クリスマスツリーの飾りつけ 一人ですませたよ


電気を入れると キレイに光る


部屋の明かりを消して ぼんやり見ている


一人きりのこの部屋の広さにも慣れた


一人きりのこの部屋の冷たさにも慣れた


一緒にいるのが あなたでないなら


一人がいいと思うようになった



「いつかまた・・」


そう言い残してあなたはここを出て行った


チャンスを掴めと私が言ったから


戻ってこなくていいから 幸せになって・・


無理して笑って見せてたことも 知っていたよ


だから 私から解放してあげたかったの


「そんなことないよ・・」


あなたはそう言って笑って見せたけど



大事なモノを手放すことは間違っているのかもしれない


でも 私はこんな風にしか あなたを愛せない


多分私は・・私を一番愛している




Precious Love‐missing you- 書きあがりました。


長い物語にお付き合いしていただきありがとうございました。




昨年、母を亡くし未だにグズグズ言いながら暮らしています。


いつかやって来る別れですが、今でなくていいのに・・。


私の中でちゃんと整理したつもりなのですが、そう簡単ではないですね。


「そんなんじゃ、お母さんが悲しむよ。」って人は慰めの言葉をかけてくれるけど、死んでしまったんだから、悲しまない!そう思う可愛らしくない自分が居ます。


結局、そう思うことで頑張る元気を出す・・生きてるモノの都合のイイ解釈だと思います。


(あ~やっぱりひねくれてる・・)


私が自分の気持ちに『ケリ』を付けない限りどうにもならないんじゃないか・・と思います。



親でも恋人でも友人でも旦那でも・・大切に思っている人との別れって辛くて悲しくて言葉では言えないモノがあります。


誰かと出会うことで気持ちを切り替えることが出来たら、それも○なんですよね。


誰かの出現でどうにかなうような自分が嫌いだったり・・そんなところも私自身は持っています。


真っすぐ生きることのできる人にあこがれているのかもしれません。


主人公の麻衣は逝ってしまったけど、尚・涼介・章吾の生き方を考えるきっかけになったはずです。


どうしても譲れないモノ


変わらずに持ち続けたいと思うモノ


大事なモノの位置づけは人それぞれ違うと思いますが、それもやっぱり自分で選ばないといけないと思います。


生きている人は、やっぱり生きて行かなければいけないと思います。


時間はかかっても重い最初の一歩が踏み出せたら、見える世界が違ってくるかもしれません。


私も、頑張らなければ・・。





麻衣の近くにいた人は、悲しみから少しずつ立ち直り、進むべき道を歩き始めていた。


大切なモノを抱いて生きることの本当の意味を考えながら、それぞれの思いを胸に秘めて。




家の庭に植えてある桜の木に愛らしい花が咲き始めた。


涼介が生まれた年に祖父母が贈ってくれたものだ。


二人の子供が幼い頃は家族揃って賑やかに花見をしたものだ。


いつの頃からか涼介が抜け、麻衣が抜けて、最近は父と母二人が静かに花を見る程度になっていた。


何年振りかで三人は桜の木の下で花見をしていた。


両親の楽しそうな顔がそこにあった。


涼介に欠けてたモノ・・心を見せること?


思いやりの気持ちを持っていても、どう表に出したらよいのかがわからなかった。


心で感謝していても言葉が出なかった。


どうしても言えなかったことが自然と口にできるようになっていた。


涼介は、ありのままの自分で目の前にある道を進んでいる。




章吾は毎日を手話の講習と童話の製作に使っていた。


手話の方は、随分と上達した。


でも、まだまだ、もっともっと、と上を目指して頑張っている。


こんな風に過ごしている時間がとても好きだった。


誰かのためというより、自分のためだと思っている。


童話を少しずつ書いている。


こちらの方はもう少し時間がかかりそうだ。


毎日がドタバタと忙しくて、一日がアッと言う間に過ぎる。


身体の疲れは十分な睡眠で乗り切れる。


精神的な疲れをあまり感じない。


ダラダラと過ごしていた頃の方が苦しかった。


遥との恋愛も、麻衣に対するあこがれの気持ちも章吾の心を満たした。


今は将来の夢と希望が心をいっぱいにしている。


こういう状態を『幸せ』と呼ぶのだろうか。


何かで心がいっぱいになる。


一生懸命になれるモノがある。


だから進んでいける。


『走れなきゃ歩けばいいんだ』麻衣のCDの中に入っていた詩を思い出す。


自分の書く童話が、今どの程度なのかよくわからない。


『才能なんてありませんよ』誰かにそう言われるのが怖いから、どこにも誰にも見せられないのだ。


だけど章吾は心を決めた。


応募してみることにした。


今回ダメでもまた書けばいい。


自分の心を動かす出来事と向かい合った時、またきっと書きたくなる。


その時まで、ゆっくり歩けばいい。


本当に書きたいと思ったものにありったけの思いを込めて。


『虹の向こう側』そう名付けられた章吾の童話は彼自身の手でポストに投函された。




                                       終り

「誰?」


マスターは声をかけた。


「草野さんのお兄さんです。


プラネタリウムで一緒になりました。


なぜだかわかりませんが、ここに案内していました。」


「そうだったのか。」




涼介は今、波の音を聞きながら麻衣の幻を見ていた。


最近急に涙もろくなったものだと思いながら。


麻衣、俺もそろそろ元気にならなきゃな。


章吾っていう彼もそう思って俺をここに案内してくれたんだろうし。


いつまでも俺がこんなじゃ、オマエも苦しいだろうからな。


『麻衣オリジナル 希望』聞いたよ。


オマエの選んだ曲がたくさん入っていたCD。


いつも言っていたよな。


『B'zの音楽は素晴らしい』って。


『歓びで哀しみを包む覚悟をしよう』ってホント上手いこと言うよな。


俺も、覚悟をするよ。


もう泣かない。


泣いたってオマエは帰って来ないんだから。


長い暗闇の中で暮らすのはもう終わりにする。


何か俺にできることを見つけて選んで進んでいく。


(涼兄だったら何だってできるよ。)


麻衣の声が聞こえた気がした。




扉を開き章吾に声をかける。


「帰りませんか?」


「はい。」


二人は黙ったまま車は高速道路に入った。


あの時もそうだった。


静かに時間が流れた。


麻衣とあの海に行った帰りのこの道。


別れ際に涼介は口を開いた。


「ありがとう。


何か見つけられるかもしれない。


キミのおかげだ。」


「いえ、僕はそんな・・。」


「じゃあ。」


涼介の車が遠くなる。

「久しぶりだな。


オマエの主人は死んでしまったんだぞ。


ゴメン、俺のせいで・・。」


シートに座ってハンドルを握るとまた目の奥が熱くなり視界がぼやけてくる。


エンジンをかけると、あの頃と変わらない音が耳に響く。


覚えている、この身体が・・。


ゆっくりとアクセルを踏み車は動き始めた。


道は予想していたよりもずっと少なくて思っていたよりも早く到着した。


ここで星を見ていたのか・・。


「暗闇を怖いと思っていた。


そう、ずっと昔・・幼い頃。


だけどね、いつの頃からか暗闇に自分の身を置いておかないと深く息が出来なくなっていた。」


麻衣がドイツで言ったことを思い出した。


俺はアイツが羨ましかったと言ったが、麻衣は麻衣で苦しみ、もがいていたもかもしれない。


中学生の頃から、ずっとアイツは笑っていた。


人前で涙を見せたことが無い。


両親に対しても、俺に対しても、きっと仲間の前でも・・。


一人で抱え込んでいたんだな。


部屋の明かりを消してベランダから空を見上げていることがよくあった。



間もなく静かな音楽とともに星は姿を現した。


雨の日に星を見ているような、何とも不思議な経験をした。


同じモノを三度くらいは見たような気がしていた。


ちょうどその時、左斜め前の席に座っている青年の膝の上に一冊の本があった。


『ミュンヘンから』本の帯には、『草野麻衣遺作 彼女があなたに贈る最後のメッセージとは??』とある。


涼介はじっと見つめていた。


彼の異常な視線に気が付いた章吾は、姿勢を直す振りをして視線の方に目を向ける。


自分と同じファンだと単純に思った。


が、その普通ではない彼の様子に驚いた。


涙が頬を流れている。


この分だと、ここに来てからずっとだろう。


彼女の死をこれほど悲しんでいる人がいる。


もう三か月が過ぎると言うのに・・。


時間の長さが悲しみの深さと関わりがあるとは思わないが、たいていの人は、そろそろ自分の元の生活のペースを取り戻していても良い頃のように思われた。


誰だろうか?


単純な疑問だった。


その時、彼は諦めたように席を立ち外に向かって歩き始めた。


何を思ったか、章吾は後を付けていた。


地下の駐車場に見慣れた車がある。


彼は、そのドアに手をかけた。


章吾は思わず声をかけた。


「その車は、草野さんの・・。」


「えっ、そうですけど・・、あなたは?


僕は麻衣の兄で、草野涼介と言います。」


「駒沢 章吾です。


草野さんのファンです。


星、お好きなのですか?」


「いえ、妹がプラネタリウムによく言っていたと聞いていたので、何となく・・。」


「僕は、草野さんに出会えたから、今こうして自分の道を歩いていられるような気がしています。


これから時間ありますか?


もし良かったら海を見に行きませんか?」


章吾は涼介に会ったことを不思議に思っていた。


偶然なんてことがこんなにもあるなんて、巡り合わせってすごい・・と。


車が静かに動き出す。


「この車に乗せてもらった日のことを今でも僕ははっきりと覚えています。


ドライブに行くと言う草野さんに無理を言って付いて行きました。


その時から僕は少しずつ歩き始めました。


大好きだった彼女の死をやっと受け止めることができました。


彼女がいたあの場所に留まっている意味があったわけではないけれど、歩き出すことを拒んでいました。」


「麻衣は、キミに何か言いましたか?」


「いえ、何も・・。


砂浜に座って海を見ている草野さんを僕は黙って見ていました。


声をかけられるような雰囲気ではありませんでしたから。」


「麻衣は昔からそうでした。


みんなと一緒の時は明るくて華やかなのです。


だけど、一人になった時、どうしょうもなく悲しそうな顔をしている瞬間があるんです。


そして僕が、


『どうかしたか?』と聞くと


『なんでもないよ』そう言って笑って見せた。


もう、随分前のことなんですけどね。


『ミュンヘンから』を書き上げた時のあの満足そうな顔が忘れられません。


原稿を読んで僕は思いました、これで少しはラクに生きられるだろう・・と。


誰だって、いろんなところで妥協して生きているところがあるでしょ。


麻衣にはそれが無い、それをその時初めて知りました。


これから先、もっといろんなモノが書けたはずなのに・・。


僕が麻衣をドイツに引き留めたんだ。


日本で書きあげるというアイツに、『最後まで頑張れよ』って。


あの時、帰国していれば今もコイツを走らせているかもしれないのに・・。」


「草野さんは自分の意志で残ることを決めたのだと思います。


いつも自分の進む道を選びながら生きてきたことが彼女を支えていたみたいなところがありましたから。


彼女の全部を知っているわけではありませんが・・。


生意気なことを言ってすみません。。


ここです。」


章吾そう言われて車を止めた。


「すまないが、一人にしてくれるかな・・。」


「はい。」


涼介は砂浜に向かって一人で歩き始めた。


章吾は『Primrose』の扉を開けた。