史上初!日本の政治家がアメリカ上院で追悼決議される(見込み)
異例中の異例でしょうが、アメリカ上院では、安倍元総理の業績をたたえる決議をしようと、超党派の議員が動いています。
(リンク切れの際は、注目記事2318参照)
上院議員は定員が100人に対し、70名近くが決議案提案者に名を連ねているそうですから、ほぼ間違いなく採択されると見ていいでしょう。
過去には英国のサッチャー元首相や南アフリカのマンデラ元大統領らの追悼決議が採択されていますが、それに比肩することで、もちろん日本の政治家としては初の事です。
決議理由として挙げられている評価ポイントを抜き出してみます。
・一流の政治家
・世界の民主主義的価値観の不断の擁護者
・日本の政治、経済、社会、そして世界の繁栄と安全保障に忘れがたい足跡を残した
・「自由で開かれたインド太平洋」の概念を広めた
・日米豪印の4カ国が連携する必要性を説いた「安保ダイヤモンド構想」を打ち出した
・(日米間で)外交、軍事、経済協力を強化することで日米同盟を前進させた
もう、べたほめレベルですね。
米議会が戦前も含め、これまで様々な利害の衝突から、日本政界には厳しい対応を繰り返してきたことを考えれば、ありがたさを感じると同時に、意外性を感じた方もいらっしゃると思います。
なぜここまで安倍元総理を評価してくれたのだろうかと。
この辺は、アメリカがこれまで『民主主義の守護者』を自認し、『世界の警察』足らんとしてきた足跡を考えれば、なぜここまで評価しているかが見えてくると思います。
ロシアやシナの侵略行為に、己の旗の下に一致団結して当たれない、『西側諸国盟主』アメリカの苦悩
それは今のアメリカの外交方針を見れば分かります。
もはやアメリカ一国では、『民主主義の守護者』として世界を支えきれないという自覚を持ち、その線で外交展開している。
日本やNATO諸国と共同で事に当たろうとしているのをみれば、一目瞭然。
それが今のアメリカの姿です。
しかし民主主義的価値観を共有する西側諸国は、残念ながら一枚岩ではありません。
欧州とアメリカの間には、様々な利害関係があり、様々な点で対立することも、しばしばです。
ウクライナ戦争に対しても、欧州の中でさえ、対応が分かれる始末です。
こういう事がロシア、シナをして、分断工作の隙を与え、そして彼らの侵略を許す結果につながっていると言っていいでしょう。
彼らは、西側が武力行使に踏み切らないぎりぎりのラインを突き、支配下に置きたい地域に様々な形で浸透し、頃合いを見て実力行使を繰り返しています。
非常にずるがしこいやり口です。
ウクライナ侵略戦争以前から、チェチェン紛争他の武力介入などへの対応のあいまいさ、シナの東シナ海、南シナ海での横暴に加え、スリランカを破産に追い込んだ『債務の罠』などに明確な対応が遅れたのも、アメリカが対応に苦慮というか、対応策が迷走してきたからでしょう。
正義ぶりたいアメリカが冷戦終結後迷走した理由とは
その理由はと言えば、それに対抗するだけの国力が不足気味であったことは、確かに大きかったでしょう。
さらにシナやロシアに対抗する明確な対立軸(ドクトリン)を示せなかったことが、追い打ちをかけていたと言って良いでしょう。
アメリカはとかく正義ぶりたい国です。
冷戦時代は共産主義の魔の手から民主主義を守る戦いという明確なドクトリンを示し、これで対峙し、ついには事実上勝利しました。
しかし冷戦終結後、そのドクトリンを見失っていたのです。
その後テロとの戦いとか、場当たり的な正義を掲げてきましたが、そんな付け焼刃だからこそ、西側諸国の団結を作り上げられなかったのです。
何しろ経済的苦境を他国の不公正に求めるという事もしてきましたから、同盟諸国とも揉めることとなり、それがアメリカへの求心力を下げることにつながった面が否めません。
そもそもそういう事が起きること自体、アメリカの国力が相対的に他国と小さくなり、以前のような『世界の警察』として振舞えなる事につながっていたのです。
確かに『世界の警察』として振舞うこと自体はアメリカによる世界への奉仕であって義務ではありませんが、今まで自分たちを守ってくれていたものがそうでなくなれば、アメリカへの求心力が下がらざるを得ません。
そこへ日本や欧州、カナダやラテンアメリカ諸国、更には韓国、ASEAN諸国とも経済摩擦でもめ事が増えた結果、自由主義諸国で一致団結してシナやロシアと対峙する機運が遠のきました。
そういう背景から、アメリカは自由主義諸国を自らの下にまとめることが出来なくなり、またアフガニスタン、イラク戦争の後始末も失敗し、己の正義を高らかに掲げるドクトリンを見失っていたのです。
アメリカが打ち出せなかったドクトリンを掲げたのが、安倍元総理だった!
それを打ち出したのが、実は安倍元総理なのです。
シナの横暴に対抗するには、価値観を共有する者同士が連携して包囲、封じ込めるのが良い。
これがセキュリティーダイヤモンド構想であり、今アメリカが打ち出している、「自由で開かれたインド太平洋」の原型というか、そもそも安倍元総理が打ち出した政策を、(名称を変えたくらいで)ほぼそのままアメリカの政策として採用したものがこれです。
つまりアメリカがそれまで手薄になっていたアジア太平洋、そしてインド洋でのプレゼンスを、アメリカの威信を失わない形で維持することに大きく寄与し、ロシアやシナと対抗する盟主としての地位を維持することに貢献したと、アメリカが評価していると言っていいです。
共和党、民主党問わず、アメリカが安倍元総理を評価するゆえんです。
アメリカが長らく見失ってきた『正義の戦い』のドクトリンを提示されたのですから、それを喜ばないはずがありません。
それが最もよく現れていたのが、『希望の同盟演説』として名高い、安倍元総理によるアメリカ連邦議会演説に対する、上下両院議員たちの反応でしょう。
『希望の同盟へ』米国連邦議会上下両院合同会議 安倍総理演説-平成27年4月29日
だからこそ、その功績をたたえ、アメリカ上院も最大限に栄誉を表そうとしている。
安倍元総理がアメリカに歴史的人物として評価されたことに、日本国民の一人として感謝を感じるとともに、過去の存在として語られていくことに、寂しさを感じます。