『久しぶりだろ?ここに来るの。』
この声の持ち主は
顔を見なくてもわかる。
彼の少しかすれた声に
心臓が高鳴るのが分かる。
長めの前髪から覗く切れ長の瞳。
ネイビーの少し光沢のあるシャツに黒いネクタイ。
スキニータイプのデニムに
黒いショートブーツ。
椅子を引くために伸びた手には
クロムハーツのブレスレット。
揺れるたびに小さく音が鳴る。
『イェソンに頼んでおいたからね、』
お兄ちゃんがアイスコーヒーに
ストローを刺しながら言った。
「へ?」
思わず気の抜けた声が出る。
『予備校に通うとなると家から遠いし、
帰りが遅くなると心配だしね。
おっぱが毎日送り迎えしてやりたいけど、そうもいかないし…』
勝手に進んでいく話について行けず
口を挟もうとした瞬間、
彼が先に言葉を挟んできた。
『俺でよければ勉強見るよ。』