【まともな意見】
今日は、朝日新聞を持ち上げておこう。憲法学者志田陽子の(インタビュー)記事である。
志田は、自民と維新の「国旗損壊罪」立法に関して、必要なしとしている。そのような法律を必要とする「立法事実」がないし、「思想・良心の自由を保障した憲法19条に抵触する可能性がある」とするからである。真っ当である。
【出羽の守の毀誉褒貶】
志田は、外国の状況にも言及している。米国では、1998年に国旗損壊を罪するテキサス州法を違憲とする最高裁判決がある。90年には星条旗保護を強める連邦法改正にも違憲判決が出ている。自分の頭で考えられない「出羽の守」なら、これだけで引っ込むところである。
だが、自衛官尉官を戦前呼称に変更しろと主張するような人達のことである。そのくらいでは怯まない。フランスやドイツにはあるではないか。中国にさえあるのだから必要だ、と主張するに違いない。
【損壊罪の偏り】
志田は、英、加にはないとも指摘している。聞き手である塩倉裕編集委員は迂闊にも聞き流しているが、実はこの辺がキモである。「国旗損壊罪」が仏、独、中にはあって、どうして英、加、米にはないのか。「それぞれの国がどのような実害を踏まえて、いつ導入し、表現の自由との衝突をどう調整しているのか、……調べた方がいい」。
【アメリカのモノマネになっていない追随】
推進者は、思い込みで情緒的に推進しているだけなので、そのような検討などしない。それぞれの国における歴史的背景、国旗の持つ意味などは考えない。「日本は日の丸だー」でおしまいある。
独仏には国家統合の象徴となる国王がいない。殺すか追放するかしたからである。しかし国民統合のシンボルがないと不便である。そこで、代わりの象徴として国旗や国家を重視することにした。
国王がおわしますイギリスにはそのような「装置」は不要である。英連邦の一員であるカナダはその流れにあり、英植民地だったアメリカもその尻尾をつけている。だが、独立してしまったために独仏に近似することになった。その葛藤の渦中にあるが故に争点に浮上することが多くなるのだ。ただアメリカの物まねをしたい連中が、アメリカの実態を無視して損壊罪などといい出す。
【国家、国旗不要な日本】
しかし日本には天皇がいる。憲法第1条で「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である」と規定されている。日本国民の総意として維持している。日本国民には本来、国旗も国家も必要ない。陛下を思い浮かべるだけで日本人だと実感できる。妃殿下や愛子ちゃんを見るだけで誇りに思える。
そのような日本人を、お前は国歌を唄わないから非国民であるとか、国旗を粗末に扱うからと処罰したいのが推進派の政治屋どもである。それってもはや、反天皇制主義者だといっていい。どうりで、皇室を無視し、天皇制廃絶を招きかねない男系にこだわったりする訳である。
【中国に並びたいのか】
どこかのオバカな落語家が、「国旗損壊罪」が成立しても普通の人は関係ない、というようなことをいっていたが、法律とはそういうものである。殺人でも詐欺でも、一般人の日常には無縁である。しかし、ある時ふいに立ち現れ生活を乱し、窮屈にする。権力が個人を統制する道具になる。
日本を、どこかの国のような、旗を振り回し歌を歌って狂乱する国となってほしくはない。天皇がいれば充分なのである。