今日は晴れていて気分良かったけど、すごく寒かったです。


発売が決まってすぐに予約したアルバムが届きました音符



k-kyokoのブログ

前作の『KISS』から4年ですか?


私は『虹』でこの人たちを知ってそれからずっと・・。


『虹』に出会ってそれまでのアルバムを買いあさりました。


あれから・・何年??


きゃ~私って幾つだ?


アルバム収録曲は他のアーティストに比べて少ないですが、中身が濃いのは、ファーストアルバムからずっと変わりません。


闘志メラメラ炎って感じではないところが、暑苦しくなくて好きです。


ライブにはもう随分行ってないし・・こんなにビッグバンドになると、チケットもそう簡単には取れませんし・・。


CDとDVDでこっそり応援しています。


アルバム、じっくり聞いていると他のことが止まったままになってしまいます。


まあ、いいかぁ~4年振りなんですからね~。

「奈緒、誕生日おめでとう。」


そう言って大きな花束と小さな四角い箱を手渡した。


「ありがとうございます。


誕生日、一緒に過ごしてだなんてわがまま、聞いてくれてありがとうございます。


綺麗なお花。


こんなのもらったの初めてです。


すっごく嬉しいです。


これは?」


手渡されたリボンのついた赤色の箱。


「もちろん、プレゼントだよ。


気に入ってもらえると良いけど・・。」


「わぁ~お花もこれも?」


奈緒がとても嬉しそうに笑う。


「開けてもいい?」


「どうぞ。」


箱を丁寧に開けてみると中には濃いピンク色の石の付いたネックレス。


「付けてあげるから、貸して。


誕生石・・も考えたけど、今の奈緒のイメージはこれだったから。


うん、とっても似合ってるよ。」


「ありがとうございます。


ずっと大事にします。」


テーブルには奈緒が朝から一生懸命に作ったモノが並んでいる。


18本のロウソクもちゃんと用意されていて、ケーキにはイチゴがたくさん乗っている。


「料理の才能あるね。


盛り付けだってこんなに綺麗で上品で、高校生のしてることには見えないよ。」


「お世辞でも、嬉しいです。


母が、『同じ食べるなら楽しく食べたいじゃない。美味しいモノを食べてると人は自然と笑顔になるのよ。』っていつも言います。


喜んでくれる人のために作る時は、ホントに幸せなんです。


古川さん、ありがとう。


18歳の誕生日、忘れられない日になりました。」


「奈緒・・。」


ゆっくり時間をかけて食べる二人。


仲良くキッチンに並んで後片付けをする。


「さあ、奈緒、こっちに来て紅茶飲みなよ。


安江さんのようにはいかないけど・・。」


最初は向かい合わせに座っていた二人だったが、最近では並んで座るようになっている。


「古川さん、大事な話があります。」


「イイこと?悪いこと?」


「・・・。


私、ただ寂しくて古川さんに甘えてきました。


でも、この前、気が付きました。


誰だって何かを抱えて生きてるんだって。


それなのに自分だけがラクになろうとするばっかりで・・。」


「奈緒、俺のことはいいんだ。」


「いいわけないです。


あなたは私のために笑ってくれるけど、そんなのおかしいです。


今日は帰りません。


私は私の気持ちを確かめます。


だから、古川さんは古川さんの気持ちを確かめてください。」


そう言って古川に抱きつく。


「奈緒、こんなこと止めよう。


意味ないよ。


前に言ったよね、『こころのナイ女は抱かないって。』」


「でも、こうも言いました。


『抱いて欲しいなら断る理由はないし・・。』って。


本当は古川さんのことでしょ。


『こころのナイ・・』っていうの。


誰だかわからない顔の見えない人のことが、ずっと心から離れません。。


さっきもホントに嬉しかったし楽しかったです。


でも・・。


だから、はっきりさせたいと思います。


ここで終わりにするか、この先に進んでいくのか。


今だったら、まだ引き返せる・・と思います(自信は無いけど)。」


「今すぐはっきりさせないといけないこと?


せっかくの誕生日に?」


「1日延ばしても1か月先に延ばしても、多分答えは同じだと思います。」


「だから、俺の気持ちはいいんだって言ってるだろ。


こんなことしなくたって俺は奈緒を泣かせたりしない。」


「私・・リュウの心が欲しい。


リュウに・・。」


「わかったから・・。


奈緒、もう何も言わないで。」


「リュウは大人で、私は子供で、いつもそうやって『わかった』って言うけど・・。」


次の瞬間、強い力で抱きしめられた。


「奈緒、ゴメン。」


そして・・奈緒を抱いた。


奈緒はハッ・・とする。


とんでもないことを言ってしまった。


とんでもないことをしてしまった。


リュウを傷つけてしまった。


傷口がまだ乾かないことを知りながら、その傷口を広げるようなことをしてしまった。


奈緒の中で果てた後、静かにリュウが言った。


「奈緒、俺たちはこれからどうなるの?」


涙をいっぱい溜めた瞳で哀しそうに奈緒を見た。


「古川さん、来週もまた行ってもいいですか?


次の土曜日、私の誕生日なので一緒に過ごしてもらってもいいですか?」


「いいよ。


いつだって来ていいよ。


留守の時はこれを使って入ればいい。


土曜日は盛大にお祝いしよう。


はい、これ。」


そう言ってカードキーを渡された。


「今日のお礼に私が作ります。


キッチン貸してくださいね。」


「いいけど、奈緒の誕生日だろ、だったら俺が・・。」


「いえ、私にさせてください。」


「じゃあ、お願いするとしよう。」


「それから、今度、私の家にも寄ってくださいね。」


「ああ。


今日は家の前まで行くよ、いいね。」


「はい。


そこのクリーニング屋さんの所を左に曲がって、もうすぐです。


ここです。」


玄関先にはプランターがいくつも並んでいる。


玄関の扉には緑色の上品なリースが飾られている。


「ありがとうございました。」


「じゃあね。」


運転席の窓を開けて古川は言った。


その車がその先の角を曲がるまで静かに見つめながら考えていた。


差し障りのない会話になっていた気がした。


頭の中には哀しそうな古川の姿が消えずにずっとあったから。


そんなにひつこく聞けやしない。


二人は付き合ってるわけじゃないんだから。


たとえ付き合っていたとしても踏み込めない場所って当然あるだろうし・・そう思った。




「おはよう、奈緒。」


元気な声で陽子が言う。


「この前は、どうだったの?


『美味しいお昼をご馳走になったのよ。』だけじゃ、わからないわっ。


写メあったから、パスタを食べたくらいのことはわかったけどね。


奈緒たち、イイ感じになってるんじゃないの?」


陽子の目はキラキラしていて嬉しそうだった。


「あれ、古川さんのマンションなのよ。


古川さんが作ってくれたの。」


「へ~、部屋に行ったのかぁ・・。」


ちょっと探るような目。


陽子は、そんなはずないだろうと思ったが一言付け加えた。


「もしかして・・キスとかされた??」


「えっ・・。」


奈緒がひどく動揺した。


まさか、この二人・・。


「も~陽子ったら・・。


古川さんはそんなことしないよ。


・・・。


私が眠ってる古川さんにキスしたのよ。


あの人は気が付いてないけどね。」




奈緒は、放課後、一人教室で陽子に借りたノートを写していた。


この前、保健室で休んでいた時の英語と物理。


(物理なんてちっともわからないよ。


陽子はなぜこんな難しいことが面白いと思えるんだろうか。)


「あれ?


奈緒、何してるの?」


「授業のノート書き写してるの。


津田君は?」


「進路のことで担任に呼ばれてたんだ。」


「ふ~ん。


バンドの方は上手くいってるの?」


「ああ、毎日楽しくてたまらないよ。


将太たちと一緒にいると俺の世界が変わってくのを感じるんだ。


仲良し仲間で生ぬるいことをやってると思ってた。


バンドに誘われた時も、どこかでバカにしているところがあった。


でも、一緒にやってわかったよ。


こいつらも必死なんだって・・。


この先がどうとかじゃなくて、今を燃焼して生きることに一生懸命だって。


汗だくでボールを追いかけていた俺と同じなんだってな。」


「ふ~ん。


私には何もできなかったもんね。」


聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。


「文化祭で歌うから来てくれよな。」


「うん。」


「そういえば、この前見たよ、奈緒が彼氏の車に乗っているとこ。」


「うん。」


「正直、苦しくなったよ。


すっごく遠くに思えて哀しくなった。


奈緒は俺のこと『津田君』って呼ぶし。


ゴメン、何言ってるんだろう、俺。


先に帰るな。」


「バイバイ。」


『優斗』そう呼んでしまいそうになるのを押さえる。


自分の心がどこを向いているのかよくわからない。


古川の心を知る前に、自分の心を見つめないといけない。


自分のことが何も見えてない状態で何をどうしたいかなんてわからない。



どこをどう通って沙織の家にたどり着いたのかわからない。


インターフォンを押すと中から声がした。


(沙織?)


「どちらさまですか?」


「古川と申します。


沙織さんのクラスメイトでした。」


「はい。」


そして玄関に母親が現れ古川に向かって深く頭をさげる。


「竜君、久しぶりね。


元気だった?


さあ、中に入って。」


あの頃と変わらない沙織の家。


玄関にはいつも花が飾られていた。


今日は淡いピンク色のスイートピー。


沙織と並んで食事をしたリビングのテーブルもそのまま。


沙織のお母さんは温かいココアを入れてくれた。


「どうぞ。」


「ありがとうございます。


お母さんのココア、いつもご馳走になってましたよね。」


「竜君がここに来たってことは、知ってしまったってことよね。」


お母さんの顔がくもる。


「はい。


沙織は?」


ココアを飲み終えた竜が口を開く。


「こっちよ。」


そう言って仏壇のある和室に案内される。


「二人がいいわよね。


私は向こうにいますから。」


哀しそうに小さく微笑んだ後静かにドアを閉めていった。


震える右手を同じように震える左手で支えるようにしてロウソクに火を灯す。


線香をあげ、静かに目を閉じ手を合わす。


さっきから手の震えが止まらず上手く手を合わすことができない。


信じられない気持ちでいっぱいなのだ。


でも、ここにどうにもならない現実がある。




(俺ってバカだよな。


沙織がこんなことになっていることも知らずに毎日を過ごしていたなんて。


なあ、黙っていたってことはこんな風に俺にいて欲しかったってことか?


今のこの状況は沙織にとって不本意なことか?


ずっと知らずにいるなら、それもアリだったかもしれない。


でも、俺は今こうして知ってしまったよ。


沙織、俺はもう今までの俺ではいられないよ。


ねえ、後で知ったら俺が傷つかないとでも思ったの?


ごめんな、気が付いてやれなくて。)




どれくらい時間が過ぎただろうか・・。


リビングで待つ母親のところにやってきた。


「ゆっくり話しができたかしら?」


「俺は、もう自分に自信が持てなくなりました。


好きな女一人支えれてやらなかったなんて、情けなくてたまりません。」


「竜君、そんなことないのよ。


あなたがいたから、沙織は笑って毎日学校に通うことができたのよ。


あなたがいたから、辛い宣告を受けても、少しでも長く元気でいようと思うことができたのよ。


沙織にとって、竜君ってそんな大事な存在だったのよ。


二人が別れることになった時も、これでよかったのよ・・って笑って言ったわ。


私はどこか遠くで元気に暮らしてるって思ってて欲しいんだ・・って。


沙織の母親として、竜君がずっと知らずにいてくれたら・・そう願っていたわ。


ごめんなさいね。


あなたに何も告げずにいたこと。」


「いえ・・もう・・。


お邪魔しました。」


そう言うと力なく沙織の家を後にした。


今までの時間、今、そして未来が消える感じがした。


「私は私の道を行く。


竜は竜の道を行く。


一緒に過ごした今までの日々に恥ずかしくないように生きようね。」


最後に会った時、沙織はそう言った。


初めて見た彼女の涙。


その涙の意味を今になってやっと正しく理解した。

マンションの駐車場を出て車は大きな通りの交差点の赤信号で止まる。


その横を学生たちが通り過ぎる。


「あれ、奈緒じゃん。」


車の中の奈緒に将太が気づく。


「えっ?」


優斗がッ将太の視線の先に目をやる。


その隣で和彦がボソッと呟く。


「あの人は・・。」


「知ってるのか?」


立ち止って将太が聞く。


「俺の姉貴と付き合ってた人だ。」


「えっ、病気で亡くなったと言うあの綺麗なお姉さん?」


「ああ。」


いつもは無駄なことをずっと喋りつづけている和彦の口が重くなる。


「古川さんが優斗の元カノとね・・。」


「何か気になる言い方だな。


出来たら話してくれないか?」


「ごめん・・。」


「そうか、悪かったな。」




当時、和彦の姉、沙織は古川と付き合っていた。


この二人の付き合いを周りの友人たちは温かく見守っていた。


羨ましいほどの素敵なカップル。


進路を決める高三の夏休み前、沙織は突然別れたいと古川に告げた。


「私、卒業したらドイツに行こうと思ってるの。


ヴァイオリン諦めたくないんだ。」


「うん。


俺も応援してるから。


だけど、別れることとは関係ないと思うんだけど。」


「ごめんなさい。


竜に心を残したままドイツに行くのが辛いの。


全部手放してヴァイオリンだけ抱いてドイツに行きたいの。


竜、お願い、私のわがまま許して。」


沙織のしっかりとした強い思いが伝わってくる。


真っすぐ見つめて一言一言。


そんな風に言われると、もう返す言葉は一つしかない。


「わかったよ。」


それからしばらくして沙織は学校に来なくなった。


待ちきれなくて早々とドイツに行ったのだと思っていた。


沙織のいなくなった学校生活はもう古川にとって何の意味も無かった。


それでも、別れは辛かったけど、沙織が夢に向かって歩いているのなら自分もちゃんと生きて行かなければ・・そう考え始めた。


多分、父の事業を手伝うことになるのだろう。


今のうちにできることは一つでも多く学んでおかなければ・・。


大学に入ってしばらくしたある日、偶然に耳にした沙織のこと。


「まさか亡くなってたなんてね。


ヴァイオリンの勉強にドイツに行ったとばかり思ってたけど、あれって病院に入ってたんだって。


母にそれを聞いて、沙織の家に線香をあげに行ったの。」


「へ~、沙織らしいね。


私たちに心配かけたくなかったのね。」


「おい、それ、どういうことだ。」


学食で隣の席にいた男子生徒が突然立ち上がる。


「あっ、古川君・・。」


「沙織が死んだ??」


「古川君も知らなかったのね。


病気だったんだって。


わかった時にはもうどうにもならなくて・・。


学校に来れる限界だったのよ、あの頃。」


古川の頭の中は真っ白になって何も考えられない。