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"Food for Thought"

日々考えていることを、自分の思考をまとめるためにも書きつづっています。

 大仰なタイトルですが、ケーズデンキを創業した加藤肇と彼のファミリー・ヒストリー。また、戦前から東日本大震災頃まで、市井の民として、どう感じ、どう動いたかも描かれています。

 

 通信隊として終戦を迎え、加藤電機商会としてラジオの修理から創業。松下のナショナルショップへ加盟後、松下以外も扱う量販店へと拡大。ヤマダ電機とコジマの激安戦争「上州戦争」に、カトーデンキ販売(現・ケーズデンキ)も加わった「YKK戦争」を展開し、その後は、ヨドバシカメラ、ビックカメラといったカメラ群も加わった家電量販競争の歴史は、「そういえば、あった、あった」と思い返しました。そのなかにあっても、戦時中で兵士の命が粗末に扱われた経験から、社員に無用な無理をさせない「がんばらない経営」を掲げ、そのため、逆に全国からのFCの申し出で規模を拡大。

 

 家電販売業界では「お客には三種類しかない」という言葉があるそうです。価格重視の「金に付く客」、続いて販売員重視の「人に付く客」、最後が「店に付く客」で、この順で客をつかむことが商売繁盛のコツだそうですが、読んでいると本当にそうだと思います。

 

 内容は、創業者の社員重視の考えを中心にしたものであり、437ページの読後は「清涼感」という一冊です。

 

 今月の『文芸春秋』に「代表的日本人」100人が掲載されている。暑くて家に籠っているので、選者になれる立場ではないが、自分ながらの勝手格付けをしてみた。

 

◆上杉鷹山

内村鑑三の『代表的日本人』にも今回の『文芸春秋』にも選出済み。「伝国の辞」をあの封建時代に掲げたところが素晴らしい。藩の財政再建を行っただけに、「働き一両、考え五両、見切り千両」と語ったらしいが、その後に「無欲萬両」を加えたらしく、恐れ入りましたの世界。

 

◆勝海舟

 亡父が好きで、よく話を聞かされた。江戸市民のため江戸城無血開城を行ったのは有名(実は裏で山岡鉄舟が動いた)。のちに、「幕臣のくせに戦いもせずに城を明け渡し、維新後は明治政府に仕えて、武士としての痩せ我慢が足らん」と福沢諭吉に『痩我慢の説』で批判されるが、「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張」と、結果を求められる政治家と教育家の違いを際立たせた。

 

◆大平正芳

 『文芸春秋』で宮崎哲弥氏により選出済み。2つの緊張関係から成る2つの軸でバランスよく考えるという「楕円の哲学」や、過去と未来の緊張関係上にある「今」を重視する「永遠の今」を提唱。「所得倍増」後、GDPのみではない、文化・家庭・総合安全・環太平洋連帯・田園都市などの実現を図るも急逝。赤字国債を定常的に発行せざるを得なかったが、「万死に値する」と後世へツケを残さぬよう歴代政権初の消費税導入を主張。「日本国民は賢明であり、理を尽くして、ていねいに説明すれば必ず最後には理解してくれる」との信念があったが導入に至らず、のちの四十日抗争にも発展して命を縮めた。揮毫は「任怨分謗」「良賈深蔵如虚」「興一利不如除一害」「着々寸心洋々万里」など哲人政治家の思想を表すものが多い。

 

◆保科正之

 あまり知られていないが、徳川家光の腹違いの弟で初代・会津藩主。善政を施し、「たとい藩庁の損となることであっても、民に益するを旨とせよ」と社倉をつくり、飢饉時に蔵を領民に開放。「会津藩たるは将軍家を守護すべき存在であり、藩主が裏切るようなことがあれば家臣は従ってはならない」と「会津家訓十五箇条」に書き残し、これが故に、幕末で会津藩は佐幕派として壮絶な戦いをする。この時期まで、保科正之の遺徳が残っていたとも考えらえる。

 

◆塚越寛

 ご存命で、伊那食品工業の最高顧問(元・社長)。長野の人には「かんてんぱぱ」のほうが知られている。寒天の会社ながら、いまや寒天は至る所に使われており、過去に44期連続増収・増益を実現。少しずつでも成長する「年輪経営」を掲げ、「会社の目的は社員の幸せを実現することにある」と言い切る。豊田章男前社長も私淑し、トヨタ幹部も伊那で研修を受けるほど。広報誌トヨタイムズに掲載された以下の言葉は、年を重ねるごとに実感できる。「人への思いやりを優しさと言うんですよ。『にんべんに憂う』って書く。だから優しいという字は、思いやりのことなんです。『人を憂うことに秀でた人』って書くと、『優秀』っていう字になる。これは偶然じゃない。やっぱり昔の人は考えている。思いやりの優れた人が優秀なんです。」

 

『暇と退屈の倫理学』 國分 功一郎 著

 

 「ウサギ狩りをする人にウサギを渡せば、イヤな顔をするだろう。その人は、ウサギが欲しいのではなく、気を紛らせてくれる騒ぎが欲しいのだ」。人は、部屋にじっとする退屈に耐えられないので、気晴らしを求めるというパスカルの言などを引用し、「暇」と「退屈」について、これでもかと考察します。

 

著者の考えでは、「暇」は客観的な条件であり、「退屈」は主観的な状態。これらは、定住生活によって生まれ、富の象徴としての有閑階級なども生み出したとあります。

 

「暇だ・暇でない」という軸と「退屈だ・退屈でない」の2軸で4象限をつくり、「暇」と「退屈」を分析していきますが、普段気がつかない内容で、時間への考え方が少し変わりました。

 

 また、こうした「暇」や「退屈」は、人間独自のものか動物も退屈するのか、にまで踏み込み、トカゲやダニの生態系まで考察。ここでは省略しますが、ダニの吸血行為に関する生態はとても面白く読ませていただきました。

 

 パスカルに始まり、ラッセル、ハイデッガー、キルケゴールなどの哲学者が登場しますが、「哲学」というより「エッセイ」という感じです。久しぶりに、脳で筋トレをしたようで、少し血の巡りが良くなった気分になりましたが、これほどまでに「暇」と「退屈」について考え、書き切れるというは、ある意味、すごいことだと感動しました。

 

『DIE WITH ZERO』 ビル・パーキンス 著

 

 このところ、いわゆるビジネス本は読んでいなかったのですが、書店で気になって購入。直訳すれば「ゼロで死ね」ですが、なかなか面白い視点と思います。

 

 「人生でしなければならない、一番大切な仕事は、思い出づくりです」が基本論調。お金は、死ぬまで貯めこむのではなく、経験に「投資」すべきと説きます。面白い視点というのは、経験に投資することによって、「(思い出という)記憶の配当」を得ることができ、これは尽きることなく積み重なっていくという点。「経験から多くの楽しみを引き出せる体力があるうちに、純資産を取り崩すべき」で、死ぬまでにZEROにするのがベストとあります。著者はウォール街での経験ありとのことですが、投資家らしい発想と思いました。

 ご本人は、1億2000万ドルの資産があるということで、「そりゃ~、そこまで資産があれば、ああた、誰でもそう思いますよ」と言いたくなるのをグッとこらえて読了。

 

「DIE WITH ZERO」はわかったのですが、自分のように「LIVE WITH ZERO」(ゼロで生きろ)と言われるような生き方では、どう経験に投資する資金を工面するのか、この本からは読み解けませんでしたが、新しい視点を提供してくれる一冊です。

 

『職業は武装解除』 瀬谷 ルミ子 著

 

 ちょうど読み終わったのですが、これ、素晴らしいです。NHKスペシャル「ヒューマンエイジ(第2集 戦争)」に出演されたことから、2015年の文庫版(単行本は2011年)を読んでみたのですが、実体験をもとに提言される日本の指針には思わず鼓舞されます。

 

 著者は、高校生のときにルワンダ難民の親子の写真を見て、紛争地帯の問題解決に携わることを決意。自らあちらこちらと接触するうちに、英国ブラッドフォード大学に「平和学部」があることを知り英国留学。やがて、「DDR(Disarmament:兵士の武装解除、Demobilization:動員解除、Reintegration:社会復帰)」という専門分野を見つけて、アフリカなどの紛争地帯に単身乗り込んでこれを実践。武装解除をしても、武器はそのまま残され、精神的苦痛や周囲との軋轢などから、一市民として生きるようになるには、こうしたDDRが必要なことがよくわかりました。

 

 実践を続けるうちに、「文句をいうだけじゃなくて、自分が日本をどこまで変えられるか、やってみたら?」と自問し、やがて「個人は傍観者ではなく、行動するものとして施策に影響を与えうる役割がある」という考えに至ります。海外では「日本人」として見られ、それは「日本」という国の評価がどうかで変わってくる経験を通じ、「自分の国が行うこと、つまり日本政府の方針と自分は無関係ではいられないことを痛感した」とあります。

 

世界の国々からは、「日本のもつ中立性と大戦後の復興の経験が、世界各地の紛争地域に大きな(良い)影響を与えているという事実」があり、これを踏まえて、「資金協力か自衛隊派遣かの二択ではない」「独自の非軍事分野での平和貢献を強化することで果たせる役割がある」と述べています。「日本が背負ってきた歴史的約経緯は、他の国がどれだけお金を積んでも手に入れられない価値を持っている」というのは、この本を読んで今更ながら「なるほどな~」と思いました。昨今の緊迫した情勢から賛否ありかと思いますが、実体験を踏まえた提言には重みがあります。

 

 ただし、決して堅苦しい本ではなく、現地での痴話話(といっても暗殺者が出てくる)や海外での珍体験も豊富。実践の重みをつくづく教えてくれる一冊です。

 

『大国政治の悲劇』 ジョン・J・ミアシャイマー 著

 

 「フルコースのディナーをワインとともにガッツリいただきました」という読後感です。辞書並みに分厚い本で、読むのを躊躇しましたが、この「新装完全版」には「中国は平和的に台頭できるか?」が追記されているとのことで、思い切って挑戦。発行年は、2019年ですが、歴史を振り返りつつ(日本についても詳述)、いまにも通じる内容です。

 

 「オフェンシィブ・リアリズム」を主張される著者の要点は、おおよそ以下の3点。①国家を超えて全世界の安全を守る中心的な権威がなく、②どの国もある程度の攻撃的な軍事力を持ち、③国家同士は夫々が何を考え何をしようとしているかを完全に把握できない、なかでは、大国は生き残りのために覇権を求めるというもの。そのため、大国の防御的な対応は、もう一方の大国からは攻撃的と映り、偶発的に紛争に至りかねないと説いています。

 

 最終章の中国の部分では、この25年間で、過去の中華思想から「列強に支配された『恥辱の世紀』を経験した」と認識を変え、その恥辱を晴らすことが重要目標の一つとなり、「もし中国が劇的な経済成長を今後の数十年間続けられれば、アメリカや周辺国との激しい安全保障競争を展開するようになる」と推論しています。中国も少子高齢化・人口減少などで、今後「劇的な経済成長」を図れるかは怪しくなりつつありますが、(著者も書いているように)この推論が外れることを期待したいところです。

 

【松ト麦】

 遂にやってきました「松ト麦」。苦節1年!

 香川で、美味しいうどんを食べてから自称「うどんフェチ」。なかなか東京に香川並みはないな〜と思っていたところ、何と!近くにあるではありませんか! 

 店長の井上こんさんは、年間500杯はうどんを食べるという業界では有名な「うどんライター」。テレビにも多数出演され、その後「うどんスナック 松ト麦」を自ら開業。超予約困難店で、フラッと入れるうどん屋とは訳が違います。昨年10月に半年待って予約が取れたものの、井上さんがギランバレー症候群という難病に罹って一時休店。この春から再開し、ようやく今日に至ったのです。

 井上さんのうどんにかける情熱は凄いです。日本中の小麦の系統図を作り、どういううどんにはどの小麦をブレンドするかまで研究。うどんは自分の足で踏んで作る完全手作り。ちょうど今月は香川から戻って来たばかりで期待は高まります。

 今回のお目当ては、「まきゃない」の鍋焼きうどん。外はふわふわで中はしっかり。9種類の出汁を使って、これぞうどんです! いや〜、これは待つ甲斐がありました。

 また伺いますと言いたいところですが、本日からお店は完全予約制。次にいただけるのは、また1年先でしょうか…。
『沖縄県民斯ク戦ヘリ』 田村 洋三 著
 
 米軍側14千人に対し、日本側208千人(内、一般住民113千人)もの戦没者を出した沖縄戦。海軍司令部濠で指揮を執りながら、沖縄での惨状を海軍次官に伝え、「沖縄県民斯ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」という電文を最後に自決した大田實少将(没後、中将)。ご家族への聞き取りなどを中心に、ご自身と家族の経歴を生存した纏め上げた本です。この電文は、一時、見落とされていたものの、後に佐藤栄作内閣での沖縄返還交渉の導火線になったと書かれています。
 
 文庫本とは言え、561ページもあり読み応えがありました。大田家には11人ものお子さんがあり、戦前は華やかであったものが、戦後は(子沢山だけに)貧苦と食糧難、さらには「軍人のおかげでみんな苦しんだ」と価値観が逆転して苦悩する家族の軌跡などが描かれています。
 
 落合畯(たおさ)と聞いてピンとくる人はいないと思いますが、海上自衛隊の「ペルシャ湾掃海派遣部隊」の指揮官。「事故ゼロ、稼働率100%」の結果だったそうですが、実は大田實中将の実子。読書好きの大先輩と昨今の有事問題などで一献やっている際に、「同級生が落合畯氏(大田畯氏が落合家の養子になった)だった」ということからこの話に至りました。落合氏も当初、沖縄駐在となりますが、文中では「また我々の子供を戦場に連れて行くのか!」と抗議が殺到し、苦労されたようです。
 
 一方、落合氏は「この電文のおかげで沖縄における海軍はまだ受け入れてもらえる。陸軍は全員玉砕で県民のことは考えていなかったので県民のアレルギーが強い」と先輩に語っていたそうです。「日本人として知っておかなければならいない事実だから」と読むことを薦められたのですが、確かに一読に値する本と思いました。

 

 

『ファーストペンギン』 坪内 知佳 著

 

 これは、面白いです。(富士急ハイランドほどではないものの)ジェット・コースター並みにアップダウンが激しくて、ほぼ一気読み。「日曜討論」に登壇していて、面白いことをする人がいるものだと思ったのですが、昨年、すでにTVドラマ化されて放映されたようです。

 

 著者が、山口県萩市の漁師3人から1万円ずつをもらって、月給3万円でスタートした「船団丸」。捨てられていた魚を「三方よし」の直販モデルとして販売するも、荒くれ漁師たちを相手に悪戦苦闘。一方で支えてくれる仲間も現われ、やがて全国展開にまで広がるサクセス・ストーリー…と言えばカッコいいですが、地道な泥臭い(魚臭い)活動の連続。

 

 いま、「スタートアップを!」をと騒がれていますが、既存のさまざまな壁を乗り越えていくには大変な情熱と信念がいるのだということがよくわかります。特に、本来、漁師を守る立場の漁協が最大の壁。漁獲量が減るなか、「漁師の生活を守るという本来の目的よりも、組織の存続が優先され」、(『砂糖の世界史』を読んだ後だっただけに)まるで漁協と漁師の関係は、支配国と植民地のような感覚を覚えました。

 

 こうした話とは別に、漁業や魚とはどういったことかもよくわかりました。養殖ものはできれば避けて、有り難くいただこうと思います。


『女王陛下の影法師』 君塚 直隆 著

 

 2007年の単行本を文庫化。19世紀のヴィクトリア女王からエリザベス女王までの君主に仕えた秘書官の話。文庫化にあたっては、現・チャールズ国王の戴冠式のTV解説を行った筆者だけに、あとがきにて「今」を追記。君主に対しては公平中立に意見を述べ、政府との仲介にもあたった秘書官の動きを通して、自然と近現代の英国政治史が学べるお得な本。文章も読みやすく、別の視点から見た歴史書としても秀逸。

 

 初版当時、英国連邦(コモンウェルス)には、14か国に25億人もおり、世界人口の30%を占めていたとあり、英国の君主の大変さがよくわかる(エリザベス女王の日課も書かれているが、自分にはとても無理)。とは言いつつ、「王冠をかけた恋」やダイアナ妃、チャールズ現国王の恋バナや、君主と首相の相性からくるゴタゴタ話など、「所詮、人間ですよね」と思わせる逸話も豊富。

 

 日本には、こうした秘書官はおらず、侍従(長)が中心となって動いているらしく、日英のそうした違いなどもわかってお薦めの一冊。