「奈緒、誕生日おめでとう。」
そう言って大きな花束と小さな四角い箱を手渡した。
「ありがとうございます。
誕生日、一緒に過ごしてだなんてわがまま、聞いてくれてありがとうございます。
綺麗なお花。
こんなのもらったの初めてです。
すっごく嬉しいです。
これは?」
手渡されたリボンのついた赤色の箱。
「もちろん、プレゼントだよ。
気に入ってもらえると良いけど・・。」
「わぁ~お花もこれも?」
奈緒がとても嬉しそうに笑う。
「開けてもいい?」
「どうぞ。」
箱を丁寧に開けてみると中には濃いピンク色の石の付いたネックレス。
「付けてあげるから、貸して。
誕生石・・も考えたけど、今の奈緒のイメージはこれだったから。
うん、とっても似合ってるよ。」
「ありがとうございます。
ずっと大事にします。」
テーブルには奈緒が朝から一生懸命に作ったモノが並んでいる。
18本のロウソクもちゃんと用意されていて、ケーキにはイチゴがたくさん乗っている。
「料理の才能あるね。
盛り付けだってこんなに綺麗で上品で、高校生のしてることには見えないよ。」
「お世辞でも、嬉しいです。
母が、『同じ食べるなら楽しく食べたいじゃない。美味しいモノを食べてると人は自然と笑顔になるのよ。』っていつも言います。
喜んでくれる人のために作る時は、ホントに幸せなんです。
古川さん、ありがとう。
18歳の誕生日、忘れられない日になりました。」
「奈緒・・。」
ゆっくり時間をかけて食べる二人。
仲良くキッチンに並んで後片付けをする。
「さあ、奈緒、こっちに来て紅茶飲みなよ。
安江さんのようにはいかないけど・・。」
最初は向かい合わせに座っていた二人だったが、最近では並んで座るようになっている。
「古川さん、大事な話があります。」
「イイこと?悪いこと?」
「・・・。
私、ただ寂しくて古川さんに甘えてきました。
でも、この前、気が付きました。
誰だって何かを抱えて生きてるんだって。
それなのに自分だけがラクになろうとするばっかりで・・。」
「奈緒、俺のことはいいんだ。」
「いいわけないです。
あなたは私のために笑ってくれるけど、そんなのおかしいです。
今日は帰りません。
私は私の気持ちを確かめます。
だから、古川さんは古川さんの気持ちを確かめてください。」
そう言って古川に抱きつく。
「奈緒、こんなこと止めよう。
意味ないよ。
前に言ったよね、『こころのナイ女は抱かないって。』」
「でも、こうも言いました。
『抱いて欲しいなら断る理由はないし・・。』って。
本当は古川さんのことでしょ。
『こころのナイ・・』っていうの。
誰だかわからない顔の見えない人のことが、ずっと心から離れません。。
さっきもホントに嬉しかったし楽しかったです。
でも・・。
だから、はっきりさせたいと思います。
ここで終わりにするか、この先に進んでいくのか。
今だったら、まだ引き返せる・・と思います(自信は無いけど)。」
「今すぐはっきりさせないといけないこと?
せっかくの誕生日に?」
「1日延ばしても1か月先に延ばしても、多分答えは同じだと思います。」
「だから、俺の気持ちはいいんだって言ってるだろ。
こんなことしなくたって俺は奈緒を泣かせたりしない。」
「私・・リュウの心が欲しい。
リュウに・・。」
「わかったから・・。
奈緒、もう何も言わないで。」
「リュウは大人で、私は子供で、いつもそうやって『わかった』って言うけど・・。」
次の瞬間、強い力で抱きしめられた。
「奈緒、ゴメン。」
そして・・奈緒を抱いた。
奈緒はハッ・・とする。
とんでもないことを言ってしまった。
とんでもないことをしてしまった。
リュウを傷つけてしまった。
傷口がまだ乾かないことを知りながら、その傷口を広げるようなことをしてしまった。
奈緒の中で果てた後、静かにリュウが言った。
「奈緒、俺たちはこれからどうなるの?」
涙をいっぱい溜めた瞳で哀しそうに奈緒を見た。