メイン・サイトでは17年前にとり上げていましたが、こちらのブログから漏れていたので再掲です。ブルースをルーツに持つ白人シンガー/ハーピスト、ピーター・アイヴァースのバンド名義でのファースト・アルバムです。46年ボストン生まれのインテリ・アメリカ人で、元々サンフランシスコのヘイト・アシュベリー・シーンに絡んでいたそうですから、世代的にいってもブルースの他にヒッピーやサイケなどもルーツにあると思われます。結論からいってこのアルバム、かなりぶっ飛んでいてこわれてます。まずこのインクレディブル・ストリング・バンドどころではない、虫みたいな脱力ヴォーカルからして普通ではないです。アメリカ白人、ブルース・ルーツ、頭のネジを何コか落としてしまった人、といえば思いつくのが、13th・フロア・エレヴェイターズのロッキー・エリクソンとかキャプテン・ビーフハートです。アメリカの60sサイケ/ガレージ・パンクの70年代的展開ともいえそうで、それにユーモアと皮肉を加えて思い切りすっとぼけたような印象です。ただ、一聴して土台にブルースがあるのは分かるんですが、聴き進むうちにあまりブルース自体には意味がないんでは・・という展開になっていきます。時代背景もあるのか、この冷めた感覚は数年後のアメリカのニュー・ウェイヴに強引につなげてみたい気がしないでもないです。例えばトーキング・ヘッズとかトーキング・ヘッズとかトーキング・ヘ・・それしか思いつきません。あとB-52’sとかディーヴォとか・・。自身のハープをフィーチャーした隙間の生かされた楽曲群はどれもポップに壊れていて、クールで、何気に知性漂ってます。そういうところは確かにフランク・ザッパと通じるところがあります。この人、ハーヴァード大学で政治学を専攻していたほどですから、頭良過ぎてちょっとおかしくなってしまったのかもしれません。しかも何か危険な政治活動でもしていたのか分かりませんが、83年に謎の死を遂げてしまいました。とりあえずちょっと聴いてみて「なんじゃこりゃ?」と思いつつも、何か引っかかるものがある・・・と思った人にはいつのまにか愛聴盤になっているような麻薬/サイケ効果のあるアルバムだと思います。よって名盤!

 

【レコ妖怪向けレビュー】

UKデッカ・オリジナル盤入手しました。が。裏ジャケットの上下がフリップバック(折り返し)仕様でないので、オリジナル盤といっても厳密にはセカンド・プレスになります。おもろいことに、ディスコグスで調べてみたらば、このセカンド・プレスは67~68年にかけて再発されたとあります。ん?もともと66年にリリースされたレコがほんの1~2年後に再発された?よっぽど初回プレス枚数が少なかったんですかね?それか、66年当時はアメリカのMGMレコードから『Animalism』と『Animalization』というアルバムも出したので、意図的な制約があったんでしょうか?いずれにしてもおかげで、マトリクスは初回と同じ1A、ジャケはテカテカコーティング、そもそもデッカ・レコードのジャケは基本的にフリップバックを用いないので、全然オッケーす。レーベル・デザインはもちろん赤モノラルのオープン・デッカなんですが、よく見るとファースト・プレスのデザインとは出版社クレジットの配置場所が異なっています。英国では3枚目となるオリジナル作品であり、前2作のEMI/コロムビア盤とはガラッとサウンドが変化しました。やたらとベースがドでかくなり、時々猥雑なファズ・ギターが聞かれるようになったのは「1966年」というロックのモダン化元年によるものですね。ジミヘンとクリームとスモール・フェイシズのファースト・アルバムも66年、他ではザ・フーの『A Quick One』、ビートルズの『Revolver』、キンクスは『Face To Face』、ストーンズは『Aftermath』全てが66年す。生々しくぶっとい音へと飛躍的に進化した66年のサウンド・マジック!

 

アイルランド出身のシンガーソングライターです。これはセカンド・アルバムのようで、この人のレコはこれしか所有していないです。SSWといっても全体にわたってバンド・サウンドが展開されていて、時にソウルフルな女性コーラスやおしゃれなフルートが入ってきたりします。ここ日本でも一時期、マニアックな洋楽ファンの間でもてはやされた英メロー/グルーヴ系といったらいいんでしょうかね?音楽性、サウンドはブリン・ハワースやアル・スチュワートに近いといえば近いです。おそらくほとんど売れなかったレコやと思いますが、さすが70年代初頭という、おっそろしくレヴェルの高かった&競争の激しかった音楽シーンの産物だけあって、一歩間違えればFMの電波にガンガン乗りまくり、世界的ヒットになってもおかしくなかったようなことやってます。間違いなく時代に耐えうるすぐれた作品だと思います。参加ミュージシャンの中では、サザーランド・ブラザーズ/クウィヴァーで活躍していたギタリストのティム・レンウィックさん以外は知らない人ばかりでした。1曲、“Down On Me”という曲でゲイリー・ムーアが(おそらく)スライド・ギターで参加しているらしいですが、あのシン・リジーのゲイリー・ムーアのことですかね?アイルランドつながりということで、そうかもしれません。しいてあげれば、ちょっとジョナサンのヴォーカルが弱いというか、あまりに類型的にすぎて印象に残らない面はあるかなと思いました。しかし今でもFMココロから流れてきたとしても、全く違和感のないオシャレでプロフェッショナルな音楽っす。おわり

 

テリー・ホールがファン・ボーイ・スリーの次に結成したグループのデビュー作です。テリーはスペシャルズでデビューして以来、2枚アルバムを発表しては新しいユニットやグループを結成していますが、このグループも次のアルバムで解散してしまいます。本人としては商業的にスペシャルズを超えたかったんですかね?新しいことを始めるたびにファッションやヘア・スタイルを一新していきましたが、残念ながらセールス上はスペシャルズを超えることはなかったようです。しかし!音楽的には明らかに進化/深化していったのは事実で、ふり返って聴いてみて、改めて才能あふれる音楽家/ヴォーカリストであったなあと思います。ここではまずシングル・ヒットした(?)ポップな“Thinking Of You”が有名です。つっても当時、それほど日本の電波には乗らなかったような気がします。カラーフィールド自体は音楽専科やロッキン・オンなんかの音楽雑誌にはちょこちょことり上げられていました(はず)。

 

オープナーである“Thinking Of You”のいきなりのボサノヴァのリズムは、一聴して同時期のスタイル・カウンシルやトレーシー・ソーンや周辺のUK 80sポップがパーッと頭によみがえってきて、流行った流行った!こういうの!っちゅう感覚です。これ以外にもメロディ・メーカーとしてのテリーの涙ちょちょ切れる哀愁漂う楽曲が目白押し、アルバムとして大変完成度高いと思います。例えばポール・ウェラーやマッドネスのサグスにはあまり感じられないような、楽曲上のウツ的な特徴や実際の彼のウツ的表情(笑顔の写真がやたら少ない)には、幼児期の性的虐待体験が影を落としているようです。実際、高齢になってからの自殺未遂事件なんかに、一生引きずることになったトラウマを感じますが、人生後半にスペシャルズを再結成して見事に支持され、本人も(外見上は)最後のキャリアを楽しんでいたように見えたのは、せめてもの救いであったなあと思います。おわり

 

テリー・ホールがスペシャルズ後に結成したグループの2作目です。リアルタイムでは完全にスルーしていたので、40年たって今回初めて聴きやした。プロデューサーはなんとあのトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンだったんですね。初めて知りました。トーキング・ヘッズも当時完全にスルーしてましたが。すごい人気があったので、しょっちゅうMTVやFMや音楽雑誌でとり上げられていたような気がしますが、どうもあのチープなシンセとコミカルなステージングが、英パンク/ニュー・ウェイヴにかぶれた田舎の高校生の肌には合わなんだようです。で、今回のファン・ボーイ・スリーですが、これが大変すばらしかったです。当時はモノクローム・セットやデビューしたてのスタイル・カウンシルも愛聴していたので、同時にこれも聴いていればきっとハマってただろうなと思います。少なくともスタカンよりも気に入っていたかもしれません。まず何といってもカヴァー2曲含めて、どの曲も楽曲的完成度が高く、印象的なメロディ満載です。ストリングス入りのメランコリックなワルツだったり、60sポップを基調としたシンプルなアレンジメントとバンド・サウンドだったりするところは、ちょっとモノクローム・セットに近いかもしれませんね。そう考えると、間違いなくスペシャルズのセカンド『More Specials』の路線を受け継いでいると思います。どんなスタイルの楽曲を歌おうと、必ずどこか哀愁が漂ってしまうテリー・ホールのヴォーカルも相変わらずとてつもない魅力を放っていて、改めてもっと長生きして再編スペシャルズを続けてほしかったなと思います(泣)。

 

4枚目のアルバム『Ocean Rain』をリリースし、ツアーしたあと、1年の休養期間を経て85年にリリースされたシングル集です。原題は『Songs To Learn & Sing』す。80年のメジャー・デビュー・シングル“Rescue”から、85年当時の最新シングル“Bring On The Dancing Horses”までの10枚のシングルが収録されています。そのうちシングル盤かここでしか聴けないオリジナル・アルバム未収シングルは、“The Puppet”、“Do It Clean”、“Never Stop”そして“Bring On The Dancing Horses”という便利なアルバムです。エコバニで思い出すのは、リアルタイムだった高校生の時に並行して聴いていたU2すね。U2も同時期にデビューし、そこから3~4年くらいはたしかにライヴァル的存在でした。U2は『War』までですが、今でもどちらも大好きなバンドです。同じネオ・サイケっちゅうくくりの中ではありましたが、当時から両者の違いは聴覚上も音楽的スタンス上もはっきりしてました。ボノとイアン・マカロックの発言の違いも際立ってましたね。ボノはやたらと正義感の強い、やもすると偽善者ととられかねないほどの熱い奴、一方でイアンはクールといえば聞こえはいいが、弱さと自信の裏返しのような他のミュージシャンへの辛辣で毒のかたまりのような攻撃(口撃)ばかりがとり上げられていたような気がします。ふり返ってみれば、どちらも若者特有の相反する極端さが表われていて、互いに反発しながらも自分たちの音楽を真剣に追求していたんやなあと思うし、そういう意味ではいい時代だったと思います。残念ながらエコバニはこのあと2年くらいで解散、逆にU2は世界的なスタジアム・バンドへと成長するという、イアンにとっては今まで吐いてきた毒がいっぺんに自分にはね返ってきたような皮肉な結果となってしまいました。「しもた…いらんこといわんかったらよかった凹」とイアンは思ったかもしれません…おわり

 

マッドネスが活動中の82年にリリースされた、その時点でのベスト・アルバムです。アルバムでいうとサードの『7』と4枚目の傑作『The Rise & Fall』の間の時期ですね。なので英米で大ヒットした“Our House”は未収録っす。全16曲のうち半分以上がトップ10に入ったシングル、あとは人気曲/代表曲で構成されています。コアなファンにとってはもちろん全アルバム必聴必携なんですが、そうでないファンにはこのベスト・アルバムにプラス、『The Rise & Fall』をもっていれば、彼らの真髄はほぼカヴァーできると思います。といっても1st~3rdアルバムがしょーもないのかといえば全くそんなことはなくて、ヒット・シングル以外にもすんばらしい曲がたくさん入っています。ただアルバム『The Rise & Fall』はマッドネス版の『The Village Green Preservation Society』(キンクス68年の名盤)といえる大傑作としてオススメしたいと思いやす。詳しくは大昔にとり上げたこちらで読むことができます→ https://swarbrickjp2006.web.fc2.com/newwaveKLMNO.html

 

それではトラック・リストです。

 

Side 1

1. Embarrassment

2. Shut Up

3. My Girl

4. Baggy Trousers

5. It Must Be Love

6. The Prince

7. Bed And Breakfast Man

8. Night Boat To Cairo

 

Side 2

1. House Of Fun

2. One Step Beyond

3. Cardiac Arrest

4. Grey Day

5. Take It Or Leave It

6. In The City

7. Madness

8. The Return Of The Los Palmas 7

 

バーズのデビュー前のデモ・レコーディング集です。手に入れたのは69年にトゥゲザー・レコードというアメリカの無名(?)レーベルからリリースされたオリジナル・アナログ盤す。73年には彼らに似つかわしくない北斗の拳みたいなダッサいジャケで再発されてました。なので買うならこちらのオリジナル盤が圧倒的にオススメです。アメリカ盤では珍しい、見開きジャケのカンガルーポケット仕様で、当時のメンバーの写真も豊富に載っています。20年ほど前だとたしか5000円前後くらいの相場だったような気がしますが、今ではのちに拡大版のCDやアナログ盤がいろいろ出たりしたせいか、かなり入手しやすい値段に落ちてきたと思います。2000~3000円くらいか?ただ中古レコ屋さんで見かける頻度もなくなってきたようなので、気になる人は見つけたら即買い!の1枚でっせ。全11曲でトータルほんの25分程度なんですが、音質もよく、まず何よりほとんどを占めるジーン・クラーク単独作及び、ジム・マッギンとの共作であるオリジナルの楽曲が実にすんばらしいです。このあとコロンビアからデビューするに当たってここから再レコーディングされたのは、“Mr. Tambourine Man”、“I Knew I’d Want You”、“You Won’t Have To Cry”、“Here Without You”の4曲です。ここでの“Mr. Tambourine Man”は最初から最後までマーチング・ドラムがフィーチャーされていて、正規ヴァージョンとは大きく異なります。さすがにこれはちょっとうるさすぎるアレンジメントや思います。ほんだら以下トラック・リストです。

 

SIDE 1

1. You Showed Me

2. Here Without You

3. She Has A Way

4. The Reason Why

5. For Me Again

6. Boston

 

SIDE 2

1. You Movin’

2. The Airport Song

3. You Won’t Have To Cry

4. I Knew I’d Want You

5. Mr. Tambourine Man

 

70年代後半の2トーン・ムーヴメントの中心バンドだったスペシャルズのシングル集です。所有のレコは91年にリリースされたUKオリジナル盤で、CDも全く同じ内容です。オープニング・ナンバーの大ヒット曲“Gangsters”は当時出た国内アナログ盤には入っていましたが、もともと英国での1stアルバムには未収でした。その他“Rat Race”、“Ghost Town”、“Guns Of Navarone”などオリジナル・アルバム未収のここにしか入っていないヒット曲/重要曲がたくさん入っているので、スペシャルズとしてのオリジナル・アルバム2枚とこれでほぼコンプリートとなりやす。全16曲中、最後の4曲はリーダーだったジェリー・ダマーズがバンド分裂後に結成したスペシャルA.K.A.の音源で、そのうちの1曲である“ネルソン・マンデラ”は当時、FMでけっこう耳にしたことがあるような気がします。ネルソン・マンデラは反アパルトヘイト運動で30年近く収監されたあとに、南アフリカの大統領に就任した黒人活動家です。この曲がリリースされた当時はまだ獄中だったため、白人と黒人の混成バンドだったスペシャルズ~スペシャルA.K.A.にとっては当然見逃すことのできない状況だったわけで、歌詞は“マンデラを釈放せよ!”の連呼になっています。

 

そういえばスミスのジョニー・マーの自伝に書いてあったことを思い出しました。ジョニーはこういう感じのことをいうてはりました―「僕の世代のミュージシャンたちは、みんなインタビューや音楽で政治的な主張をするのが当たり前だったし、反サッチャーになるのは必然だったんだ」たしかにそうだったな~と思いましたね。今ではここ日本なんかでは「政治と音楽は切り離すべき」とか「音楽に政治をもち込むな」といった、たわけた意見をよく耳にするんですが、そもそもポップスやロックの成り立ちを知っていれば、うちらオッサンにとってはヘンテコな主張に聞こえてしまいます。故キヨシロウが原発をテーマに歌ったことは、ごく自然な行動だったし、キヨシロウらしいな~と当時は納得したもんです。おわり

 

第一期バニーメンの最終作です。リアルタイムでは前作84年の『オーシャン・レイン』まではなんとか追いかけていたような記憶が…もう昔過ぎて定かではありませんが、名曲“Killing Moon”は大好きでしたね。そこから3年、自然を題材にしたジャケット・デザインから心機一転、堂々とメンバーを正面にとらえ、タイトルもまるでデビュー作のような『エコー&ザ・バニーメン』ちゅう、わかりやすい姿勢で臨んだわけですが、結果的にはこれをもって解散となってしまいました。そんなわけで今回初めてまともに聴きましたよ。一聴してずいぶん明るくて軽快でポップだなと思いましたね。逆にこれが当時のファンには物足らなかったのかもしれません。『オーシャン・レイン』収録の“Seven Seas”路線をあまりに推し進めすぎて、深みがなくなってしまったような気はします。彼らはもともとそれほどのメロディ・メーカーだったわけでもなく、そこはウィル・サージャントの鋭角的なギターを中心とするクールなバンド・サウンドによって補完されていたように思います。ここではそういう面がちょっと引っこんでしまったような印象すね。“Bedbugs And Ballyhoo”ではゲストとして元ドアーズのレイ・マンザレクが参加し、もろ“Touch Me”なオルガンを披露していて「おお!」となる瞬間もあります。ただアルバム全体にはそれが生かされていないような気がします。この際レイに全面参加してもらえばよかったのになあ…などと勝手なこといってますが、それでもリリースから40年弱たって改めて聴いてみると、あの大仰な80sサウンドとは一線を画した彼らのこだわりは十分に伝わってきて、これはこれですばらしいやないか!と思ったりもします。引き続きスルメ・アルバムを期待しながら繰り返し聴いてみようと思います。おわり