なつみが今までより遠く感じたのは自分だけなのだろうかと翔平は思っていた。
距離を感じたし、別れの言葉のようにも受け取られた。
そのことに対しても翔平はなつみに何も言えなかった。
仕事に追われなつみの心を気に掛ける余裕が無かったから。
なつみには俺たちがいる・・。
俺がいる・・。
そう思ってきた。
だけどそれは間違っているのかもしれない。
確かに新しい一歩を踏み出すきっかけは俺たちと出会ったことだったかもしれない。
でもそこから踏み出したのはなつみの意志だ。
何かしてやれるなんて、思い上がりに違いない。
なつみは自分の気持ちを整理していた。
翔平に対する思い。
彼のことが好きだった。
大好きだった。
この気持ちは、恋なのだろうか?
恋って??
好きって??
春樹に貰ったCDを聴きながら自分に問いかける。
淋しかったあの頃、一番近くに居てくれたのは翔平だった。
彼の近くに居ると気持ちは落ち着いたし楽しかった。
でも恋って・・、もっと熱いモノなのかもしれない。
カッコいいところも、そうじゃないところも全部知ってて受け入れることが出来るような・・。
翔平はいつも頼れる存在だった。
いつも優しく笑っていてくれたし、黙って話を聞いてくれた。
弱い部分を少しも見せないで・・。
翔平にも苦しい時期はあった。
音楽のこと、望月亜美に対する想いのこと。
そんな弱い部分を打ち明けることができない。
今思うと、初めて会った人になぜあんなことが言えたのか不思議でしょうがない。
あの時から全てが動き始めた。
はるか遠くの夢を引き寄せるために歩き始めたのだから。
なつみは、アルバムを聴きながら一年前のことを思い出していた。
空席だらけのライブでも一生懸命でいられたのはなぜだろう。
一つのことを続けるのは本当に大変なこと、まして思い通りにいかない現実の中にいたら途中で投げ出してしまいたくなる。
四人がバラバラにならないように見守り続けた人がいるのかもしれない、自分に亜美がいるように・・その時漠然とそう思った。
翔平の指にはあの頃と変わらず一本のリングがあった。
なつみは自分が細かいことを忘れずに覚えている人間だと思い少しおかしかった。
どんな人なんだろう・・。