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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

以前に読んでお気に入りだった『ギンイロノウタ』が野間文芸新人賞を受賞した模様。おめでとうございます! 野間文芸賞を受賞したということで、次は芥川賞&三島賞が射程内に。

ギンイロノウタ
ギンイロノウタ
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村田 沙耶香
新潮社
売り上げランキング: 141238

以下、以前に書いた書評を転載。

2つの物語が収録されているが、どちらも現実世界に馴染めず、独特の内面世界に生きる少女を描いている。少女が母親を理想もしくは反面教師として大人の女性へと成長するのだとすれば、この少女は母親との関係が破綻していることによって、少女としての自分のあるべき姿が見つからず、その欠落を埋めるために異物を次々と取り入れて、不安定な精神状態のまま独自の価値観を築き上げながら年齢を重ねていく。現代的な無機質さと、少女趣味的な耽美さが入り混じった世界は見事で、これは次の三島賞を狙えるレベルがあると思う。でも、読んでいると、ゆがんだ鏡を見ているような、とても落ち着かない気分になるので、心の調子が悪いときは避けたほうがいいかも知れない。
龍神の雨
龍神の雨
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道尾 秀介
新潮社
売り上げランキング: 44340

雨が降ることで、予定が変わることはよくある。そうした行動の変化によって不幸の連鎖が生み出されていくミステリー小説。偶然。勘違い。ちょっとしたすれ違いが、取り返しのつかない事件へと発展していく。義父と暮らす兄妹、義母と暮らす兄弟という二組を物語の中心として、降りしきる雨の中を背景に、物語は進む。雨が直接的に人間の行動に影響を与え、間接的に人間の目をくらませる。だが、雨が全てを支配しているのではない。その雨によって浮かび上がってきた、人間の心の奥にある澱が彼らを突き動かしていく。

昨年読んだ『カラスの親指』もそうだが、道尾秀介は「家族」というテーマを様々な角度から描いている。『カラスの親指』では血の繋がった父娘が、疑似家族として暮らす物語だったが、今回は血の繋がっていない親子が家族として暮らしていることが彼らの心をかき乱している。血の繋がった兄弟が持つ絆と対立するように、義父・義母との不仲が描かれる。複雑な家族感情、思春期の若者が抱く感情の揺れが、そのままミステリー小説の仕掛けに繋がっていく巧みさなど、やっぱりポスト東野圭吾は彼しかいないなと改めて思う。

個人的には次回の本屋大賞の有力候補。次こそは道尾秀介を受賞させたい!

■関連図書

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb
道尾 秀介
講談社
売り上げランキング: 73233

2009年10月発売の気になる文庫本を「砂場書店」にて更新。今回はめっちゃ少ないけどレベルは高い。

僕の好きな本が2冊文庫化! 同時に読むと夢と現実の落差が楽しめるかも。どちらも読んでから数年たつけれど、とても忘れがたい本。

最低で最高の本屋 (集英社文庫)
松浦 弥太郎
集英社
売り上げランキング: 52375


世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)
穂村 弘
小学館
売り上げランキング: 7592

2009年10月発売の気になる単行本1位はこれ

歌の翼に(未来の文学)
歌の翼に(未来の文学)
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トマス・M・ディッシュ
国書刊行会
売り上げランキング: 75363


サンリオ文庫の改訳復刊。トマス・M・ディッシュの最高傑作らしい。高校生の頃に『M・D』を読んで衝撃を受けた。ちょっとトラウマになっている。

M・D〈上〉 (文春文庫)
M・D〈上〉 (文春文庫)
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トマス・M. ディッシュ
文藝春秋
売り上げランキング: 721803


M・D〈下〉 (文春文庫)
M・D〈下〉 (文春文庫)
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トマス・M. ディッシュ
文藝春秋
売り上げランキング: 753950


その他の個人的に気になる単行本は、こちら「砂場書店」で更新
地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷 功
東洋経済新報社
売り上げランキング: 949

ビジネス書の定番を読んでみよう第二弾。今回は問題解決思考法について書かれたロングセラー。個人の能力の切り分け方や、問題解決に対する「結論から、全体から、単純に」という視点の使い方など、素直に感心する。

・まず、仕事上での個人の能力を3つに分ける。
「知識・記憶力」(経験などもここ)
「対人感性勢力」(コミュニケーション力)
「地頭力」(問題解決力)

・そして、もっとも重要なのが「地頭力」として、まず土台が
「知的好奇心」その上に「論理的思考」「直観力」

・これらがベースとして、問題を解決するための3つの思考法
「仮説思考力」(結論から考える)
「フレームワーク思考力」(全体から考える)
「抽象化思考力」(単純に考える)

この3つの思考法を鍛えるために「フェルミ推定」というツールを使う。例えば「日本全国に電柱は何本あるか、3分以内に答えよ」など正解がだせるわけがない。ここで、持ち前に知識を使って上記の3つの思考法を駆使して、限られた時間の中でどこまで正解に近づくことができるか、それが「地頭力」ということになる。

以前、ビジネス書で論理的思考の本を読んだことがあり、重なる部分もあったが、さすがロングセラーだけあって全体の構成に隙がない。ただ思考法を羅列するだけでなく、その繋がりや補完的な部分が説明してあり、それらがフェルミ推定でいかに活用されているかなど、実践的でとても説得力がある内容だった。

書店員的には、これらのビジネス能力の分類が興味深かった。棚の分類に使えそう。