ONCE MAGIMAGI
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終章

世界から神々や悪魔は消えた。

ニアただ一人を残して。

ニアは最後に優希の行ったプロパティの変換について詳しく教えてくれた。


「今から千年、世界には神や悪魔が存在しなくなる」

「主属神のメンテもない。完全に独立した世界になる」

ニアの言葉。

もちろん、それには反論がつく。

「それじゃあ、世界はいずれ滅びてしまうんじゃ?」

「自分たちが納得しても、後の世界の子孫は、この判断をはたして受け入れてくれるか……」

ニアが続けた。

「ああ、だから千年後の世界でまた、力を持った人間が生まれる。プロパティを書き変えれる人間が」

「その人間が、世界をメンテナンスするかもしれないし、主属神の管理する世界に戻すかもしれない」

「いずれにせよ、未来、君らの子孫が決めることだ。優希はそういう選択肢を残した」

一つ、矛盾があることに気付いて質問を続ける。

「ニアは、神、もしくは悪魔なんだろ?なぜ居る」

ぶしつけな質問にもちゃんと答えた。

「千年後、今の言葉が残っていないかもしれない。私はメッセンジャーとして、この世界に例外的に残った」

「ま、千年後までは最低存在する。その後は時代時代で決めていくさ」

笑いながら、ニアは消えた。

千年後にまた。

そう残して。


優希は全てを失った。

偉血の最後のプロパティ変換は、そういうものだった。

既に、世界に神は存在しない。

プロパティの書き換えも、ニアはもう出来ないと告げ、優希はすべてを―――記憶も魔力も―――失って存在し続けた。

どれくらい時が経ったのだろう。

燃えた家は再建して、優希は普通の学校に通った。

記憶を失った存在として。

魔法を使えない存在として。

時折、優希にとって知らない存在が家に来訪した。

偉い人だ、そういうのだけは分かったが、優希にとってはどうでもいい存在だった。

姉や母は、つらそうな顔をしている時もあった。

一度姉が部屋で、優希の名前を繰り返し、神を呪っている言葉を聞いたことがある。

何も出来ない自分が嫌だった。

受け入れてもらえない苦しさもあった。

そんな優希に気付いたのか、姉は昔と同じように接してくれた。

多分。

昔は知らないが。


一人だけ良く分からない存在があった。

きれいな金髪で、背も高く、顔立ちも整った女性。

夏木 史奈子だ。

その人は有名な学園の生徒らしい。

その人は毎日自分に会いに来てくれた。

光子体化に成功した、とかSSフィールドも張れるようになったよ、とか言っていたが、正直、優希には意味不明な単語の羅列だった。


ある日、史奈子にデートに誘われた。

記憶は失っていても、感情は失っていない。

嬉しかった。


遊園地で遊んだ。

足の速い乗り物に乗って悲鳴を上げた。

くるくる回転するカップに乗って笑った。

よく分からない存在―――幽霊だ―――が居るという涼しい建物の中で、ここは和んだ。

わけ分からないと出てきて、また笑った。

最後にずっとずっと高いところまでグルグル回っている乗り物に乗った。

そこでやっと少し落ち着いた。

じっくり話をした。

あれは楽しかった。

また乗りたいね。

いつかきっと。

いつか。

いつか。


場の空気が変わった。

魔力のない優希にも感じ取れたそれは、SSフィールドだった。


ユウちゃんは変わってない。

変わったのは私だ。

史奈子には、それは今日一日で何度も感じたことだった。

笑って泣いて、また笑う。

ユウちゃんは記憶を失ったが、その本質はまるで何も変っていない。

優しくて、強くて、綺麗なユウちゃん。

変わったのは私だ。

私は、あの日から涙を失くした日なんてなかった。

ユウちゃんの前では、つとめて笑った。

だから歪んだ。

泣いている自分と笑っている自分。

どちらが本当か分からなかった。

ただ、この人と一緒にいたい。

歪みは、ますますその度合いを、ひどくしていった。

死のう。

一人ではなく、優希を連れて。

それがこのデートの目的だった。

魔法で、この観覧車の天辺から落ちる。

それだけできっと死ねるはず。

そして史奈子は、


実行した。


一撃は弱かった。

留め具を完全に破壊できなかった。

だが、二撃はいらない。

じきに落ちる。


ふと、

ふと、史奈子は優希を見た。

優希は、

恐怖で?

いや、違う、。

それは、多分その時の優希にも分からなかった。

「何で……」

それは静かに、

「なんで泣いているんだ、ボクは」

ゆっくりと、

「分からない。でも、この感情は」


「きっと―――」

嘘じゃない。


落ちた。


人だかりができていた。

観覧車の一つが落ちた。

人が乗っていたらしい。

死んだろうこれでは。


そんな、ささやきが聞こえていた。

優希にも史奈子にも。

聞こえていた。

耳に。

はっきりと。

健全に。


「ナデシコ?」

久しぶりに聞くその言葉。

彼は、そう呼んだ。

いつも自分を。

「いったい何が…」

空中に立っていた。

魔法で作った、特殊な足場だ。

史奈子の力ではなかった。

「さなだ ゆき」

それは優希の本名。

「?」

確かに彼は、

「真田 優希なの?」

「当たり前だろ」


―――帰ってきた。


長い長い時間を経て。

優希は、


史奈子は一人泣いていた。

「遅い、遅いよ」

優希はわけも分からずに答えた。

「うん、たとえ世界が敵でも必ず立ち上がる。言ったろ?」

泣きながらも必死で史奈子は、うなずいた。

「うん、うん」


「君さえ味方なら――――――」


優希は笑った。


最後の采配はやっぱ神様な?

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