ONCE MAGIMAGI -14ページ目

過去の傷・真田芙由

生まれてきたことが不幸だった。

父親の顔は知らない。

多分、母親も知らない。

遊び人というわけではない母が、私をはらんだ理由は、暴力だった。


そんな理由なら生んでほしくなかった。


小さな頃から、それはあった。

物心つき始めた頃にある思い出は、みじめだった。

母は、愛人だった。

それでも愛してくれる、『弟の父親』に頼って、私は生きていた。

しかし、その思い出も長くはない。


双子の姉弟が、『弟の父親』に生まれた。

その力の強大さと、危険な状況から、母は逃げ出した。

私より一つ下の『弟の兄』は、なんの力もない、ただの魔法使いだった。

だから後継ぎは例外的に、愛人の子供である弟になる予定だった。

しかし、その双子は、その立場さえ奪った。


その後も、『弟の父親』とは絶え絶えながら交流は続いていたらしいが、私は知らない。


小学校に通い始めたころは、まだ理解していなかった。

自分の不幸に。

ただ自分が望まれた子ではないことだけは何となく感じていた。


だからか、

高学年になる頃からいじめが始まった。

魔法の力は抜きんでていたので、逆に懲らしめてやっていた。


孤独が付きまとうようになった。


孤独は孤独を呼んだ。

孤独が怖いから、一人になりたくないから、最初から一人でいればいいと、友達を作らずにいた。

悪循環だった。

終いには、寄ってくる人間も遠ざけていた。


中学になれば男も女も、わずかながらに色めき立つ。

そうして寄ってくる人間もいた。

自分が普通の同級生より、抜きんでていることも知っていた。

だから近寄っている男もいた。

利用しようという女もいた。

それも遠ざけた。

人が怖くなっていた。

そのためか、最悪に暴力が頻発した。


家族にもそれは及んだ。

母親に当たった。

弟にも当たった。

それでも二人は私から遠ざかろうとしなかった。


嫌だった。

自分が。

しかしそれは無意識で、何かに当たり散らすしかない自分がいた。


弱い弟に主に刃は向いた。


ある日私は、弟を殴った。

いつものことだった。

いつものことだったのに、苦しかった。

しかし、何が苦しいのか分からずに、だから、また弟を殴った。

何をそんなに弟が近づいて来たのかはもう覚えていない。

遊んでくれだったような、食事の準備ができたよ、だったか。

ただ弟は何度も近づいてきた。

何度も私は弟を殴った。

何度も、

何度も、

何度も。


弟は救急車に運ばれた。

私はそこで初めて怖くなった。

もし弟が死んでしまったら。

家族がいなくなってしまったら。

怖くて怖くて、救急車から弟を遠ざけようと、運んで行ってしまわぬようにと、手の届くところにいてほしいと、私は混乱していた。

私は、弟に近づいた。

弟の顔が見えた。

弟は笑っていた。

私は、さらに混乱した。

なんで、笑える?

死ぬかもしれないのに、殺そうとした人に向かって、

なんで、笑える?


「だって、お姉ちゃんだもん」


私は――――――。




その時から私は変わった。

弟に、つきっきりになった。

弟が可愛くて仕方がなかった。

馬鹿と言われようが、構わない。


この子のためなら命も捨てられる。


ただ、家族に対してそう思えるようになっていた。


別に、そんな自分が嫌いじゃなかった。

むしろ好きだった。



目覚めれば弟の前に私。

そんな日常が、当たり前になっていた。

だから今日も行こう。

弟の前に。


いつか、目覚めのキスを―――。


どーだ?