映画「ミッシング」感想。
ミッシング、観てきたよー。吉田恵輔監督なので、重めなんだろう、とは思ってたけどやはり「ズーン」となり。この人の作品はたまにで良いな、と思いながらも、つい新作があれば観に行ってしまう、変な中毒性がある。(褒めてる)あらすじは、娘の失踪事件をきっかけに、情報の荒波に巻き込まれ、翻弄されていく母親とその家族たちの姿が描かれる、とWikipediaに書いてあった。まずは、吉田監督の作品に石原さとみが主演⁈っていう意外性。石原さとみってキラキラした映画のイメージで「そして、バトンは渡された」でもあー、イメージ通りだよって感じだったし。でも、そんな石原さとみが吉田監督に猛アピールして出演したのが「ミッシング」。なんと、石原さとみが吉田監督の作品が大好きで「この人なら私を変えてくれる」って思ったとか。個人的には、誰かに変えてもらうんじゃなくて自分が変わっていくもんだ、と思ってるけど、俳優さんのイメージを変えるのは確かに監督だよねー、と。それに、吉田監督の作品を好きって石原さとみもなかなかヤベエ奴だな、と思った。結果、石原さとみ良かった。黒板を爪でギーってやるような不快感。この監督の作品には常にそういう不快感があって、石原さとみがそういう嫌な空気だしてんの。弟に感情爆発させるシーンがあるんだけどさ、最悪なの。なんかさ、スパッと切れた傷口から血が出てるのにそこをギザギザのノコギリでさらにえぐるような演技。あー良いなって思った。弟役の森優作くん。今、ちょうど、「約束」ってドラマに出てるけど。この子、いいよね。荒川良々みたいな。良い人も普通の人も悪い人も可哀想な人もやれそう。日常にいる人。公園で座ってたら、隣りのベンチに座ってそうな。この普通っぽさ。石原さとみの弟も違和感ないのよ。あ、姉弟っぽいって思わせるのよ。いい役者さんだなあって。不快感具合で言うならば失踪した娘を探す協力をしているようで視聴率に振り回されているマスコミの描き方がエグくて、良かったよね。この感じが吉田監督の醍醐味というか。この監督、報道番組のスタッフだったことあるでしょって思わせるリアルさ。「視聴率ってなんなんすかね?」なんて泣いてた新入社員が、そんな状況に慣れていく様とか私は、好きだった。特に報道なんて、人の不幸が撮れれば、「ヒキ」があるって羨ましがられる世界。高速道路での事故が撮れたり、万引きの瞬間を撮る、とか。真実を伝える、とか伝える義務がある、とか知る権利、とか言うのよね。報道した後のことなんて関係ない。報道された側の誹謗中傷のことまでは考えない。視聴率が全て。あんなの統計学で考えれば破綻してんのにね。そんなことに、振り回されてるってテレビ局って滑稽なんだけどね。そこは見ないのよ。真実を伝えてるようで視聴者が喜ぶ構成にして、反響を喜ぶ。世間っていう見えない誰かの心を満たすために馬車馬のようにニュースを作り続ける。虚しさを感じたくないから、真実を伝えてるって言い聞かせながらね。この辺りの描き方がたまらなく良い。中村倫也の彷徨える記者感が歯痒くて良かったー。人としてまともなのよ、この記者。なのに、報道局ではウブな正義感出すなよって思われてそうなシーンの積み重ねが良いのよね。報道局の、狂った世界ぶりの描き方が好き。狂ってるのに、正義を貫いてるって思ってそうな人たち。この気持ち悪さよ。たまらない。ちなみに、中村倫也は「凪のお暇」のダメゆる男がイメージだけど、私は「虎狼の血」でのチンピラ具合も好きなのよね。今回も、良かった。こういう先輩記者、いそうだもん。名前を知らなくてごめんだけど、中村倫也と一緒にいるカメラマンのデリカシーのぶっ壊れ具合とか。控えめに言っても最高でした。なんかね、この監督の作品、だいたい、そうなんだけど、日常の出来事の違和感をずーっと積み重ねてくる。ホレホレって。あー、なんか、疲れるし、気分悪いけど、分かるーっていうね。分かりやすい救いの手なんかないの。日常から離れたい、と思ってる時に観る作品ではないけど、リアルさに頷きながら観るには楽しいかもしれない。石原さとみが日常を、自分を取り戻していく様好きだなー、と。そこに、監督の優しさを私は感じた。そういう映画。