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砂場

本の感想と日記。些細なことを忘れないように記す。

奈良きたまちの大門市場にて開催される「大門玉手箱」に参加します!
前回は嫁だけで僕は行けなかったけど、なかなか好評だった模様。

公式ホームページ「大門玉手箱」

一箱古本市の仕掛け人、南陀楼さんの本に「大門玉手箱」が載っているとか。僕も読まねば。

一箱古本市の歩きかた (光文社新書)
南陀楼綾繁
光文社
売り上げランキング: 130317

2009年11月発売の気になる文庫本を「砂場書店」にて更新。

気になる1冊。

奇想と微笑―太宰治傑作選 (光文社文庫)
太宰 治
光文社
売り上げランキング: 3919


太宰治ファンだった兄に影響を受けて、中学生の頃にけっこう読んだが今となってはほとんど覚えていない。久しぶりに読み直すにはちょうどいいなと思う。太宰は暗い話ばかりではなく、けっこうゆるくて諧謔的な短編も多く、そのあたりは森見も影響を受けているのだろう。ネガティブさを滑稽さに転化していくとこなど、太宰っぽい。
掏摸
掏摸
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中村 文則
河出書房新社
売り上げランキング: 1690

スリという犯罪の世界でしか生きられなかった男。だが良心のある彼は金持ちからしかスリを行わない。その天才的なスリの才能と、悪に染まりきらない浮いた存在である彼に目をつけた闇社会の男・木崎。木崎は彼に無謀な仕事を依頼する。そして、それを断れば彼が親しくしている子供を殺すと。

ベタな展開の犯罪小説も、芥川賞作家が書くと一味違う。「悪」をテーマに小説を書いてきた著者と犯罪小説の相性はかなりいいのではないだろうか。犯罪が行われる時の緊張感や、その天才的なスリの技術や手法など、ミステリー作家も顔負けのハイレベルな内容だ。これは著者の新たな代表作となるだろう。文学路線も好きだが、この路線も継続して書いて欲しい。読みやすさと内容の密度のバランスがとてもいいと思う。
歌の翼に(未来の文学)
歌の翼に(未来の文学)
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トマス・M・ディッシュ
国書刊行会
売り上げランキング: 126205

歌うことで肉体から精神を解き放つ「飛翔」に憧れた少年の波乱に満ちた半生。「アンダーゴッド」という原理主義的な宗教が勢力を伸ばし、似非黒人(フオウニー)という白人が肌を黒くすることが流行するアメリカ。近未来SF設定でありながらも、ひと昔前のアメリカと重なるような時代背景という、未来と過去が同時に詰め込まれたこの物語。1979年に書かれたものだが、まったく色褪せていない。むしろ輝きを増しているのではないだろうか。

SF小説としてだけではなく、夢を追い続ける「少年」の青春小説であり、その苦難の生涯を辿る教養小説として、また歌うことの素晴らしさを描いた音楽小説として読むことができる。さまざまなジャンルを内包しているだけに、重厚な内容になっている。幸福と不幸、支配と服従、成功とか挫折、様々な状況が目まぐるしく移り変わる。幸福と不幸が同時に現われ、支配と服従が同居し、成功と挫折がイコールで結ばれる。

そんな物語の中で、何度も何度も繰り返し描かれるのが「歌うこと」と「飛ぶこと」。「飛翔」を生涯の目標とした少年は、飛ぶために何度も歌う。だが、彼には才能が無く飛翔速度に達することができない。歌うことの喜びと、飛べないことの悲しさが入り混じり、それがやがて彼の人生そのものになっていく。それは「夢」と呼ぶこともできる。「愛すること」と言ってもいいかも知れない。彼の人生が「勝った」のか「負けた」のか、そんな区別は意味を無くしていき、ただもう少しその歌を聴いていたかったなと、読み終えた僕は思う。
2009年11月発売の気になる単行本&雑誌をまとめた。
砂場書店

一番気になったのがこの本。講談社とは思えない装丁。

背中の記憶
背中の記憶
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長島 有里枝
講談社
売り上げランキング: 21830


以下、出版社ホームページより引用

内容紹介幼き眼に焼き付けた、哀しくも愛おしい家族の肖像。
記憶の奥にしまわれた原風景が鮮やかに甦り、置き忘れてきたいくつもの感情が揺り起こされる、珠玉の物語、全13篇。

これは過去の思い出なんかではなく、かさぶたの下の、新しい肌だ。――加瀬亮(俳優)
年代の違う写真家の、目と皮膚で切り取ったような、ごく個人的な家族の記憶なのに、なぜだろう、このぜんぶ、私は知っている。知りすぎていて、泣けた。もう帰らない日々と、決して失われないものをまざまざと見せつけられて、泣いたのである。――角田光代(作家)

「中学3年生の2月、大好きだった祖母をわたしは亡くした。それは突然の、そしてわたしにとって初めての喪失だった。……祖母がどうやってわたしを叱り、やさしく見つめたか、そんなことも思い出せなくなってしまった時、わたしの中で残っていたのは、居間でつまらないテレビを見て、タバコを吸っているあの背中だった。……いまでも、誰かの背中にシャッターを切ってしまうことがある。祖母の後ろ姿を取り戻せるのではないかという期待とともに。」――<本文より>