鈍い痛みに襲われる


そしてその痛みが消える


薬が効いてるの?


それとも 命が消えた?


不安の中 ゆっくり目を開けると あなたがいる


生きてるのね 




いつも言えない言葉を 手紙に書こうと思った


一人きりの時に・・


ごめんね


ありがとう


あなたがくれた たくさんの優しさ


今もどれ一つ忘れずに 心にある


サヨナラの手紙 いつになったら書き終るのか


私にもわからない


最期の日まで 続きそう




生きることに執着しない私だった


大事なモノ一つ見つけただけで


こんなに変わったよ


でも もうすぐ・・


哀しいけど もうすぐ・・


あなたの笑顔が消えないことを ただ願う



「美佳、今の自分のことをどう思ってる?


こうやってオマエを描いていると伝わってくるんだ。


どう生きたらいいのかわからなくて、迷ってるんじゃないのか?」


「直樹には何でもわかっちゃうんだね。


誰にも本心を知られまいとしてきたけど、直樹に見透かされてホッとする自分がいるよ。」


「当然だよ。


俺はずっとオマエを見てきたからな。」


終わっている恋。


なのになぜだか胸の奥が熱くなる。


「私、変わったの。


直樹を好きだった美佳はもういないよ。


いつでも全部を捨てて直樹の元に行きたいと思うような、恋愛重視の女は卒業したの。


手にしてる時は幸せだけど、失くしてしまうと耐えられない。


空っぽの自分だけが残ることを知ったから。」


「そんな寂しいことを言うな。


あの時も、美佳の気持ちは痛いほどわかっていた。


だけど俺は、描くことを楽しめなくなっていた。


それで就職したってのが本当の理由だ。


自分を守ることで精一杯だったんだ。


ゴメン。」


「ねえ、どうして今ごろになってそんなことを言うの?


なぜ、私の前に現れたりするの?」


「それは・・、美佳が俺を呼んだから。


心で俺のことを思い出してくれただろ?


だからだよ。」


「私が直樹を呼んだ??


そんなこと・・。」


「無理して生きるなんてそんな疲れることするな。


好きなように生きてたって、それなりにいろんなことがあるさ。


でも、頑張ろうって思えるだろ。


多分、そこが大事なんだと思う。


自分の気持ちにウソついちゃダメだ。


次のウソをつくことになると苦しくなるからな。


いろんなこと、話し過ぎたな。


俺、そろそろ行くよ。」


「直樹、待って。


今どこに?


何してるの?」


「心配しなくて大丈夫。


俺はちゃんとやってるよ。」


直樹の姿は消え、そこには黙って美佳を見つめる雅哉の姿があった。


「美佳、今日はもう帰ろう。


やっぱ、寒いや。


ほら、涙・・。」


そう言って、雅哉は美佳の頬にそっと手をあて、涙を拭う。


「先に帰ってて。


私、もう少しここにいたいから。」


そばらく一人でこの広い海と空に抱かれていたいと思った。

君のそばで


君だけを見つめて


生きて行きたいと思ったけど


世界はボクが思っていたよりも


ずっと大きくて美しい


それを教えてくれたのは 君だよ


「待っていてもいいですか?」


君はそう言ったね


必ず戻るから 信じて待っていて欲しい




旅立つ勇気をくれた 君の言葉


臆病なボクの背中を そっと押してくれた


いつも その言葉を抱いている


君は 元気でいるだろうか


ボクを待っていてくれているだろうか


もうすぐ戻るから


会いたい


会いたくて 会いたくて・・




あの日と同じ笑顔が


この腕の中にある


ここから先は もう離さない


二人手をつないで 歩いて行こう


その笑顔を守りたい


大袈裟かもしれないけど


ボクの全てをかけて 守るから

海辺のリゾートホテル。


いつの間にこんなところに予約を入れたのだろう。


こういうことは得意というか、手際よく準備をし、何食わぬ顔で案内する雅哉。


たまに、こんなことがある。


せっかくだから海辺を歩こうと美佳が言う。


「外、すっごく寒そうじゃん。


それでも・・行く??」


そう言う雅哉に得意顔で言う。


「私は大丈夫。


ちゃ~んと準備してきたから。」


頭の先から足の先までの極寒装備。


それだけ身に付けていれば寒さはそう感じないかも。


耳あて・手袋・レッグウォーマー・コート・ブーツ・カイロ・・・・。


こんな準備してるなら待たされるはずだ、雅哉は納得した。




砂浜に打ち上げられた流木に腰を掛ける。


「ここにする?」


「ああ。」


美佳ははるか遠くの水平線を見つめ、雅哉はそんな美佳を黙ったまま見つめる。


そんな雅哉がある瞬間を境に直樹に見えた。


「どうして直樹がここに?


なぜ、私を描いているの?」


「ここで待っていればいつかもう一度、美佳に会えると思ったから。」


そう言ってあの頃のように静かに笑った。


直樹は美佳との未来のために絵筆を置き、パソコンを手にした。


それがどうしても納得できず、あの日、二人は別れた。




「卒業したら一緒に暮らさないか?


『夢』なんて所詮夢なんだ。


叶いっこない。


現実の社会で生きられないヤツが口にする逃げ道だと思う。」


「直樹、それは違うと思う。」


何度も同じやり取りをして何度もケンカをした。


もう何年も前のことなのに、不思議と鮮明に覚えている。


あの日の別れが正しかったのか間違っていたのか、正直今もわからないと美佳は素直にそう思った。


雅哉のはずなのに、どうして直樹?


その直樹が話し始める。

多分まだ・・大丈夫


多分まだ・・好きじゃない


そう思おうとしてる??


ちょっとわからない



でも・・いつもだったら


こんな中途半端なことはない


一瞬で引かれてる


だから 大丈夫


この先には 何もない


そう思おうとしてる??



ハラハラ・ドキドキ・・そんな恋に疲れたから


しばらくは寂しいくらいがいい


しばらくは哀しいくらい独りがいい