ONCE MAGIMAGI -11ページ目

第二十七話 軍神・質より量

「って、この人数は」

ある意味、不気味だった。

たくさんの同じ人間がいた。

生徒たちは、その同じ人間達に苦戦を強いられていた。

「我が名はマルス、軍神マルスだ」

どこからその声は届くのか、全員が話しているようで誰も話していない。

不気味にうごめく集団がいた。

ただその同じ人間の群れは統率のとれた動きをしていた。

一人の生徒に必ず二人以上でかかって倒す。

せこい技だが、確実性はあった。

「オリンポス十二神の名前は伊達じゃないっ、てか」

「十六夜」

隣には十六夜がいた。

見学を決め込んでいるらしい。

「ここのコアは、開始早々マルスが支配した。そして今に至る」

「マルスって強いの?」

「弱い」

十六夜は断言した。

「十二神の中でも個人の戦闘能力は一番弱い。非戦闘十二神はもちろん除くけどね」

「非戦闘?」

「口だけのメルクリウスや、回復専門のウェヌス、にぎやか担当のバッカスたちだよ」

「にぎやか担当って…」

汗。

「話は戻るが、弱い、が厄介だ」

「?」

「彼の得意技は分身の術。同じ個体の数を増やす魔法だ」

「数を増やす?」

「ああ、しかもその個体個体は精神でつながっている。完全なる統制のとれた軍隊なんだ」

「それって…」

「ああ、兵隊の完成形だ」

統制のとれた軍隊。

それが完全にあればどんな戦争にも負けることはないだろう。

弱っている部隊があれば要請がなくとも助けに入る。

その補填が続けば、弱っている部分が速やかになくなる。

弱みがない軍隊が完成するのだ。

それは無敵の軍隊を示す。

「弱点はないの?」

「ある、本体だ」

分身の術で増えても、オリジナルの個体は必ず存在する。

それをたたけば、もう増えることはない。

多分、分身も消えるだろう。

「どいつが」

「まあ、普通は一番安全な位置にいる奴が本体だろうな」

「コア!」

コアには確かに一人、戦っていないマルスがいた。

「まかせた」

「よし!」

もちろんコアに行くまでには、最大の兵力が充てられているだろうが、それをモノともしない必殺魔法が優希にはある。

「瞬間移動」

一閃。

瞬間移動から魔法剣で一閃。

コアにいたマルスはあっさりと倒れた。

「ぐは」

「弱っ。まあ、これで分身が―――消えない?」

「貴様、よくも本体を!!!」

他のマルスが軍をなして優希に襲いかかる。

「え、え、やっぱ本体なの?」

「コアに一番強い個体を置くのは常套手段だ」

分身の術で同じ個体が増えるといっても、やはりオリジナルが一番強くなるらしい。

「えー、本当?」

「死ねっ!!!」

軽く十人のマルスが優希を襲う。

浮かんだ策は瞬間移動で、とりあえず離脱―――しない。

「会長は三十人ぶっ飛ばした―――負けられない!」

死闘が始まった。

優希は魔法剣でマルスを切った。切った。切った。

一体一体はそんなに強くない。

ただ統制がとれていた。

一人が真正面から優希の意識を奪っている間に、背後から別のマルスが襲ってくる。

そのパターンが読めたと思ったころから、作戦が変わる。

まさに、最悪の軍隊だった。

「くそっ、キリがない」

一体一体はあまり強くないのに、そう考えていた時だった。

「真田」

「十六夜?観戦を決め込んでいたんじゃ?」

「君の勇姿に、そそのかされてね。今、皆に頼んでマルスたちを一か所に集めている。そこに一発決めてくれないか?」

「わかった」

十六夜の言葉に戦場全体の情勢を確かめる。

確かにマルスたちは一角に集められようとしていた。

「これは、君を生徒会長にしたいから、なんて己惚れないでくれ。僕たちは勝つ。君じゃない誰かが……僕かも知れないね。そのための共闘さ」

「ああ、皆倒して、ボクが生徒会長になる。そのために共闘さ」

笑った。

目的は同じ。

ただ戦うんだ。

己が最強と信じて。

皆が皆。

「今だ」

「行くぞ魔力放出!!!」

巨大な光線がマルスたちを襲う。

優希の力技。

単純なだけに威力が強い。

単純なだけに魔力消費量も大きいが。

「それを待っていた!!!」

「!?」

マルスたちが、いきなり魔法を展開した。

「魔力鏡反射!」

「なに!?」

会長が光弾を反らすときによく使う魔法だ。

しかし、あの魔法発動面では水平に魔力を反射する。

つまり、手元に戻ってくる。

優希を魔力の奔流が襲う。

渾身の一撃。

「ならば倍の魔力を放出するまでだ!」

「真田!」

「なああああにいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!!!!」

光が凶器になる。

膨大な熱量が、人の形をした魔力塊を襲う。

その魔力はマルスたちを軽く一閃。

周囲の固形物を融解させる莫大な威力だった。

「やはり君は、すごいな」

「ははっ」

「さて次は僕が相手をするよ、真田」

「ああ、負けない」

言葉だけだった。

さすがに直魔力の大放出により、優希の消耗は並ではなかった。

だが負けるわけにはいかない。

勝ち続けることが、至高の存在への道となる。

「いくぞ!」

掛け声が響いた。

そして十六夜は倒れた。

「え―――?」

後ろから、斬られた?

「拙者、オリンポスが十二神、ウルカヌスでござる」

確か最強の切れ味の剣を持つ、十二神が一角の侍。

「同じく、海神ネプトゥヌス、君、強そうだから二人でかかるね」

「―――くっ」

「いざ尋常に…」

「戦いだよっ!!!」


日暮はまだ遠い。

そして戦いも、まだ始まったばかりだった。


わらわらと