ONCE MAGIMAGI -2ページ目

第三十六話 神々・すべての終りに

何で忘れていたのだろう。

あの日々は、あんなにも眩しくて、美しくて、なにより楽しい日々だったのに。

忘れていた。

この二ヶ月間。

あれが最後なんて悲しすぎるよ。

ユウちゃん。


地上の各地で、人類は、無数の悪魔と戦っていた。

それは、優希の住んでいる街でも、同じことだ。

希望は、まだあったはずだ。

しかし、


「天空船が落ちる!」

秋雨 十六夜は、あせっていた。

天空船は象徴だ。

悪魔に対抗する、人類の。

その存在は、われらの英雄ともいうべき、真田 優希の牙城として威厳を誇っていた。

あれが落ちるということは、優希は、人類の希望は…

「まだよっ!」

紅 コスモスは光子体化しながら十六夜に話しかける。

「まだ、生きてる……」

確かに優希のフィールドは健在している。

「希望を、ちょうだいよ!ねえ、真田 優希ーっ!」

その横を通り過ぎる影。

影は、沈む夕暮れの中、一直線に天空船を目指していた。

長い影だった。

「最後の希望が向かったぞ、真田」

悪魔の影で、暗く輝く世界の中、誰にでも分かろう金髪の少女は、必死に走っていた。

また一度、繰り返した。

何度目だろう。

その名を繰り返すのは。

ユウちゃん!


天空船は長い時間をかけ、ゆっくりと地上に降りて行った。

ちょうど落下地点は学園の湖だ。

着水の飛沫が激しく皆をぬらした。

「何度倒した?悪魔四天王」

「偉血以外はもう二ケタ入っているんじゃないか?」

「はは」

戦局は明らかに不利だった。

何度倒しても偉血が四天王を復活させる。

昼間はそれだけで過ぎて行ったのではないだろうか。

辺りはもう夕日も沈み、真っ暗な夜になっていた。

一番消費がひどいのは、明らかにウェヌスだった。

回復魔法を連続して使っている。

ただでさえ神経を使う回復魔法だ。

疲れもする。

「勝機はないのか」

そのとき一人の戦士が立ち上がる。

優希だ。

「世界はまだ終わりじゃないんだ!」

「ああ、終わりはない」

答えたのは偉血だった。

「この世界はゲームだ。永遠に続くゲーム。終わりは来ない」

「そうじゃない」

優希がつぶやく。

「ゲームは終わる」

続けた。

「ゲームは終わって、新しい世界がやってくる。世界はゲームじゃなく終わらないんだ」

そこからは早口だった。

「ニア、イチかバチかプロパティを変換してみる。出来そうなんだ。何か力がみなぎってくる」

それに応えるは偉血。

「最期を前に、燃え上がるか。炎の如く!」

「世界を、ゲームを終わらせる!」

「皆!僕に時間を与えてくれ!!!」

「悪魔どもは任せろ」

番長。

初めての強敵。

一人だけじゃ、きっと今も勝てやしない。

「ザコはオレたちがぶっ飛ばす!」

桜。

親友。

そして好敵手。

男の中じゃ優希に一番近い、存在。

「ああ、今の僕らに敵はいない」

魔人。

地上最強の魔法使い。

でも大事な弟だ。

「真のわれらに敵などいない。たとえそれが神だとしても!」

会長。

地上では無敵の戦闘力を持つ。

頼れる兄だ。

「私はここにいるよ」

そして最も愛する……

―――え?

「ナデシコ!」

「ユウちゃん。私も戦う。妻だもん。どんな苦難も一緒一緒!」

「――――――」

いろいろな迷いはあった。

一番生きていてほしい人に、一番危険な場所にはいてほしくない。

当り前の話だ。

だが。

「ありがとう皆」

そして

「史奈子」

ボクは

「世界を書き換える!」


プロパティの変換が始まった―――


「させぬ!」

死は一瞬で吹っ飛んだ。

「きゃきゃ」

惨劇はない。

「私たちがぁぁ!」

痛みすら与えず。

「我等が楽園を―――」

偉大なる血は流れ―――


「親父、もう終わりにしよう…」

白熱。




世界は書き換えられた。


「独立するんだ」


「ボクらも、世界も」


「終わって、終わってたまるかぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

偉血が最期の力を振りしぼる。

「偉血よ」

「かつての我等が仲間よ」

「もういい」

「ゲームは終わったのだよ」

主属神。

神々が降臨する。

「させぬ!させぬ!!させぬ!!!させぬっ!!!!」

「真田優希いいいぃぃぃぃぃ!!!」


「もう神は、悪魔も……いらないんだよ、この世界には……」


「しまった!!!」

「ニアさん!?」

「このプロパティの書き換えは、優希を殺すものではなく―――」


悪魔は、

神は、

すべて消え去った。

残されたのは神の介在しない世界。


子供はいつか、親元を離れる。

それが今―――。


「ユウちゃん、ユウちゃん!」

優希はゆっくり目を覚ました。

ひどく気分がいい。

気分爽快とはこのことか、一瞬前まではそう思っていた。

しかし、あることに気付いた。

「あ―――」

ひどくモヤモヤする。

不安が、恐怖が、胸の中でグルグルと、えぐりながら回る。

その言葉がすべてを語る。

「ボクは誰?」


「君は」


ひどく残酷な言葉だった。

「初めて見るよ、こんな綺麗な人―――」


独立するんだ