安倍総理とトランプ大統領との初の首脳会談が、2月10日に行われる事が決まりました。
その直前にマティス国防長官が来日し、稲田防衛大臣とだけでなく安倍総理とも会談を持つでしょうから、首脳会談の露払いをマティス氏が行う形になっていることでしょう。
それを考えると、首脳会談の議題の力点も想像できそうです。
まず間違いないのはアジアの安全保障体制について、稲田・マティス会談の内容を踏まえて、より突っ込んだ話し合いが行われるであろうという事です。
アメリカ人は物事を極めて合理的に考える性がある事からも、首脳会談の直前に行われる閣僚会合を踏まえた話が行われるはずです。
就任後、中国政策に関する発言がいくつも出ており、明らかに中国と対峙し、これ以上の勢力拡大を認めないという姿勢が鮮明になっています。
アメリカが中国の伸長をこれ以上許さないのであれば、当然、中国の周辺地域をいかに自派の勢力で固められるかどうかが、地政学的に言っても重要なカギとなります。
それならば中国と対峙する勢力の最前線にあり、その中でも最も国力のある国と協力関係を強化するというのは当然の戦略であり、それが国防長官による首脳会談露払い→首脳会談という流れにつながったと見てよいでしょう。
先日の電話会談で、トランプ大統領は「日本の安全保障を確実にするための断固とした米国の責任」を安倍総理に伝達したそうですが、地政学を踏まえてアメリカの安全保障体制を考えれば、ごく自然な判断だと思います。
実際に日本が中国包囲網から脱落すれば、封じ込めは瓦解し、アメリカはグアムやハワイまで防衛ラインを下げざるを得なくなります。
そして「日本が中国包囲網から脱落」している状況というのは、日本が中国に戦争などで敗北しているか、政治力学の変化等で日本が中国の行動を阻止できない状況に陥っているかのいずれかですから、事実上アジア連合VSアメリカという構図になっているはずで、その場合はアメリカといえど或いは敗北を覚悟しなければならない状況になっている可能性が高いでしょう。
将棋だと、アメリカが王将、日本は竜王(将棋の駒で「飛車」が成った状態)に例えられるでしょう。
竜王が相手方に取られたら、それだけでは敗北が決まりませんが、相手方に利用されれば、いやいつ盤上に上がってくるかと思えば、戦術が限られてくることが分かりますよね。
トランプ大統領がいつからかは分かりませんが、アジア戦略上、日本が無くてはならない重要な大駒である事に気付いたからこそ、電話会談での発言につながったと言って良いと思います。
もちろん会談の議題はそれだけにとどまらないでしょう。
トヨタを始めとした企業を名指しして日本(の貿易不均衡)批判を行う位ですから、アメリカからの輸入を増やす事や現地生産の拡大でアメリカ人の雇用を生み出す努力を求められることでしょう。
これに対してどう向き合っていくべきか?
それにはやはり、トランプ氏がビジネス界出身であることを踏まえた対応をすべきだろうと思います。
様々な発言が物議をかもしていますが、その底流に流れるのはやはりビジネスマンの視点から出ている発想を感じます。
とすればトランプ政権との各種の交渉は、お互いの利害をぶつけ合って落としどころを探るという、ビジネスライクを念頭にした手法が、一番トランプスタイルに合うのではないでしょうか?
トランプ発言は一見、「俺の言う事をすべて呑め、それ以外は認めん」という風にも聞こえますが、ビジネスの世界に身を置いていた者なら、交渉ごとにおいて全ての要求が通ることが無い事ぐらい、十二分に経験し尽くしているはずです。
だから伝えられるイメージに惑わされず、譲るところは譲るが、そうでない所は断るという冷静な対応をしていけば良いと思います。
前の記事でも書きましたが、日本が一方的に輸出しているのではなく、IT関係製品やサービス、航空機や防衛装備品など、アメリカ製以外では代替が難しい製品をどんどん輸入しているのです。
そうした日本が苦手とする分野の製品は、これからもどんどん輸入するからそれでバランスを取ることを考えようと持ち掛ければ、アメリカからの一方的な要求の突きつけにならず、落としどころを探れるのではないでしょうか?