冷たいヤツだと 誰もがそう言った


キミと出会って


キミを好きになって


・・キミを失う未来を知らされて


オレに 涙があることを知った


守ってやると約束したのに


自分の無力さを痛いほど感じている


オレの頬をつたって流れる涙を


キミが哀しげに見つめる


ゴメン 


キミはいつも我慢していたんだな


オレに涙を見せまいと・・


なのにオレが このオレが涙を見せたから


必死にこらえていたキミの思いが溢れたんだね


愛しい人よ どうか泣かないで


泣かないで・・

三年ぶりに亜美は日本に帰って来た。


戻りたいと思ったことは無かったが、こうして帰って来るとやはり懐かしい。


「亜美、外で少し飲む?」


智也はそう言ったが、亜美は少し眠りたいと言った。




翔平はいつもここに来る。


何かあるとここに来る。


ここは何も変わらず翔平を迎えてくれる。


だから自然と足がここに向く。


カウンターの一番奥に懐かしい人を見つけた。


「足立さん?


どうして??


いつ???」


「翔平、そんなに一度にいろいろ聞くなよ。


仕事で今日、着いたんだ。


オマエたち、頑張ってるな。


会社の女の子たちもCD買ったりライブに行ったり忙しそうだぞ。


思わず知り合いだと言ってしまいたくなるよ。」


あの頃と変わらない笑顔が翔平の心をラクにする。


「一人で?」


「いや、三人で。


亜美は部屋で休んでるよ。


少し眠りたいとか言ってたけど、大丈夫、呼んでやるよ。」


「いえ・・呼ばないでください。」


「どうして?


会いたくないのか??」


智也は不思議そうに翔平の顔をのぞき込む。


「俺だって会いたいです。


ずっと会いたかったです。


でも、今は会えません。」


翔平にとって智也は本心を打ち明けられる相手だった。


弱さを見せられる相手だった。


亜美には話せないことも智也には話せた。


男同士だからなのだろうか・・、その辺のことはわからないのだが。


「翔平、いきなり重いな。」


三年ぶりの再会なのに、翔平の切羽詰まったような感じが智也には感じられた。


「これだけ売れて、まだ何か足りないとか言うんじゃないだろうな?


胸張って会えばいいんじゃないか?」


翔平の気持ちをほぐすように明るく言って見せた。


「最近、何も書けなくて・・。」


「どうして??」


「自分でもわかりません。


仲間が良いモノを書いてくれているから、バンド的には何の問題も無いんですけど、俺が苦しくて。」


「そうか・・。


だけど俺は何も言ってやれないよ。


翔平の中で起きてることだからな。」


智也は翔平たちに音楽のことについて何かを語ったことが無い。


自分にはわからないことだと言う。


翔平たちのことは弟のように可愛いと思っていたし、友人のように相談にのることもあった。


だから、今の智也の言葉が翔平の気持ちを軽くした。


自分の心を誰かに打ち明けられたこと・・それがものすごく大きかったしラクになれたのだ。


智也が何かを言ってくれることを期待していたわけではなく、そう言って突き放されることもわかっていたのだ。


だけど、智也にしか言えないということもわかっているのだ。


「日本にはまだ戻ってこないんですか?


もう三年くらいになりますよ。」


「ああ、そうだな。


あの街は居心地が良くってな。」


「どんなところですか?


行ってみたいな。


あの・・、俺たちのライブ、二人で見に来てくれませんか?」


「そうだな、話してみるよ。」


「きっとですよ。」

「なあ、なつみとはどうなってるんだ?」


春樹にそう聞かれて翔平は黙っていた。


言葉を探していた。


「なつみのことは好きだ。


こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。


好きだと一年前に言っていれば、今の俺たちは違ってたかな?


一緒に手をつないで歩いていただろうか。


だけど、言えなかったんだ。


あの時から別々の道を歩き始めたのかもしれない。」


「それって、終わったってことか?」


隆が心配そうに言う。


「終わってなんかないさ。


俺たちは始まってもなかったんだから。


お前たちとなつみの距離とそう変わらない。


少し近かったってだけのことさ。


なつみの力になってやりたいと思った。


でも俺がしてやれることって、本当にあるのか?」


「好きなら好きだって言えばいいじゃん。


今からだって言えよ。」


剛はそう言う。


「お前はわかりやすくていいよ。


望月さんんが言ったんだ。


『私にとっての智也のような存在の人に必ず出会うはずだから・・って。』


それがなつみだと思っていた。


その自信が無くなってきた。


なつみが一人で歩き始めたから。」


「翔平、お前・・。


なつみが自分の足で歩き始めたから淋しく思ってるんだろ?


喜んでやれよ。


俺たちだけに向けられていた笑顔が、そうじゃなくなって・・それがお前をそんな気持ちにさせてるんじゃないか?


『別に俺でなくたって・・。』そう思ってるんだろ?


焦ることないさ。


時間をかけてゆっくり育てていけばイイ。」


春樹はそう言った。




なつみはフランスに帰る準備を始めていた。


一か月の間にライブにも行ったし、会って話もした。


彼が今も情熱を持って生きていることを傍で感じられた。


それで十分だった。


描いていた夢を手にしたんだから。


フランスでまた頑張る元気をもらった。


自分には何があるんだろう。


今は逃げ道としてピアノを弾いているわけじゃない。


コンクールに挑戦してみよう。


初めての大きなコンクール。


なつみの中でも新しい何かが生まれようとしていた。




「亜美、奈穂、ただいま。」


「お帰り。


今日は早いのね。」


「日本に出張が決まったんだ。


来月の始めから三週間の予定で。


久しぶりに一緒に帰ってみないか?」


「そうね。」


「いつものホテルを予約してもらおう。


俺の仕事も、ひどくつまっているわけじゃないから、ゆっくりしよう。


それから・・、転勤することになるかもしれない。」


「どこ?」


「イタリア。


まだ、はっきり決まったわけじゃないけどな。


日本から帰って来るころにはわかるはずだ。」


「へ~、次はイタリアかぁ・・。


イタリア語??


幾つになっても私は勉強するしかないのね。」


知らない土地で暮らす不安よりも、新しい場所で始まる日々を楽しみにしている亜美を頼もしく思う智也だった。




「亜美さん、なつみです。


今日、こっちに帰って来ました。」


「お帰り。


久しぶりの日本はどうだった?


楽しかった?」


「はい。」


「それは良かったわね。」


「彼にも会ってきました。


一生懸命に頑張ってました。


私はやっぱり彼のことが好きなんだと思います。


彼は何も言ってくれませんでしたけど。」


「『好き』って言って欲しい時あるよね。


でも、言わなくても通じる気持ちってあるでしょ。


なかなか言えないよね~私も言えないな・・。


でも、でも、十回思ったらその内の一回くらい言ってくれてもいいんじゃないかって思う気持ちもわかる。


言わなきゃ伝わらないこともあるもんね。」


「彼には好きな人、いるかもしれません。


指のリング、あの頃のまま同じ指にありました。


『彼女とペアーですか?』って聞いた私に『違うよ。』って笑って言ってくれたんですけどね。


その人を今も・・。」


「信じてみたら。


人には、忘れずに持ち続けたい想いとかあるんじゃないかな。


ゆっくり育てていけばいいんだよ。


いつも走ってばかりはいられない。


歩くことも立ち止って休むことも必要なんだから。


私たち、しばらく日本に行ってくるね。


智也の出張に付いて行くことにしたから。」


「気を付けて行ってきてくださいね。」




なつみは今までと同じ学生生活を送っていた。


一人だけど独りじゃないってこういうことなのだろうな。


いつも誰かを頼っているのは嫌だけど、ここだって時に誰かがいてくれると思える今、気持ちは随分とラクになる。


なつみは本当にピアノが好きだった。


彼女を苦しめつづけていたモノが一つ一つ消えて、ずっと欲しいと思っていたモノを少しずつ手にしていた。


自分で拾い集めた『それ』はなつみを輝かせる力になった。


独りぼっちだった頃の淋しさや大切な人に出会えたことの喜び。


その一つ一つの出来事全てをなつみは愛せると思っていた。


いつか亜美が言っていた言葉が頭の中をよぎる。


『忘れずに持ち続けたい想い』


この時、翔平の指のリングの意味を初めて理解した気がした。

なつみが今までより遠く感じたのは自分だけなのだろうかと翔平は思っていた。


距離を感じたし、別れの言葉のようにも受け取られた。


そのことに対しても翔平はなつみに何も言えなかった。


仕事に追われなつみの心を気に掛ける余裕が無かったから。


なつみには俺たちがいる・・。


俺がいる・・。


そう思ってきた。


だけどそれは間違っているのかもしれない。


確かに新しい一歩を踏み出すきっかけは俺たちと出会ったことだったかもしれない。


でもそこから踏み出したのはなつみの意志だ。


何かしてやれるなんて、思い上がりに違いない。




なつみは自分の気持ちを整理していた。


翔平に対する思い。


彼のことが好きだった。


大好きだった。


この気持ちは、恋なのだろうか?


恋って??


好きって??


春樹に貰ったCDを聴きながら自分に問いかける。


淋しかったあの頃、一番近くに居てくれたのは翔平だった。


彼の近くに居ると気持ちは落ち着いたし楽しかった。


でも恋って・・、もっと熱いモノなのかもしれない。


カッコいいところも、そうじゃないところも全部知ってて受け入れることが出来るような・・。


翔平はいつも頼れる存在だった。


いつも優しく笑っていてくれたし、黙って話を聞いてくれた。


弱い部分を少しも見せないで・・。






翔平にも苦しい時期はあった。


音楽のこと、望月亜美に対する想いのこと。


そんな弱い部分を打ち明けることができない。


今思うと、初めて会った人になぜあんなことが言えたのか不思議でしょうがない。


あの時から全てが動き始めた。


はるか遠くの夢を引き寄せるために歩き始めたのだから。




なつみは、アルバムを聴きながら一年前のことを思い出していた。


空席だらけのライブでも一生懸命でいられたのはなぜだろう。


一つのことを続けるのは本当に大変なこと、まして思い通りにいかない現実の中にいたら途中で投げ出してしまいたくなる。


四人がバラバラにならないように見守り続けた人がいるのかもしれない、自分に亜美がいるように・・その時漠然とそう思った。


翔平の指にはあの頃と変わらず一本のリングがあった。


なつみは自分が細かいことを忘れずに覚えている人間だと思い少しおかしかった。


どんな人なんだろう・・。


今朝も寒いです。


1年が始まったばかりだというのに、もう風邪をひいてしまいました。


病院にも行きました。


インフルエンザではなかったのでもう元気になっています。


どこで? なんで?心当たりはないんですけどね。



さあ、今日はミスチルのアリーナ公演のチケット2次抽選の結果発表の日です。


午後7時以降・・多分・・多分・・また落選のような気がします。


抽選で当選したことないんですよ。


せっかく近くでライブがあるのに・・って気分です。


アルバム良かったから生で聴きたいんですけどね~。


今まで何ともなかったのに、発表が近づくとっそればかり気になります。



残念でした・・落選です。

やっぱり駄目だったな~って感じですね。