マネージャーの高橋に亜美が来ていることを聞いた四人は彼女のことを必死に探したが、大勢の人の中に亜美を探し当てることはできなかった。
「亜美、会わなくて本当に良かったのか?」
「うん。
智也も思ったでしょ?
きっと大丈夫だって・・。
だからいいの。
どれくらい先になるかわからにけど、奈穂が大きくなって、友人や恋人との時間を大事にする時がきたら、また二人で行こうね。」
「ああ。」
そんな時、
「望月さん、アッ足立さん、剛です。
どうしても話したいことがあります。
時間作ってもらえませんか?」
真面目で苦しそうな声・・。
亜美は、少し前に高橋から連絡があって携帯電話の番号を教えてしまったと聞いていた。
「今、どこ?」
「スタジオです。」
「わかった、これから行くね、待ってて。」
「ごめんなさい、こんな時間に。」
「智也、ちょっと出かけてくる。」
「ああ、一人で大丈夫か?」
「うん。」
「すみません。
俺・・。
ライブに来てくれてたって聞いたら、気持ちにブレーキが効かなくなっちゃって。」
「うん。
私も、会いたかったんだよ。
あれから三年だものね。」
「どうして、来てくれなかったんですか?
今の俺たちって、どう思いますか?
ライブ、どうでしたか?」
「良かったよ。
みんな満足していたよ。
剛君はそう思わない?」
「ライブ中は頭の中それだけなんで、いつも完全燃焼してます。
だけど、その興奮も冷めてくると考えてしまうんです。
何かが足りない気がする。
そのことを四人で考えています。
でも、それが何なのか答えが見つからないんです。
翔平は何も書けないと言って悩んでます。
でも俺は、そんなアイツに言ってやる言葉すら持てずにいる。
こんなカッコ悪いところ見せたくなかった。
あなたを追い越すことはできなくても並べるくらいのバンドになりたいと思っていたのに、今の俺たちには背中も見えない。
今まで、何やって来たんだろう。」
亜美は目を閉じたまま聞いていた。
「ねえ、辛い時には辛いって言っちゃいなさい。
弱さを見せることは負けることじゃないよ。
それは、強さに育っていくから。。
みんな一緒に歩いてくれているよ。
誰もがそれぞれの場所で別々の生活をしている。
ライブに集まったあの一瞬だけが別の自分になれる時間で、それをとても大切に思っている。
私には何もしてあげられないよ。
今までだって、何かしてあげたなんて一度も思ったこと無いよ。
やっぱり『ガンバレ』ってしか言えない。」
「剛、どうした?
元気ないな。」
「春樹、俺、昨夜、望月さんに会ったんだ。」
「それで?」
「『ガンバレ』としか言えないってさ。」
「やっぱりな。
自分たちで切り抜けろってことだよ。
望月さんらしいよな。
今までだって俺たちに『こうしなさい』なんて言ったこと無いじゃないか。」
「俺って、ダメだな。
春樹、どうしてそんなに望月さんのこと、わかるんだ?」
「どうしてかな~?
それはきっと俺が望月さんのことを好きだからかな。
あの人は俺にとって特別な人だ。
好きって言葉じゃ片づけられない大切な人だ。
半分以上諦めていた俺をここまで引っ張ってきてくれたのは望月さんだから。
一番最初に翔平の話を聞いてくれた時からずっと今まで。
バンドが売れて表面的には充たされていた。
でもその裏側で擦り切れそうな心があった。
それを補いながらやってこれたのは、望月さんの『ガンバレ』があったからなんだ。
大人の男が一人の女の『ガンバレ』って言葉を心に抱いてどうにか歩いているなんて笑っちゃうよな。」
「笑わないよ。」
剛は言った。
春樹が初めて見せた弱い自分の姿だった。