第153話 楓、優広(ゆうひ)の物語。 | 鈴鈑工業のブログ

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板金屋さんの一喜一憂

実は、1年前(2010年11月頃)に、


楓と同じく、


鈴鈑工業の本社工場内に


迷い込んだ猫がいました。


その猫に名前を付けました。


優広(ゆうひ)


この名は、従業員などには


知られていない名です。


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この猫が優広です。


おそらく何か不自然なものを感じるでしょう。


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私も最初は驚いて凝視してしまいましたが、


顔の大部分を腫瘍に侵されていました。


ザクロを割ったような痛々しい姿だったのですが、


意外と人に慣れていて、


触れたら激痛が走りそうなその顔を


すり寄せてきました。



でも、私が驚いた最大の理由は、


見た瞬間に


「楓っ!?」


と思ってしまったことです。



まなざし、毛色、骨格などが瓜二つに


見えました。



楓の親か、もしくは兄弟かっ!?


もちろん断定できる材料は何もありません。

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優広は、ためらいもせず、工場内を徘徊し


始め、鈴鈑の敷地から一向に出ていく様子が


ありません。


さすがに仕事でフォークリフトを運転するには


危険すぎるし、楓のように引き取って、


果たして育てていけるのか?


という、自信の無さから、


一人で迷いに迷った挙句、


近くの公園に放してくる決断をしました。

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仕事を終え、帰宅し、妻に優広の話を


したとき、妻に促された言葉で


我に返りました。


「見て見ぬ振りをしようとした」


自分が情けなく思えました。



その夜、妻と二人で優広を捜しに


公園を2時間ほどグルグル回り、


途中、警察に怪しまれたりも


しながら、懸命に見つけ出そうと


しました。



しかし、見つけることができませんでした。

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翌朝、いつも通りに出勤し、


昼を迎えようとしたとき、


近くの川沿いの道ばたで、


優広を見つけました。



優広の亡骸(なきがら)との対面でした・・・。



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公園からまた戻ってきたように見えました。


わずか昨夜のことだったのに・・・、


もしかすると、自分の最後の場所を探して


いたのかもしれないのに、


私が余計な手出しをしてしまったのでは、


と、悔いました。



偶然なのかもしれませんが、


私は、楓、そして優広と関わった縁を


大切にしたいと思います。