茨城味自慢:春の風物詩「大洗沖のこうなご漁(いかなご漁)」 | ショートシナリオの館

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気ままに会話形式を中心としたストーリーを書いています。

 

現代人に不足しがちなカルシウムや鉄分が豊富で、春にしか食べられない春の味が「こうなご
(小女子)」です。こうなごとは、いかなごの稚仔魚のことです。茨城県のこうなごは1~2月
ごろに仙台湾で生まれ、早春に冷水に乗りやってきます。3月ごろには体長は2cmほどとなり漁
獲対象となります。見た目はしらすによく似た透き通った体をしていて、表層を群れで泳いで
いるところを、しらす同様に船曳網で漁獲します。4月には体長約3cm、8月には約10cmまで成
長しますが、体長7cm以上のものは「メロード」と呼ばれ、あまり食用には出回りません。こ
うなごの時代だけが高値で取引されるのです。茨城県では、平潟、大津、久慈町、久慈浜丸小、
大洗町の5つの漁協で水揚げされます。水揚げされたこうなごは、すぐに塩茹でした「釜揚げ」
や、干した「ちりめん」に加工されますから、生で市場に出ることは稀です。それだけ傷みや
すいのです。こうなごはカルシウムや鉄分などの栄養素が豊富で、甘辛く炊く「くぎ煮」が春
の味覚として親しまれています。しかし、ここ数年は全国的に漁獲量が減少しており、不漁が
続いています。茨城県では、通常3~5月に水揚げがあるのですが、2022年は4月の1カ月に
も満たず、年間12トンにとどまりました。今年も「中漁」予想で、水揚げは増加しない見通し
です。いかなご漁(西日本での呼称)と言えば瀬戸内海の春の風物詩として、全国的に有名で
すが、2023年の解禁日には、明石市の林崎漁港では水揚げがゼロになるなど、厳しい状況だと
の報道がありました。今ではどこの漁業者も資源の保護のために、漁獲量の制限や投網開始時
間の設定などを行っているそうです。漁獲量の減少はまことに残念ですが、こうなごの釜揚げ
やちりめんは絶品ですよね。今回は、貴重品になりつつある茨城県の「こうなご」を紹介します。

 

<いかなごとはどんな魚>

 

いかなごは、スズキ目・ワニギス亜目・イカナゴ科に属する魚類の総称で、日本各地の沿岸に
生息しています。体長は約20cmまで成長し、紡錘形で細長く、下顎が突き出ています。腹鰭が
なく、色は赤銅色です。いかなごはプランクトンを食べる魚で、冬から春にかけて砂底に産卵
します。イカナゴは沿岸の砂泥底に生息し、暑さに弱く、6月頃から晩秋過ぎまで砂に潜って
夏眠する珍しい魚です。いかなごは移動性が小さく、各地に固有の系統群が存在しています。
いかなごは食用として古くから親しまれており、様々な料理法があります。特に春の稚魚(こ
うなご)は、釘煮やちりめん干し、釜揚げなどに加工されて人気があります。成魚は刺身や塩
ゆで、煮つけなどにして食べられます。また、香川県ではいかなご醤油という魚醤も作られて
います。いかなごは栄養価が高く、たんぱく質やカルシウム、ビタミンB12などを豊富に含ん
でいます。ただし、食べ過ぎるとコレステロールや尿酸が上昇する可能性があるので注意が必
要です。

 

<いかなごの生息分布>

 

「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道全沿岸、陸奥湾、宮
城県~鹿島灘の太平洋沿岸、東京湾(稀)、伊勢湾周辺、瀬戸内海、山形県~九州北岸の日本
海沿岸となっており、海外においては朝鮮半島全沿岸、渤海、黄海、東シナ海に分布していま
す。いかなごは日本の春の風物詩の一つであり、美味しく楽しむためにも資源保護に配慮する
ことが大切です。乱獲や海砂の採取によって生息環境が悪化しており、漁獲量も減少していま
す。いかなごの漁期や漁獲量は各地で調査されており、禁漁期間や漁業規制が設けられていま
す。いかなごは、他の魚のエサにもなる重要な魚種ですが、日本では科学的根拠に基づいた資
源管理が十分に行われていません。一方、ノルウェーでは厳格な漁獲枠を設定して、水産資源
を持続的に保護しているようです。

 

<いかなごの漁獲量ランキング> (2020年度)

 

1位は断トツで北海道   8,639 t(75.5% )稚内市、利尻富士町、紋別市、2位は香川1,153 t
(10.1%)高松市、多度津町、丸亀市、3位は兵庫1,025 t(9.0%)姫路市、淡路市、たつの市、この3か所でほとんど漁獲されています。茨城県は9位です。2位以下の順位は漁獲量の減少で年度毎で大きく入れ替わりますので参考程度にしてください。

 

<いかなごの豆知識>

 

1.多くの名前を持ついかなご

稚魚のときは、東日本では「コウナゴ(小女子)」や「コオナゴ」、瀬戸内沿岸部では稚魚で
もイカナゴ、大阪では特に2cm前後の小さなものは「シンコ(新子)」、九州では「カナギ」
と呼ばれます。成熟した個体は、北海道では「オオナゴ」、東北では「メロウド(女郎人)」、
西日本では「フルセ(古背)」や「カマスゴ(梭子魚子)」などと呼ばれます。フルセ/カマ
スゴサイズのものは釜茹でされた状態で店頭に並ぶことがあります。

 

2.生態と産卵場所: イカナゴは砂泥質の海底で生息し、海底のプランクトンを捕食しています。産卵期は春から夏で、北の寒冷地ほど遅くなります。また、鹿ノ瀬という明石市沖合の場所はイカナゴの産卵場として有名です。イカナゴは、瀬戸内海を豊かにしている重要な魚であり、
明石の美味しい魚の一つとして知られています。

 

3.「こうなご漁」と「いかなご漁」は、どちらが正しいのか?

こうなご漁といかなご漁は同じ魚を獲る漁業なのですが、呼び方が地域によって異なるのです。
一般的に、東日本ではこうなご漁と言い、西日本ではいかなご漁と言います。これは、いかな
ごの稚魚のことを東日本ではこうなごと呼び、西日本ではしんこと呼ぶことに由来します。
また、成長したいかなごのことも地方によって様々な名前で呼ばれています。したがって、名
前の違いは地域の習慣や文化によるものなのです。

 

4.茨城県のこうなご漁

県民に親しまれているこうなごは、船曳網漁業で漁獲されますが、水揚げが多いのは、平潟、
大津、久慈町、久慈浜丸小、大洗町の5漁協になります。こうなご漁はしらす漁と同様1隻の
船で網を曳く1艘曳きです。1艘曳きの方がこうなごの魚体をいためず、鮮度が良いまま水揚
げすることができます。また、漁業者は資源を守るため、時節毎の投網開始時間等を設定する
とともに漁獲量を制限して操業しています。

 

5.イワシやカタクチイワシ、ニシンとの比較でわかる独自の特徴

イワシやカタクチイワシ、ニシンは、イカナゴやキビナゴ、コウナゴと比較することで、それ
ぞれの独自の特徴がより明確になります。イワシは、身が柔らかくて栄養豊富であり、主に佃
煮や煮付けにされますが、イカナゴはより細長く、刺身や佃煮に適しています。カタクチイワ
シは、小型で骨が柔らかく、しらすやちりめんに加工されることが多いです。また、ニシンは
身が大きくて脂が乗っており、干物や寿司に使われることが多いです。

 

6.いかなごの名前の由来

語源としては、ある人がなんの子供(稚魚)なのですかと尋ねたことに、なんの子供(稚魚)
であるか分からないので、“いかなこ(如何なる(魚の)子であるか)”と答えたことに由来す
るとする説が有力です。いかなごは漢字で「玉筋魚」と書きます。これは群れて泳いでいる様
子が「玉」に見え、姿が「筋」のように見え、群れをなす細い魚を表しているそうで、中国で
も同じ表記であるとのこと。

 

7.くぎ煮の由来

関西ではこのイカナゴを使った釘煮が有名です。昭和10年頃神戸市垂水区の魚屋さんに「イカ
ナゴを佃煮にしてくれないか」との依頼があり、イカナゴに醤油・砂糖(ザラメ)・生姜を使
い、苦労して炊きあげたそうです。その後評判になり魚屋さんの店頭にも置くようになったと
か。「釘煮」の名称は、昭和30年代半ば頃に神戸市垂水漁協の組合長さんが、出来上がりを
みて「さびて折れ曲がった釘」のようだと言われたことが「くぎ煮」の由来であったとのこと。
今では各家庭で我が家流「釘煮」を炊くようになり、関西に春をつげる風物詩のひとつです。

 

くぎ煮の基本的な作り方>

(材料)■イカナゴ 1キログラム■濃い口醤油 180CC■砂糖 300グラム■みりん20CC
    ■生姜 100グラム■酒 5CC

(調理)■いかなごを水洗いする■ザルに上げて水を切る■鍋に濃い口醤油、みりん、砂糖、
    酒、生姜を鍋に加えて強火で煮立たせる■煮立たせてから、いかなごを鍋に加えて中火
    ■加えた後は、基本的に混ぜないのがポイント(揺する位)■アクをすくった後は、落
    し蓋をする■汁気が無くなって来たら弱火にしてザルに上げ、煮汁を別の容器に入れる
    ■適度な煮汁を戻して冷やす

 

    完全に煮詰まらせてしまうと塩辛いので、慣れない内は、味見しながら煮詰めて行くと
    失敗しにくいです。

 

8.いかなごの釘煮の保存方法と賞味期限について

市販品のいかなごの釘煮の場合は、常温保存で1ヶ月〜3ヶ月と言う場合も多いのですが、基本的に、ジップロック等の気密性の高い容器に入れ、冷蔵保存するのが正解です。調理された後、常に酸化して行きますので、冷蔵保存で1週間〜2週間以内には食べきるようにしたいです。ジップロック等で空気に当たらず小分けで冷蔵保存している場合は、3ヶ月〜6ヶ月位は持つと言われていますが、温度変化が激しい冷蔵庫のドア付近では無く、奥の方に入れた方が良いですね。冷凍保存に関しては、最長で1年程度と言われていますが、可能な限り温度変化が少ない奥の方に入れた方が良いですね。調理時に砂糖が沢山使われていますので、ガチガチに凍ると言う事は起こりにくく、自然解凍で十分です。

 

9.こうなごの栄養価・効能

こうなごに含まれる栄養素には、カルシウム・リン・亜鉛・ビタミンD・ビタミンB12・ビタ
ミンB2などがある。こうなごは、カルシウムやリン、亜鉛などのミネラルのほか、ビタミン類
が豊富に含まれている小魚です。カルシウムやリンは歯や骨の生成に必要不可欠な栄養素で、
こうなごに含まれるビタミンDはリンの吸収を促す作用があります。亜鉛は基礎代謝や免疫力
を高める作用があるほか、美肌や美髪効果も期待できます。また、ビタミンB12は葉酸ととも
に血中のヘモグロビンの生成を促す作用があり、貧血予防にも効果的な栄養素です。ビタミン
B2は皮膚や粘膜などを健やかに保つほか、体内で糖質や脂質・タンパク質をエネルギーに変換
する働きもあります。

 

10.こうなごは鮮魚としてではなく、ちりめん、釜揚げ、佃煮などの加工品として、スーパ
ーマーケットで並んでいいます。小さいものほど値段が高く、大きくなると安くなります。大型になると途端にマイナーな存在となり、ときに飼料などになることもあります。
 

<茨城県のこうなご漁>
 

一艘式のいかなご敷き網漁業(火光を利用する敷き網)で漁獲します。夜間に集魚灯でイカナ
ゴ稚魚を集め、敷き網ですくい取る漁法です。通常、敷き網は船縁にあるローラー軸に巻き付
けられ、操業の際はイカナゴの群れの集まり方によって、網の長さを調整して垂下します。漁
期は短いものの、漁業のみならず加工業などの地域産業を支える非常に重要な漁業となってい
ます。しかしながら、同漁業では、魚群の形成状況によって一晩で少ないときには数kg、多い
ときでは数百kg以上の漁獲があり、漁期が短く出漁日数が限られる中では、漁獲量が多い日の
出漁回数が年間漁獲量を大きく左右し、さらに単価が、漁獲量のほかに魚体サイズによって変
化することから、漁獲金額の変動が激しく不安定な漁業といえます。このため、一回の操業で
より効率よく漁獲するために無線で情報を交換し、複数の操業ポイントを移動しながら漁を行
っています。
 

(1)こうなご漁は日の沈む前に出港し漁場に向かいます。
(2)漁場に到着したら船を止めて、網やかごの準備をします。
(3)魚群探知機で魚を探し、ライトでこうなごを集めます。船の上からすっごく明るいライ
   トで海を照らすと、光に誘われてこうなごたちが、ひょろひょろと海面近くまで集まっ
   てきます。大漁の時はライトをつけて10秒くらいで集まってきます。
(4)魚が集まったら、網を海に入れます。
(5)魚群の下に網を通して魚をすくうように、網をたぐり寄せ、こうなごを船側に寄せます。
   一連の流れに焼く3分ぐらいかかります
(6)更に、網をたぐり寄せ、魚を1ヵ所に集めます。こうして、光に集まったこうなごを一
   網打尽にします。
(7)集まったこうなごを、かごに移します。この作業を、決められたかご数になるまで繰り
   返します。
(8)水揚げしたこうなごは、海水氷を入れて、鮮度を保ちます。かごがいっぱいになったら
   魚市場へ向かいます
(9)到着した船から、こうなごの入ったかごを陸に上げます。
(10)魚市場に上げたら、セリにかけられ、その後、ほとんどが加工場に向かいます。
 

<生のこうなごが買えるお店>
 

やはり、傷みが早いので水揚げされた地域の鮮魚店や直売所などに限られるようです。

  1. 鮒甘露煮 田村屋 本店(古河市)
     新鮮なこうなごを釜揚げやちりめんに加工して提供しています。カルシウムや鉄分が
     豊富で、春にしか食べられない美味しい逸品です.
  1. 井戸道丸漁業(日立市)
     こちらは直営店で、美味しいこうなごを取り扱っています.
  1. 魚富(常陸太田市)
     こちらのお店では、しじみ、あんこう、ヒラメ、わかさぎ、マグロなども販売してい
     る。

これらのお店で、こうなごを手に入れて、春の美味しさを楽しんでください!
楽天市場でも、生のこうなごを取り扱っているお店がいくつか見つかりました。
 

今では、春先のほんの一時しか獲れないこうなごは、まさに春の風物詩。
 

是非、茨城県のこうなごをご賞味あれ!