マイク・タイソンとディフェンス・テクニック | ボクシング原理主義

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ボクシングの原理原則に則っとりながら技術論や方法論を分析考察。技術や意識の向上を目指したい、いちボクサーの見識メモ。
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俺たちゃ自由な男じゃないか、


木村です。


書くこともないけどなるたけ毎日更新しようと思い悩みながらジムに行ってみると、

ちょうどマイク・ライモンがスパーリングしていた。


頭を振って相手のジャブを避けながら懐に潜り込もうとするマイク。

しかしそれを見越されて、後退されるか、パンチを打っても逆に潜られる、そして一番目についたのが右を狙い撃ちされていた。 

それでも纏わり付くように諦めないマイク。しかし、前に出てもこっちの攻撃は相手に届かなかった・・・



われらがマイク・ライモンやナカヤス・タイソン、そして本物のタイソンのようなスタイルを、漫画でも有名なピーク・ア・ブー、流してピーカブーと呼びます。


いないな~いでパンチを避けて、ば~でパンチを当てるアグレッシブなディフェンスからの有利なオフェンスを目的とするスタイルです。


このスタイルを扱うには瞬発力が必要とされています。

理由は下のリンクでタイソン自身によるスタイルの説明の後で。


ダマト直伝を伝授するタイソン。



このビデオでのやり取りはこうです。

「あなたは一体どうやってどんな相手に対してもオフェンスをセットアップできるのですか?」とスミティー。

そしてタイソンはこう答える。

「まず相手に手を出させる。何故なら相手がしっかり構えている状態ではこちらに出来る事は何も無いからだ。だから相手が手を出すまで待たねばならない」

「あなたがキャリアの中で見せた素晴らしい動きの一つに、リングをカットする、というのがありますね。どうやるか見せてください」


リングをカットするマイク。


「どうやってそこからパンチを出すの?」

「ジャブ」

「あぁ。あなたは単発ではなく、パンチージ・イン・バンチーズ(沢山のパンチ)によって攻撃していた。お気に入りのコンビネーションはありましたか?」

右ボディで相手の注意を下段に逸らし、そこから左フックを顔面に返すコンボを披露するタイソン。

「私はパンチ力というものは天賦の才で、パンチャーはつくられるのではなく生まれてくるものだと信じていますが、あなたもそう信じますか?」

「イエス、アイドゥー。カス(ダマト)もいつもそう俺に話してた。パンチには多様性がある。

100パウンドしかない小さな体でも人を殺せる奴もいるし、逆に250パウンドの逞しい体でもこれっぽっちもダメージを与えられない奴もいる。トミー・ハーンズをみろ。彼は160ポンドぐらいしかないがヘビー級もKO出来るだろう。彼の階級では彼ほどのパンチ力を持った選手はかつて存在しなかっただろう。」


と、話もそれたところで、本題に戻ります。


ピーカブースタイルのようなスタンスを「スクエアスタンス」と呼びます。


相手に対して半身を切って、最遠から最小の的として最大のテコを使って相手を攻撃するクラシックスタンスとちがって、ほとんど正面を向き相手からみえるこちらの胸を基準に動体視力と反射神経に頼って反応するアスレチックなスタンスです。 


史上もっとも偉大なヘビー級であるジョー・ルーイスのとったスタンスで、

これにジャック・デンプシーなどのクラシックボクサー達の相手の目線より低く構えをとる事で常に跳ね上がったり・伸び上がったりする事そしてフォーリングステップを継続でき、更には自分の防御終わりに打ち始められる事を可能にするスタイルと、

そこに、日本のファイティング原田やフライ級からヘビーまで渡り歩いた(タイソン曰く最も偉大な英国ボクサーである)テッド・ルーイスのような運動能力や躊躇のなさ・能動性・機動性を駆使して相手の出方お構いなしに決まった戦法と圧倒的手数で打って出るパンチーズ・イン・バンチーズスタイルを混ぜたものがピーカブーです。


上記の理由でこのスタンスは身体能力に頼る分、スピードやパンチ力、動体視力に勘の良さといったものを生まれ持った選手ならそれをそのまま闘いに利用できるメリットと、身体能力の限界や低下といった生物的宿命で旬がとても短くパッシブなボクシングが不可能というデメリットがあるといえます。 タイソンにしても本当のプライムはおそらくちょうどホルムス戦ぐらいまでで、戦績とは裏腹にそこから一気に劣化していきましたね。


何故このスタイルに瞬発力が必須かという理由のもう半分は、テニスと同じで「ラテラルムーブメント」という運動によってこの構えが機能するからです。


ラテラルムーブメントとは横跳びのような横移動のことで、タイソンは、ウィービングといって、人に手を振る動き同様に頭を左右に振ります。この動きでパンチをスリップするやいなや、ラテラルムーブメントとジャブなどを併用して一気に打たれずに打てるポジションまで踏み込んで、そこから安全にそして凶暴に敵に躍りかかるわけです。


この横跳びの重要性は日本の選手では実践者を目にした事が無いので書きますが、

例えばウィービングやその他ヘッドムーブメントを駆使して相手のジャブをかわしても、胴体はそこに居残るので、優れたジャバー(ジャブを主武器とする選手)なら上にパンチをいくらでも捨てて、残ったそれを打つといった事がボクシングの基本です。なのでワンツーはワンを上手く使えばツーが活きること同様に、あらゆるスリップに関してもパーリングを機能させれば次に相手の仕組んだ大きなパンチをフェアにスリップ出来るわけです。しかし、タイソンなど真に優れたアスリートでもあるボクサー達は、あえてウィービングからディフェンスを始め、相手に手を出させます。それはタイソンがインタビューで説明したとおりで、普通の選手なら例えばボディージャブやボディーストレートに対してディフェンスなど持ち合わせていなく、良くてまっすぐ後退します。そのため、この二つのボディーへのパンチは相手を後退させ立ち位置を奪いロープから脱出する、相手を釘付けにするなどの用途で放たれます。

しかし、タイソンにこのパンチを放てば、もうオートでウィービングからのラテラルステップでかわされ、リバースジャブを顔面に打ち込まれながら死角をとられます。


(なおこのラテラルムーブメントを使って相手に対して平行移動して、相手をロープやコーナーに追い詰めたり閉じ込めたりするのを「リングをカットする」といいます。)


ジムのマイク・ライモンはもろこれに該当する悪い例で、奴はリードの捨てパンチを避けるのに夢中で相手の次のパワーパンチに対してあまりにも無防備なわけです。

かといって、本家のようなスーパープレーが出来るかといったらまだ無理です。

ならば、実直にパーリング!

これしかない。その後の処理は本人がわかってやるでしょう。というか、そこでやっと自分の実力を発揮できる空間に入るわけですな。


話だけ聞くとこのスタイル無敵に聞こえますが、後ろ足重心のクラシックスタンス系統のスタイルとその技術郡も進化論的なエリミネーションを潜り抜けて、今や南米系やアジア系を除く世界のトップ戦線で重宝されているスタイルはこちらの方です。





真心ボクシング

若き日のマイク・タイソン



真心ボクシング



にそっくりなガンボア。




それにしても何で最近の女性のファッションはアメリカの売春婦みたいな格好なんでしょうか?



御免