兄に続いて乗り込んだ車は
黒くて少し高そうな車で、
中はバニラの香りがした。
走り出して少し経った頃
兄が口を開いた。
『それで?落ち込んでるのは模試の結果が悪かったから?』
「おっぱ…エスパーなの?」
『あはは、お前のその落ち込みようを見たらすぐ分かるよ。』
兄が笑うと、えくぼが目立つ。
優しそうな、心配そうな目がこちらを覗く。
『母さんも心配してるよ、お前予備校にも行かないし。』
「だって予備校ってお金かかるから…」
夕陽がキラキラとフロントガラスに当たる。
ずんと重くなった心には明るすぎる。
『でもお前、大学行きたいんだろ?』
「そりゃ行きたいけど…」
『そっか…じゃおっぱがひとつ動いてみようかな?』
さっきの心配そうな顔とは打って変わって
生き生きとした兄は、どことなく嬉しそうだった。