海辺のリゾートホテル。
いつの間にこんなところに予約を入れたのだろう。
こういうことは得意というか、手際よく準備をし、何食わぬ顔で案内する雅哉。
たまに、こんなことがある。
せっかくだから海辺を歩こうと美佳が言う。
「外、すっごく寒そうじゃん。
それでも・・行く??」
そう言う雅哉に得意顔で言う。
「私は大丈夫。
ちゃ~んと準備してきたから。」
頭の先から足の先までの極寒装備。
それだけ身に付けていれば寒さはそう感じないかも。
耳あて・手袋・レッグウォーマー・コート・ブーツ・カイロ・・・・。
こんな準備してるなら待たされるはずだ、雅哉は納得した。
砂浜に打ち上げられた流木に腰を掛ける。
「ここにする?」
「ああ。」
美佳ははるか遠くの水平線を見つめ、雅哉はそんな美佳を黙ったまま見つめる。
そんな雅哉がある瞬間を境に直樹に見えた。
「どうして直樹がここに?
なぜ、私を描いているの?」
「ここで待っていればいつかもう一度、美佳に会えると思ったから。」
そう言ってあの頃のように静かに笑った。
直樹は美佳との未来のために絵筆を置き、パソコンを手にした。
それがどうしても納得できず、あの日、二人は別れた。
「卒業したら一緒に暮らさないか?
『夢』なんて所詮夢なんだ。
叶いっこない。
現実の社会で生きられないヤツが口にする逃げ道だと思う。」
「直樹、それは違うと思う。」
何度も同じやり取りをして何度もケンカをした。
もう何年も前のことなのに、不思議と鮮明に覚えている。
あの日の別れが正しかったのか間違っていたのか、正直今もわからないと美佳は素直にそう思った。
雅哉のはずなのに、どうして直樹?
その直樹が話し始める。