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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2009年 08月号 [雑誌]
INFASパブリケーションズ
発売日:2009-07-06

残念ながら来月号で休刊が決まっているスタジオボイス。8月号の特集は「本と旅する 旅へと誘う紀行文」ということで、あいかわらず挑発的なラインナップで本が紹介されている。もちろん買った。


b * p (ビーピー) 8 2009年 09月号 [雑誌]
小学館
発売日:2009-07-17

夏フェスの季節に気ままに発売される雑誌「b*p」。今回のVol8号では村上春樹特集でタイトルは「レッツ、村上春樹。(やれやれ)」。なんと、村上春樹作品それぞれの「やれやれ度」が分かるなどハルキストは要チェック。



Pen (ペン) 2009年 8/1号 [雑誌]


阪急コミュニケーションズ
発売日:2009-07-15



Pen8月1日号の特集は「あの人は何を読んでいるのか? プロが選ぶ究極の一冊」。横尾忠則、森山大道、桜庭一樹、仲條正義、隈 研吾、長谷川祐子、鳥居みゆき、祖父江 慎、嶋 浩一郎、小島 聖、田島貴男、村越正海、安西水丸、青山 南、黒田龍之助、岩田健太郎。我が書店には配本一冊ですぐ売れてしまったので、この特集があることには休日に立ち寄った他店で気付くという哀しい事態に。やれやれ。
おひさまがいっぱい (詩の絵本)
詩 与田準一
画 堀内誠一
童心社
発売日:1975-10





うちの2歳児が「はらぺこあおむし」と匹敵するぐらいお気に入りの絵本。ストーリーは夜中にネズミとネコと犬が遊んでいて、昼間は居眠りをしているというもの。「おひさまー」といいながら頻繁に持ってきます。

表紙と最後のほうのページに母親と男の子と女の子が描かれたページがあって、母親を指差して「おかあちゃん?」、男の子を指差して「おとうちゃん?」、女の子を指差して「○○○?(自分の名前」と何度も何度も聞いてくる。他の絵本でもそうだけど、登場人物を家族に対応させるのが好きらしい。

読んでいるあいだは静かに聞いていて、夜に遊んでいたために昼寝していた犬が、寝ぼけて目を覚まして「ちゅう」という場面で、我が子は「あ、おきたー」といって毎回テンションが上がる。夜の月明かりと、昼の日差しを描く筆づかいも鮮やか。
理想と現実の狭間を巡るノンフィクション3冊


人でなしの経済理論-トレードオフの経済学
ハロルド・ウィンター著
山形浩生訳
バジリコ
発売日:2009-04-03

人の命に値段などつけられない。この言葉は誰もが当然のことと思うけれど、裁判では値段がつけられるという現実。法治国家&資本主義経済を生きる現代。問答無用に否定されがちな「人命」「臓器売買」「タバコ」「著作権」などについて、全てを「金」に換算してトレードオフの観点から「費用」と「便益」について考えてみるという挑戦的な内容だ。

これらの難問についてトレードオフの結論にいたるには膨大なデータが必要だ。そもそも客観的で完全なデータというものが存在するわけもなく、理論的な結論がでることは不可能。なので、この本ではどういう観点から問題を捉えることができるかという提示に留まっている。

もちろん著者は全てを金に換算すべきと主張しているわけではない。感情に流されがちな議論に「あえて」金の話を持ち込み、不合理な結論を避けること。感情的な判断に流されてしまった今回の新型インフルエンザ騒動などを考えても、こういった視点は必要不可欠だ。



切実な悩みに満ちた日本列島を渡り歩き、当事者たちの話を聞き、時には現場で体験をする爆笑ルポルタージュ。

トラウマセラピーで、著者は自分のトラウマがみつからなくて言葉に詰まるが「トラウマがないってことが、トラウマなのよ」と励まされる。社会を革命するのではなく個人の連帯の場となって、カラオケ道場や私生活の悩み相談所と化してしまった共産党支部。若いのだから世話役になってくれと頼まれ、とても忙しい毎日となった田舎暮らしのスローライフ。自慢話のようになると嫌味になって誰も読んでくれないから、事実よりも「不幸」に書いてしまう自分史。

常識は踏みにじられ、日常は疲弊して、希望の見えない日本。その矛盾に満ちた社会に翻弄される人たち。そんな切実な悩みに満ちた内容なのに、読んでいると笑いがとまらない。眉をひそめ日本を憂うよりも、腹を抱えて日本を笑い飛ばすほうが健全なのかも知れない。愛すべき日本人の姿がここにある。


追跡!私の「ごみ」―捨てられたモノはどこへ行くのか?
エリザベス・ロイト
日本放送出版協会
発売日:2009-05

ニューヨークにて自分の捨てたごみがどうなるのか追跡をする女性ジャーナリスト。ごみ回収トラック、ごみ積み替え基地、埋立地。生ごみ、紙ごみ、金属ごみ、有害廃棄物、プラスチック、汚水、汚物。家庭からでるあらゆるゴミを追跡調査する。

そこで出会う人々は多様だ。現場の労働者、会社の経営者、環境活動家。現場は自嘲的で開き直った人が多く、経営者は排他的で自分の仕事を過大に正当化する。活動家はリサイクルを推進する人からゴミを生む消費社会自体を否定する人まで様々だ。

アメリカのゴミ問題が抱える現状の複雑さを知ることができる。幾多の困難と戦ってゴミを追跡した著者が、この長い旅を振り返って言った言葉が印象的だ。「おそらく、この一年に私が学んだ最も大切なことは、私のごみを持って行ってくれる人びとの名前を覚えたことだった」。なんだか青い鳥みたいだ。
うちの2歳児(3月生まれ)がお気に入り絵本を順次紹介するコーナーを新設。

我が家には、嫁が嫁入り道具として持ってきた絵本が100冊近くある。そのなかで、うちの2歳児が気に入って読んでと言ってくる絵本が現在4、5冊ぐらい。そのなかでもダントツのお気に入りはやはりこれ。

はらぺこあおむし
エリック=カール作
もりひさし訳
偕成社
発売日:1989-02


うちの2歳児は「ももむし~」と呼ぶ。卵から生まれたあおむしが色々なものを食べ成長し、やがて蝶になるというお話。「いちご」やら「チーズ」「すいか」など自分が好きな食べ物がでてくるのが嬉しい模様。「ピクルス」は「きゅうり」ということになっている。蝶になった見開きのページをパタパタさせて、飛んでいるように見せるとテンションがあがる。一度読み出すと「もういっかい?」と延々と終わらない・・・・・・。

あまりの人気に様々なグッズが発売されていて、最近は飛び出すバージョンもでてきた。ももむし恐るべし。


個人的に5月は「ホラー・幻想小説」強化月間でした。

ミサキラヂオ (想像力の文学)

太宰治賞デビュー作家。「想像力の文学」シリーズ第一回配本。開局した田舎町のローカルラジオ局に個性溢れる人々が集ることにより、それぞれが刺激を与えあい、それぞれの人生の意味を問い直していく。2050年という近未来設定でありながら、発展から取り残されている土地柄のため、現在と同じぐらいの時代感をかもしだす。

登場人物がとても多いが、きちんとキャラを整理して描き分けられているので読みやすい。その人生のそれぞれが肯定されていく。様々な事柄を貫く世界の真実なんてものはなく、多様多彩な人たちが積み重なっていくことが、世界の姿なのだろう。閉じられた世界感、偏った知識だからこそ見える、現実世界の輝き。様々な人生を歩む人たちを描いた、エンターテイメントの群像劇の快作。たぶん、次の本屋大賞の一次投票で入れる、

■『ひとさらい』 笹井宏之/ブックパーク

今年の1月に26歳という若さで亡くなられた。その訃報のニュースで、初めて笹井宏之さんという方を知り、そこで紹介されていた短歌に衝撃を受けて、あわてて購入。

「それは世界中のデッキチェアがたたまれてしまうほどのあかるさでした」

ご冥福をお祈りします。


全世界のデボラ (想像力の文学)
平山瑞穂
早川書房
発売日:2009-05


「想像力の文学」シリーズは僕の好きそうな本が多い。本書は幻想・ホラーという設定で、文学系からエンターテイメントまで多彩な短編が収録されている。

すこしぼんやりとした主人公たち。明確な意思を持って生きているのではなく、漠然と違和感を抱えながら、流されるように人生を歩んでいるように見える。半分眠っているような彼らが、突然目を開かされて、幻想の世界・悪夢の世界へと突き落とされる。もしくは、その違和感も抱きながらゆがんだ生きつづける。

この不安と不穏に満ちた物語の数々は、読むものの現実をもゆさぶってくる。日常の風景、何気ない会話、遠い記憶。あらゆる事柄にこの世界の真の姿が暗示されている。この世界が悪夢だと、僕が気付いていないだけかも知れない。


ドンナ・マサヨの悪魔
村田喜代子
文藝春秋
発売日:2009-05

結婚生活30年目で口喧嘩ばかりしている夫婦。妻は夫への愛は男女のものではなく、もはや「人類愛」だと達観しながら生活している。そこへ、イタリアに留学していた娘ができちゃった婚で帰国。反対する夫をなだめすかし、気ままな娘の世話を焼き、紳士的でやさしいイタリア人の娘婿と台所に立つ。そんな中、「ばあさん」と突然声がした。横柄な口調で話し出したのは、なんと娘のお腹にいる赤ん坊。

ちょっと不思議な設定も混じってくるが、ユーモア溢れる家族・妊娠小説として完成度は高い。小気味よく何でも切り捨てながらも愛嬌あふれる主人公。堅物の俗物だがどこか憎めない子供みたいな夫。今どきの出産・結婚のドタバタを軽快に描きつつ、その達者な口調で悪魔的な喋り方をする赤ん坊も見事にやり込めてしまう。母親力&おばちゃん力&おばあちゃん力をあわせ持つ主人公。今まで読んだ小説にでてくるおばあちゃんの中では一番好きかも知れない。深く読んでも、浅く読んでも楽しめる物語。


木でできた海 (創元推理文庫)
ジョナサン・キャロル
東京創元社
発売日:2009-04-20

埋葬したはずなのに再び現れる犬の死体。突然、消えてしまった夫婦。女子高生の変死。謎の事件が頻発するなか、いつも現場には美しい羽がひとつある。少しづつ壊れていく現実世界。次々と書き換えられていく世界のルールに必死に食らいつく主人公は、真相へとたどり着けるのか。

久しぶりにキャロルを読んだらダークファンタジーではなくディック的な不条理世界の物語になっていた。過去と現在と未来の自分のギャップ。現実が崩れ行くことによって、自分にとって大切なものにあらためて気付かされる。と同時に、過去と未来の自分を見ることで、現実の自分の価値観がゆらいでいく。一貫しない自分の形、一貫しない世界の形。その全てがかけがえのないものと気付かされながらも、それらが崩れ落ちることを止めることができない現実。

絶望的な物語にもなり得るのに、この物語は救われている。それは、僕たちが今この瞬間を生きているという、揺らぎ無い事実が世界を支えているからだろう。