トランプ大統領は悪夢(だったと思います)の韓流おもてなしを何とか振り切り、今度は中国で接待を受けました。
中華流のおもてなしと言えば、とにかく相手を持ち上げ、下にも置かない接待攻勢が有名ですね。
身の下の話は(その接待を受けた当人は当然言いたがらないので)あまり大きく取り上げられませんが、ハニートラップ攻勢もすごいと聞きます。
(橋本龍太郎元総理の話は、氷山の一角です)
これにコロッと乗せられて、つい前のめりの投資を(中国に)行って、後で理不尽な追徴課税や労働問題で手ひどい目に遭って、這う這うの体で中国市場から撤退を余儀なくされたビジネスマン(日本人だけではない)が後を絶たないのは、皆さんもニュース等で聞かれたことがあると思います。
かつて田中角栄元総理が日中国交回復のために乗り込んだ際は、宿泊した部屋で、暑がりの角栄氏(バセドー病の影響だったとか)の好む温度設定に調整してあったため、感心したというエピソードがあったそうです。
そういう機微を伺って相手の心の琴線に触れる手法はすごいので、つい乗せられてしまうのですね。
「人たらし」と言われた田中角栄氏ですら篭絡し、中国有利な条約締結にこぎつけました。
この時は表向き日中戦争に関する賠償は求めないとしたものの、旧満州国に残した資産は中国政府にことごとく接収され、1円も返還されませんでしたし、莫大なODAを長年得る事に成功し、今の中国の発展につなげて、それが今、日本の首を締めています。
(中国の低賃金が日本の下請け産業の仕事を奪い、日本の産業空洞化の主原因になった)
今回の中華風「おもてなし」は、世界遺産であり、中国有数の観光スポットである、旧清朝の宮城だった故宮(紫禁城)を貸し切りにして習近平主席夫妻自ら案内したり、中国の伝統芸能として有名な京劇を披露したりと、相当な歓迎ぶりでした。
もっとも京劇鑑賞の際、トランプ大統領は居眠りをしていたようですから、ちょっとピント外れだったように思いますね。
これはさすがにトランプ大統領も礼儀を失した形になりましたが、まあ仕方がないかなと、同情する気にはなります。
なにしろその直前まで、悪夢(だったと思います)の韓流「おもてなし」をどうにか無難に切り抜け、アメリカの主張を伝えるという難題(韓国人は空気が読めないため)を何とかこなしてようやく一息ついたところだったでしょうから。
もっとも習近平氏も礼儀を失する行動をしていて、お客様の前でコートのポケットに手を突っ込んでいて、トランプ大統領に見とがめられて手を出すという仕草がネットに上がっていました。
中国のネット上では「中国の方が上」である事を示したという主旨の意見があるようですが、世界標準で見たら、単なるマナー違反です。
それも他国の国家元首(しかも自分がホストとして接待する立場で)の前でやったのですから、いい度胸をしているというか、大国を自称している割にはそうしたマナーをきちんと身に着けた人間を国家元首として選べないのかと、少し呆れます。
(もっとも中国には、国民が国家元首を選ぶ制度はありませんが)
そして晩さん会には、南シナ海にあるスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国企業が養殖した魚を調理した料理を提供したそうですから、きちんと政治的なメッセージを入れて、アメリカをけん制した形になります。
これは日中韓おもてなし合戦の軍配はいずれに上がるかの記事でも触れた韓国のやり口そっくりで、さすがは大朝鮮と揶揄される事だけはありますね。
これでは心から歓迎しているというメッセージは、読み取れませんね。
全体としてみれば、韓国の「おもてなし」よりはるかにマシですが、トランプ大統領も中国の意図は読み取ったでしょうし、習近平氏も「おもてなし」でトランプ大統領を篭絡する意図まではなかったのでしょう。
まあ教科書通りの接待を、極限までに豪勢にしたというのが、今回の中華風「おもてなし」でしょう。
それをカバーしたと見られるのが、やはり札束攻勢だったでしょう。
今回中国がトランプ大統領に提示した商談は、総額で2535億ドル(約28兆8千億円)に上りました。
主要なものだけでも、ボーイングからの航空機300機調達で370億ドルや、アラスカでの液化天然ガス(LNG)開発への中国からの投資430億ドルなど、日本を含めて他の国では真似が出来ない規模の札束攻勢でした。
さすがにこれだけの札束攻勢にトランプ大統領もリップサービスせざるを得なかったと見え、貿易不均衡是正の必要性を主張しながら、「中国が悪いのではなく、歴代アメリカ政権の無策が原因だ」と発言しました。
まあ貿易赤字(昨年で3470億ドル)が突然巨額に積み上がる事はないので、それ自体は正しい発言ですが、この場で言う発言としては、すこしサービスが過ぎると思いますが、まあそれだけの衝撃をトランプ大統領に与えた事は間違いないでしょう。
元々トランプ大統領はビジネス界出身で、ビジネスライクの話の方が性に合っているのは、間違いありません。
過去にもそういう主旨の記事を書きましたが、中国も同じ結論に達していたのでしょう。
トランプ大統領の反応を見てか、習近平主席は国連安全保障理事会の制裁決議を全面的、かつ厳格に履行するとしつつも、対話による平和的な問題解決を推進すると発言しており、対北朝鮮圧力強化を求めたトランプ大統領の主張に乗らない事を明言しました。
『残された時間は少ない』という軍事オプションを匂わせたトランプ大統領の発言を強くけん制したものといって良く、北朝鮮問題では残念ながら中国を攻めきれなかったようですね。
同時に「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言し、太平洋をアメリカと中国で二分割する野望をにじませる発言をしました。
これまでにも中国の幹部が太平洋二分割支配をアメリカに持ち掛けたという話がありました。
その時に応対したアメリカ側の司令官は冗談として受け流したようですが、今回の習主席の発言と重ねると、これが中国の本音だと分かります。
トランプ大統領の発言を受けて、ちょっと気が大きくなりすぎて、つい本音が出てしまったのでしょうか?
さすがに聞き捨てならないと見て、河野外相がすかさず「中国は太平洋と接していない」と不快感を表明しました。
河野外相が就任前の下馬評と異なり、きちんと仕事をしている姿は頼もしい事ですが、同時に中国の野望については、今後注視していく必要を感じます。
トランプ大統領が一連の中国の「おもてなし」をどう評価しているのかは、しばらく大統領の発言などを注視しないと分かりませんが、必ずしも満足させられなかったと見られる接待を、札束攻勢でカバーし切れたかどうかですね。
さすがに日本の国家予算の1/3近くに上る商談に感謝したでしょうが、恐らくトランプ大統領の心までゲットする事は出来なかったのではないでしょうか?