ウィキペディアには前傾姿勢を取った初めての選手とあるデンプシー。
自身の著書でも「フォーリングステップ」と名づけたスタンスと動き方を説明している。
フォーリングステップとは今やボクシングの基本である前傾姿勢、前足重心、後ろ足に体重は一切かけずカカトはあげておくというスタンス。
どうやってパンチを繰り出すかというと、前傾のまま後ろ足に体重を移すことなく前足を踏み出すことで開いた歩幅に体重が落ちる時の運動エネルギーを使ってパンチを出すというものです。
オスカー・デラホーヤなんか完璧これですね。
では果たして当の本人は常に前傾姿勢なのでしょうか?
ちがいますね。
デンプシーは著書でも試合中常にフォーリングステップの構えを取り続けろなどとは言っていません。
あくまで攻撃方法なわけであって、防御や移動にはそれぞれ他にやり方が存在します。
それだけやってりゃ良いというもんではありません。
今やこの構えで最も重要な前足の踏み込みをせず、前傾姿勢をとるのみで後ろ足を大きく広げたスタンスが日本では主流になっています。こんな事をするとスウェーやスリップ、ボビングといったテクニックを使えません。減量して相手より大きくリングインして打ち下ろす。でも打ち下ろすと前のめりな上に肩で顎を隠せないのでカウンターを強烈に貰う。四股の踏める、防御姿勢から一気に打ち返せる、リアクションパンチが打てる選手相手だと致命的だと思います。
デンプシー、「いいピアニストになるには上手に弾けるだけじゃなく正しい弾き方を知っていなければいけないのと同じだ」と述べています。
グローブには石膏が詰まってたり、黒人とは試合しないと公言したりと色々コントリバーシャルな王者だけど、ウィラード戦で試合中金歯を叩き折られそれを吐き出す屈辱に耐えかねてそのまま飲み込んでしまったりとなかなか無骨な雰囲気のあるカッコいいチャンピオンだと思います。
アウトボクサーで素晴らしいテクニシャン
打たれない事と儲けることがプライズファイターにとって最も重要だと言ったジーン・タニー。
ジーン・タニーとやった時のデンプシーは常に前足に乗ってたけど、おかげでタニーを捕まえ切れなかった。 というかタニーもリード勝負だったので前足に乗り続けていた。しかしデンプシーは前足重心で追いかけたのに対してタニーは前足重心で後退していた。
とても勉強になる試合です。
(デンプシー対ウィラードはテレビで初めて放送されたスポーツ映像らしい。)
木村でした。