクシングにおけるスタイルの違いというのも一重にこの着目点の違いにほかならない。
野球にはけん制球というのがあり、リードしている走者の塁に球を投げる行為だ。
ボクシングにおいてはジャブがその役割を多く担う。
そして、それを多用して堅実に相手に揺さぶりをかけながらストライクを狙うのがティピカルなボクサーパンチャーだといえる。そして、ゲレロは本質的には之なわけだ。」
「そう。相手をコントロールするためにジャブが長く鋭くある必要のあるスタイルだ。野球ならバッターがヒットやホームランを出してしまえば関係無くなるが、これはボクシングだ。ディフェンスからのジャブは牽制といっても、その数がダメージを蓄積させるので、相手はヒットやホームラン出す前に潰れてしまう。
それに、ヒットを打ったとしても守備自体がとても優れている。
ゲレロは自分の攻撃の隙間を突かれた時の防御感が非常に高い。彼がコンピュボクスランキングに入るほど被弾率が低い事を思い出してほしい。」
「では、抑止力を持たないというのはどういう意味なんだ?」
「オーソドックスとサウスポーがボクシング合戦したとき重要なのは、ステップオーバーもそうだが、どちらのジャブが通るかが本格的な攻めの起点になってくる。 だから、こういう場合、ボクサーはジャブで上手を取り、相手に上手を取られないために、リードハンドを高く上げておく必要があるんだ。 しかし、メイウェザーのリードはどうなっていると思う?」
「・・・L字ガードか。」

「そう、下がっているんだ。 何故なら相手に踏み込んでほしいからだね。
これは、ジュダーやマルチネスに共通している相手の勢いを利用する術だ。逆に相手が攻めてこなかったり、バランスが良すぎたりしたらこっちも攻めるキッカケがつかめなくなる諸刃の剣だ。
さて、
ゲレロのスタイルというのは、ジャブを放ち続けながらも、クロスを正確に狙い打てる深い懐を保つ事で、ジャブのみで多大なプレッシャーを掛ける事だ。
しかし、これはメイウェザーにとって有利かもしれない。
というのは、メイウェザーは他の選手のようにクロスから逃げない。何度も言うように相手の勢いを利用したいから、むしろ打って来て欲しい方だ。これでプレッシャーは無くなったわけだね。
ボディーを打たないという事はゲレロはボクサーパンチャーとして距離を空ける。
そして、サウスポーであるために肝臓が前面になって不利になる。
メイウェザーの右ボディクロスが火を吹いた、ジュダー戦と同じ図式となる。それに、あまり語られないが、メイウェザーはボディ打ちの達人だ。
要するにゲレロの行動がどうあれメイウェザーがする事に影響を与えにくいという点で、ゲレロにはメイウェザーの行動自体を抑止する事が出来ないんだ。逆にメイウェザーは待ち拳である上にロープを背負っても動き続け、サウスポー相手にはリードハンドを上げて追いかけてくる場面も多く、こっちが戸惑っているその瞬間にはダイレクトライトと返しの左などで相手の行動を制限してしまう。」
「それじゃあゲレロは八方塞がりじゃないのか?」
「いや、 そうとも限らねぇ・・・逆に、ゲレロの奴がメイウェザーの野郎を自分の間合いに招待する事が出来れば話はべつだぜ。」
「僕もゲレロの勝機はそこにあると感じている。逆にメイウェザーもそこに注意しているはずなんだが・・・つまり、ゲレロは距離を一定に保つプレスボクシングでペースとポイントを支配する姿勢でリングに入り、3~4ラウンドを過ぎてメイウェザーがポイントを取るために動き始める所を狙って勝負を掛ける可能性が高い。そうすれば、目を瞑っていてもメイウェザーが出てくるカウンターチャンスが分かるからね。
では、ゲレロはメイウェザーに攻め込んで来てほしい時リングの何処に居れば最も合理的なのか?
それはリングの中央だ。
攻勢点はこっちが取ってる、お前も早く取り返しに来いよ!と、誘うわけさ。
これは最も基礎的で最も効果的なリングジェネラルシップだ。
メイウェザー対オルティスでは、オルティスがその中央を陣取った。
しかし、メイウェザーは高い技術でなんと、ロープから出る必要をなくしてロープから出ようとはしなかったんだ。
それでオルティスは打つ手なしで、暴走して頭突きに奔ってしまったんだね。
つまりこれが、もう一つの高度な方のリングジェネラルシップというわけだ。
しかし、このリングジェネラルシップを扱える選手は少ない。テクニックやボクシングインテリジェンスが相手を大きく上回っていないといけないからね、多くの場合は裏目に出るのを目にする。」
「結局は根くらべ!
リングにおける指揮権の取り合い・・・メイウェザーは俺の知る限りでは類を見ないほどのリングジェネラルだぜ?
とてもじゃねえがゲレロがメイウェザーから指揮権を奪えるとはおもえねぇな。」
「だからこそゲレロは、L字が目に入ったその瞬間、ベルト戦で見せたアレで突進するでしょうね。それにゲレロは、メイウェザーに以前のような脚は無い!と語っている。これは一体何を意味するのか?」
「う~ん、ベルトみたいに自分の猛攻からは逃げられない、ということじゃないか?」
「いや、今のメイウェザーならアウトボクス出来るっていみじゃねぇのか?」②につづく
おまけ

「ある熱心なボクシング愛好家の方とお話していた時に、今回の試合はおそらく、あの試合のようになるかも。という事で意見が一致した、ジェームス・トニー対ワシリー・ジロフの試合だ。
今は亡き、名トレーナーにして名コメンテーターのエマニュアル・スチュワード氏も大興奮の名勝負だ。
試合前にオスカー・デラホーヤのインタビュー付き。」