第五話 部活・まだ何も知らないボク
「これが1000年前のプロジェクトの概要です」
魔法史の時間。
その授業の講義はテレビで何度もやっている内容だし、小学生でも雑誌で大まかな事を知っている。
半数以上の生徒が、春のうららかな陽気に負けて、ぎっこんぎっこん舟を漕いでいた。
そんな中、優希はのんびりこれからの学校生活のことを考えていた。
「4つの力、即ち、強い力、弱い力、電磁力、そして重力。このすべての力の根源、4つの力の元が同じ力であるということを証明するプロジェクトが宇宙規模で行われることになりました」
まずは部活を決めなくてはならない。
「地球上では強すぎて危ない熱量を使用するので、500光年離れた宇宙でその実験は行われることになり――」
この学園には魔法学園というほどはあって、魔法の習得に役立つ部活が充実している。
「事実500年かけてその宇宙の僻地へと実験機は飛んで行ったはずです」
その最たるが、第一魔法学研究部。通称、第一魔研部。
「ここから先は来年、実験機からの連絡が入り、事実がはっきりするところでありますが、一応学会ではこういう説が有力です」
春休みに、会長と姉さん―――その時は知らなかったが、今考えればあれは姉さんだった―――が演武を繰り広げたあの部活だ。
「実験中に予想外の事例がおきた。新しい第五の力の発生です」
ただあの部活、SSフィールドが張れることが入部の条件だったような。会長の言葉だと3年生じゃなかったっけ?SSフィールド習うの。あれ、でもそれじゃ大学受験は?進学校だよね一応。ん、大学部ってあった?エスカレータ式?うぅん、うぅん、わからない。
「インフレーションを起こし一瞬で宇宙に伝播したその力はとても素晴らしく、同時に悪魔ともいえる恐ろしい力だったのです」
そういえば、愛ちゃんから部活の誘いうけたんだっけ、中高部活は関係ないからって。
「人の意志でほかの4つの力に干渉できるという、第五の力」
確か同好会で、人数足りないからって……そのための伏線だったのかな。ボクを兄って呼んだの。……そうだよな、あんなかわいい子がボクを兄って呼ぶには何か下心があって、そうだよな。そうじゃないと理由がつかない。そうだよな、きっとその同好会には彼女が兄って呼ぶ人がいっぱい。なんか、悲しくなってきた。そうだよな。
「それが意味することは、今まで築いてきた4つの力、すべての根本となる力の法則性の崩壊」
はふぅ……
ため息もでるよ。
「すなわち」
「科学の法則の崩壊を意味しているのです」
「これを世に『大法壊』と呼びます。ここテストに出ますよ」
ノートノート。
「この大法壊後の世界はとても混乱し、文明も紀元前以前のものと同じになり―――」
放課後。
「桜、部活決めた?」
桜を捕まえて、聞いてみる。
「ん?ああ、第一魔研部に」
「え、SSフィールド張れるの?桜」
意外。
「んー、ま、な」
桜って優等生?
「お兄様っ」
「愛ちゃん?」
「部活に参りましょ」
チリ。
先ほどの思考の残照が頭を焦がす。
「お兄さんがいっぱいいるんでしょ、その人に頼めば?」
「?お兄様は2人しかいませんわ。お兄様と武人兄様。世界で二人だけ。いっぱいはいません」
「ユウちゃん、部活めぐりしししししよ」
ちょうどかぶるように史奈子が話しかけてきた。
「ナデシコ姉様、お兄様と一緒に第三魔研部に入りません?」
愛子が史奈子も誘う。
ナデシコ姉様、
姉様。
やっぱり誰でも兄妹になるんだ。誰でも……
「ユウちゃんは?」
「う、うん。行くだけ行ってみようかな」
一つ湖が最近できた。
対アポロ選でニアが放った光弾が作った湖だ。
2発目の光弾は、アポロが命をはって―――死んだわけではないそうだが、大けがをして半年、動けないかもしれないらしい―――地上ではなく空へ反らしたらしい。
「ニアの力ってすごいね」
そのできた湖のそばを歩きながら、優希が言った。
「そうだね」史奈子。
「お兄様もニアって呼ばれて不名誉この上ないですわね」
「そうだね」今度は優希。
その言葉を理解するのに、時間がかかる。
「!?」
「お前!!!」
ニアが表に出る。
「きゃぁ、ニア!ど、どこから?」
ナデシコは気付いていない。
ニアの変身をごまかす魔法は健在だ。
「お兄様?」
「黙れ!」
ニア、彼女はもしかしてボク以上の魔力持ちってやつじゃない?
「違う、たぶん逆だ」
逆?
「お兄様?」
「私の姿が変わったことに気付いていない。あぁ間違いない」
「こいつは――――――」
ニアっ、人が!
「ち、こいつの監視のためにも同じ部活に入るしかなさそうだな」
う、うん。とにかくニア引っこんで。
「わかった」
変身が解ける。
「ユウちゃん」
「ナデシコ、ちょっと愛ちゃんと二人で話し合いがしたいんだ」
「う、エッチな話?」
「ぜ、全然、真面目な話」
「真面目なエッチな話?」
「そんなんじゃないよ、なんでエッチ?」
「だって抱きついたり、お兄様って言ったり…そういうプレイ?」
「ち、ちが…」
なにか誤解を生んでいる。
「とにかくゴメン、ナデシコ」
「あ」
すこし、史奈子から距離をとって愛子と話す。
見える位置で、声が届かない位置。ちょうど良い誤解を生まない位置。
「ボクがニアってこと、誰かに話した?」
「?」
「このことは秘密にしてほしいんだ」
「お兄様がニアってことですか?言わなくても皆わかっていると思いますわ」
「わかってないの。わかっているの愛ちゃんだけ」
「?そうなんですの?」
愛子が不思議そうな顔をする。
ボクだって不思議だ。なんでニアの姿が見えない?
なんで?
「いいですわ、お兄様とわたくしだけの秘密ですわね」
「うん」
「わたくしこの秘密、お墓まで持っていきます」
「うんうん」
「だから―――」
「うん?」
「お墓まで見守っててください。お兄様」
白紙。
それって、
それって…
求婚?
「えっと……」
この子はいつでもボクを困らせる。
「前途多難だな」眼鏡ニア。
「うん」泣きが入るボク。
ホントどうなるんだろ。