東日本大会① | スピカの住み家

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事の始まりは七月だった。

「東日本出るの?」
リバティタワーでレポートを作成している横に、T下が現れたのだ。

明治は東日本選抜の大会で優勝を果たしていた。詳しくは知らないが、東大や慶応といった強豪校を相手に競り勝っていたのである。私も二年前に東日本行きを決める3勝目を挙げており、優勝を経験していた。どうも昔から明治は五人制に強いらしい。

私はその頃将棋どころではなく、柄にもなく学業に本腰を入れていた。レポートやらテスト勉強やらでやたらとストレスが溜まる。疲れもあいまって学校ではずっと無口だった。

その最中にT下の声である。煩わしさにも耐えかねて応対した。

「日程は空けてあるけどまだ誰にも話していない」
T下は「そっか」と微笑んだ。
ついでに合宿についても聞かれたが、こちらはNOとした。そうそう将棋でバイトを休むわけにはいかないのである。

主将からも連絡があった。実はまだ曖昧な状態だったのだが、主将がオーダーを見せてくれた。
これを見て行くと決断。手帳の空欄に「東日本大会」と書き込んだ。