紳士のスポーツ | ボクシング原理主義

ボクシング原理主義

ボクシングの原理原則に則っとりながら技術論や方法論を分析考察。技術や意識の向上を目指したい、いちボクサーの見識メモ。
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 「ケンカできない奴はダメだ!」

「一体どうしたんだ、急に?」



 「ただの切り口だよ。 あまり深く受け取らないでほしい。 

明日は遂に、ザブ・ジュダー対ダニー・ガルシアだ。 

公開計量を観ていてね。ガルシアとジュダー、それは仲が悪い。 お互い挑発しあって、プレスツアー中は何度も乱闘になりそうになったらしいね。

そして、今回の計量。 万が一を避けるために、お互い時間をずらして行われた。 

今日はボクシングのトリックなどではなく、単純にこのスポーツの性質というものについて考察してみたいと思う。」



 「なるほど。 では私のほうから今回の試合の紹介をさせてもらおう。

この試合には2つのベルトが賭けられていて、一つはWBAのライトウェルターのスーパータイトルとWBCの正規タイトル。 
 
この二つのタイトルを防衛するのはSWIFT(素早い)の異名を持つダニー・ガルシア。
ジュダーもそうだが、ボクサーよりはファイター、パンチャーの印象が強いがもとはトップアマチュアで、ボクシングテクニックにとても優れている。

 エリック・モラレスとの再戦で凄まじいノックアウトを決め快勝。現在25勝16KO無敗の25歳だ。


挑戦者はスーパーがニックネーム、ザブ・ジュダー。 
才能と経験を兼ね備えたベテランだ。

IBFのタイトルエリミネーターで無敗のバーノン・パリスを9回TKOでやぶった。
42勝29KO7敗のサウスポーで35歳だ。 セミのピーター・クイリン対フェルナンド・ゲレロもWBOのミドル級タイトルで、クイリンが有利じゃないかと思う。」


 「ボクシングは簡単に言ってしまうと、合法化されたバイオレンスだ。

その歴史の中でスポーツ面でもビジネス面でも世の中の変化と共に変化し続けてきたものだと思う。 ボクシング自体は国境を越えて同一のものだが、それに対する見方や各地域での根ざし方というのには多様性がある。つまり美徳が違うという事だね。


チャンピオンクラスの選手達は大体がコンプリート・ファイターと呼ばれ、ファイトもボクスも出来、あらゆる状況に対処・克服できるであろう要素を備えている完璧に近い状態の選手だ。

そこでとても重要視されるのが、理解と判断力、つまり知性だ。」


 「今回の試合は年齢を観てもやっぱりガルシアが有利だな。

スタイルをみても、ザブがサウスポーであることはベーシックファイターであるガルシアにはあまり影響はないし、むしろ肝臓が前面にある分防御面では分が悪いかもしれない!
ザブはベテランでガルシアみたいなタイプとも何度も戦っている、が、どれも相性が悪い事を証明しただけだと思う。もちろん対戦してきた相手のレベルでいえばジュダーだ。」


 「単純な比較はここまでだ。 

では、もっと大きな (というよりは小さいと言うべきかもしれない) ところに目をやってみよう。

この試合はニューヨークでおこなわれる。 つまりジュダーのホーム
そして、二人はお互いに対して感情的なものを持っている可能性が高い

この二つの要素がどう選手に影響するだろう?」


    「ザブはホームだし、皆の前でしっかり勝ちたいだろうなぁ・・・・。」

 「そうだね。 きっとそうだ。 

じゃあ、彼にとってしっかり勝とは必ず良い勝ち方をする事なのか堅実に勝利のみに徹するという事なのか、一体どっちだと思う?」


「う~ん、私だったらロープ外失神KOで勝利を飾りたいな・・・・けど、こっちのホームだし相手は焦ってるだろうから、したたかにアウトボクシングもアリかな。」

  

 「うまい! まったくその通りなんだ。

つまり迷ってしまうんだね。 為されねばならない事にたいする判断力が鈍る。つまり、ボクシング自体がいくら高度に洗練され訓練されようとも人間のする事なわけだから集中力を乱されてはいけないんだね。 アイツが居たんじゃ仕事にならない という感覚を相手に植え付けてしまい冷静さを奪う。 普通なら最低な行為だけどリングでは、対戦相手に対しては武器だ。 

こういう時、こっちがボクサータイプなら、相手が理性を失って怒ってる分こちらのボクシングで翻弄できるだろう。 逆に打ち合えば、恐怖を忘れて怒ってる相手となると捨て身だから危険かもしれない。


こういった他人の頭の中を引っ掻き回すような行為は世界のボクシングではよく見られ、注目度を上げるパフォーマンスとしても相手の練習や試合での集中力を錯乱させるものとしても効果が高い。

しかし、やっぱり目に見えるか見えないかは分からないが悪い形で尾を引くものだと感じる。
プロフェッショナルな、職業上のことだったと処理して水に流される事がアメリカでは風潮みたいだが人情とはそう易々といくものかと感じるばかりだ。」

おまけ
 


「・・・」