オレクサンダー・ウシクが世界ヘビー級王座を完全統一、即ちボクシング界の頂点に立った。
レノックス・ルイス以来25年ぶりの快挙。
四団体統一王者はボクサーではなく、プロモーターの資金力、交渉力、政治力の賜物。
今、バンタム級でトーナメントを組めば、必ず日本人が四団体統一王者になる。そんな現状を私は少し冷めた目で見ている。
だがヘビー級は違う。四団体統一王者と言う肩書だけでなく、人類最強と言う称号も得られる。そこにロマンを感じる。ボクシングに限らず、格闘技を目指す者は「強くなりたい」「最強になる」と言う夢を持って始めるはず。
ところが現実は公平と言う詭弁を掲げた階級制で、自らの戦力を削ってでも小さい相手、即ち弱い相手と戦おうとする。
そんな減量を嘲笑うかの様により強くあろうと増量し、ヘビー級に挑むボクサーもいる。
古くはボブ・フィッシモンズ、ジョルジョ・シャルバンティエ、アーチ・ムーア、ボブ・フォスター、マイケル・スピンクス………そしてイベンダー・ホリフィールド。
彼等はボクシングの代名詞、減量を嘲笑うかの様に最強を求めた。
相手が10キロ重かろうが20キロ重かろうが関係ない。
世界ヘビー級王者が1人である事が当たり前の時代は46年前に終わりを告げた。厳密にはニューヨーク州王者の存分、ソニー・リストンとの再戦以降のモハメド・アリとWBA王者が並列した時代がある。別の話題になるので横に置く。
モハメド・アリVSレオン・スピンクス再戦でWBAとWBCは分裂した。以降、完全無欠の世界ヘビー級王者は6名誕生。
④リディック・ボウ
⑤レノックス・ルイス
そして
⑥オレクサンダー・ウシク
マイク・タイソンからレノックス・ルイスまではアメリカのヘビー級ブームが生んだ統一王者に思う。旧共産圏が本格的に侵攻する前のアメリカヘビー級は強かった。
だが、今回のオレクサンダー・ウシクはイギリスのボクシングブームが生んだ快挙。
ウシクはイギリスヘビー級のトップ3、アンソニー・ジョシュア、ダニエル・デュボア、タイソン・フューリーを次々と降した。
私がボクシングファンになった1980年代、世界ヘビー級タイトルはイギリスの悲願と言われた。今は随分と状況は変わった。
最強を追い求めて戦い続ける。ヘビー級には人類最強を求めるロマンがある。これこそ減量も階級も関係のない、格闘技の原点だ。