第二十六話 会長・至高の存在
「さーてさてさて、今年もやってきました、レイディ?」
メルクリウスの司会がにぎやかに入る。
学校中のすべての生徒は、今日この日を待っていた。
「生徒会長占拠!だーーーーーーー!!!ゴーゴゴゴ―」
大きな歓声がわく。
皆、待ちに待っていた、この学園最大のイベントだ。
「さてよく聞け、エブリィ。ルール説明行くぞー」
事前に、ある程度のルールは聞いていた。
基本的に、男性は男神―――つまりユピテル―――の占拠に参加。
女性は女神―――こちらはユノ―――の占拠に参加する。
これは、絶対ではないので、別に女性がユピテル占拠に参加してもかまわない。
事実、歴代にも女性のユピテルや、男性のユノもいたらしい。
占拠のルールは簡単。
エリアの中心―――コアと呼んでいる―――を、日没まで守り切れれば(占拠すれば)、晴れて本選出場。
来年の一月半ばに行われる会長とのタイマン勝負に参加できる。
ちなみにエリアは二つ。
二人が生徒会長と戦える権利を得る、はずだったのだが、
「今回はなーーんと生徒会長も予選に参加しまーす!!!オケ?」
続いて、また信じられないことを。
「しかも去年はクラスにつき一人だった予選参加者は、今年は全員参加可能ーーー!!!エブエブエブリィ」
つまり、エリア占拠のためには全校生徒の半分、男性全員相手にしなければいけない。
いや最悪女性も含まれてとんでもないことに!?
「エリアは二つ、生徒会長とはいえ守り切れなければ本選出場は出来ませーーん。アンビリバボ」
なんかすごいことになってきた。
作戦ねらなきゃ。
と、
「それでは、予選開始ーーーレィディゴーーー」
早っ。
始めからエリアを占拠してたら全校生徒を相手にしなきゃいけない。
今は少し様子見で、
とまた、
「エリア占っ拠♡」
会長が一つのエリアを占拠した。
コアに立つ。
あの、直径一メートルの円の中に日没まで立っていられれば予選突破だが、一日中全校生徒の相手をするつもりか、あの会長!?
しかし、その優希の考えはまだ甘かった。
「皆かかってこーい、一歩でも私を動かせるかな?」
ぽち
あ、全校生徒の血管が切れた。
「やれーーー」
「ぶっ飛ばせーー」
軽く三十人、約一クラス分が会長に向かう。
「はいっ」
一閃。
一閃だった。
三十人が空を舞う。
「な」
「おおーーーーっと、会長強いーーー、三十人が一撃だーーー!!!」
これは、
「強いな」
「桜」
隣に桜が立っていた。
「あの情報は本当かもしれない」
ぼそりと桜が、つぶやいた。
「情報?」
「ああ、他のオリンポス十二神は、会長との戦いを避けるために、全員が会長のいるエリアではない方を占拠するって、事前情報でな」
「他の十二神全員が!?って事前に情報があったの?」
「ああ、十二神にはな」
十二神が会長との戦いを避ける、それは驚愕である。
つまり、十二神全員で戦っても、会長を倒せないと、この学園最強の十二神が、判断した。
もしくは、会長一人を相手するくらいなら、他の十神相手にした方がまし、と。
「俺はもう少し見てることにする、優希はどうする?」
「なんか」
心の底が、うずく。
「戦いたい」
「そうか」
駆けだした。
優希は駆けだした。
倒したい。
会長を倒したい。
「会長ーーーー!!!」
光子体化から、光弾。
もちろん弾かれる。
「優希君か、いいぞ来い」
何十人も相手にしながら、優希にも注意を払う。
光弾は優希以外の生徒も放っていた。
雨のように光弾が降り注ぐが、すべて手も使わずに弾いている。
「光の」
二学期掛けて、練習した新魔法だ。
とはいってもニアが天使戦で使っていた技だが。
「剣」
一閃。
しかし、会長は軽くかわす。
連続して、休む暇を与えず、優希は剣をふるう。
「ふむ、魔法自体は高レベルだが、いかんせん剣の扱いがなっていない」
「でも!!!」
優希の秘策中の秘策。
近接戦闘での瞬間移動。
会長の背後に優希が現れる。
しかも瞬間移動する前に遅延魔法―――遅れて発動する魔法のことだ―――時縛り。
前からは時縛り、後ろから優希本体による剣撃。
とっさに会長は横にステップで避けていた。
一瞬。
一瞬だったが、優希は確かにコアを、会長から奪っていた。
「よくやりますね」
優希も追撃を忘れない、が。
「だが、私を本気に、あなたはさせました」
見えなかった。
会長が懐に潜り込んだところまでは理解した。
何とか見えた。
まず足をすくわれた。
そこから、肩で腹に体当たり。
たたんでいた腕を上げ、そのまま顎を打ち、
とどめに足首で頭を抱えられ、回転、地面の叩きつけられた。
追い打ちに、倒れた優希の腹に、四発の鉄拳を食らう。
それが分かったのは全部食らって、胃の中の物を全て吐き出した後だった。
「私が地上最強だ」
「誰だ、会長が最弱だって言ったのは…」
優希は、なんとか会長の攻撃範囲内から離脱していた。
「これは他のエリアを奪うのが先かな」
結果として優希はもう一つのエリアを狙うことにする。
会長の強さは飛び抜けていた。
今まで戦った誰よりも強い。
二ヶ月後には本選がある。
たぶん会長は、あのエリアを守り切るだろう。
今のままでは絶対に本選で勝てない。
強くなる。
そう心に誓う優希だった。
