善人が無自覚に犯す罪 | よしすけのツレヅレなるママ 映画日記

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大好きな映画の感想をメインに、読書感想や子育てについてetc…のんびりした日々をゆるゆると綴った日記です

 


朝7:30のBSリアタイ鑑賞。

朝8:00のNHK地上波リアタイ鑑賞。

昼12:45のNHK地上波リアタイ鑑賞。

土曜日の一週間分

まとめて録画してから鑑賞。


相変わらず『虎に翼』にハマっている。

これまでで一番繰り返し見ている朝ドラだ。



寅子は身近な問題に「はて?」と疑問を呈し

男女の不平等や悪しき慣習に憤る。

持ち前の天真爛漫さと行動力で

周囲の人々を上手に巻き込みながら

人生を切り拓いていく。

志半ばで去っていった

仲間たちの想いと共に。

寅子はこれまでにないタイプではあるが

新たなヒロイン像として申し分ない。


苦労して合格した高等試験の祝賀会。

《女性でありながら優秀な君たちなら特別に

我々の仲間に入れてやっても良かろう》

という主旨の祝賀会で

「困った人を救い続ける、男女関係なく」

とキッパリ言った

寅子のスピーチ感動したなぁ。



しかしながら

ここが一つの

ターニングポイントだったのだと

気づいたのはついこの前(遅爆笑)



インターンを経て

ようやく弁護士になった寅子。

しかし依頼人たちからは

「女性はちょっと」と敬遠されてしまう。


明律大の先輩・久保田が

女性弁護士として初めて法廷に立つことに。

寅子、ヨネ、轟は傍聴へ。

公判中、代議士を呼び捨てする久保田に

男性の判事や傍聴人たちはニヤニヤ。

(モンパパを唄う寅子を

男性たちが笑っていたのと同じ構図だな)

久保田の法廷デビュー

寅子の中に喜びと羨ましさと焦りが渦巻く。


寅子たちは帰りの裁判所の階段で

父の跡を継ぐため高松に帰ったはずの花岡と

偶然再会する。

花岡は婚約者を連れていた。

突然のことにショックを受ける寅子。

(ん?花岡のことそこまで好きだったっけ?)

あまりにも素っ気ない花岡の態度に

轟は驚きを隠せない。

寅子を心配したヨネは

「帰りに団子でも食ってくか」と声を掛けた。

(前までは梅子さんの役回りだったよね)



結婚していないと社会的地位を得られない。

それでは弁護依頼を得ることができない。

焦った寅子は父母に

見合い相手を探して欲しいと懇願。

両親は大喜びで相手を探すが

27歳の寅子ではなかなか難しい。

ようやく相手が見つかるも(しかも再婚)

女性弁護士は怖そうだからと

相手から断られてしまった。

(寅子は不安と焦りで視野が狭まっている。寅子の無茶苦茶なお見合い理由でも尊重してくれる両親が切ない)



万策尽きたと思われた時

寅子の帰りを待っていた人がいた。

登戸火工で住み込みで働いている

優三だった。

寅子に「ボクじゃだめかな」と申し出た優三。

寅子の無茶苦茶な結婚理由を受け入れ

独り身で肩身が狭いのは

男性も同じだからと言った。

(優三は寅子の重荷にならないよう

恋心を胸にしまったのだ)

「家族みたいな」優三さんとなら

「家族」になるのは難しくないと

寅子は即決。

(二人が結ばれることにモヤモヤ。寅子は誰とでも対等な関係を望んでいたんじゃないの?優三の恋心を知らなかったとはいえ、これじゃ優三を踏み台にしているみたい。優三の優しさに甘えすぎてやしないか?気持ち隠したままで優三は幸せになれるのか?)



直ぐに両親に報告したが

あまりにも突拍子もないことに

両親は戸惑いを隠せない。

(寅子の両親は至極善人だ。だけど寅子の結婚相手として優三は最初から眼中に無かった。元書生で現従業員だから?家族みたいなものだから?悪気は全く無いのだけど…)


寅子の望む結婚で

優三にうま味はあるのかと尋ねたハルに

天涯孤独の自分が

猪爪家と家族になることは

この上ないうま味だと優三は言った。

(やはり恋心は胸にしまったまま)

こんなことをお願いする

親バカで申し訳ないが

寅子をよろしくお願いしますと

深々と頭を下げる両親。

(結婚して苗字は変わるけど、変わらず猪爪家で暮らすのだから、寅子の生活は1ミリも変わらない。花江の結婚をひっくり返した[一般的な結婚の男女逆転]みたいな感じ。)


寅子は優三との婚約が決まったことで

弁護を引き受けられるようになった。

(あの依頼人、あんな真綿みたいな雲野先生の圧に断れ切れなかっただろうな)

裁判の後、寅子は傍聴に来てくれたヨネに

「紙切れ一枚で

こんなに状況がよくなるなんて」

結婚も悪くないと言った。

(ヨネにそれを言うか)


ヨネは「逃げ道を手に入れると

人間弱くなるもんだぞ」

と言い残し帰っていった。

(ヨネは真っ直ぐ突き進む寅子を同志と思っていただろうから、それだけにショックは大きいと思うし、表には見せないけど人を思い遣る優しさがあるだけに、社会的地位のためだけに結婚した寅子と優三が心配なんだろうな)



家族でささやかにお祝いをし

二人迎えた初夜。

優三は緊張する寅子に対し

「指一本触れないから安心して」と言い残し

まさに眠りに落ちる寸前

「ずっとトラちゃんのこと

好きだったんだけどね」と爆弾発言。

(優三さんもまた至極善人。もちろん悪気などないが気の緩みから出た本音だけに罪深い)



お互い社会的地位のために結婚したと

信じていた寅子は驚き

優三を叩き起した。


弁護士になる夢を諦めた時

トラちゃんへの想いも一緒に諦めた。

そんな自分がこうして

トラちゃんと夫婦になれただけで十分。

「見返りは求めない」と言い残し

優三は眠りについた。

当然寅子は眠れない。



冒頭に書いた寅子のキャラクターを

最初は微笑ましく思っていたけれど

ここにきてその裏面が見えてきたように思う。

人の性質は多面的だから

見る面が変われば当然違う印象になるけど

それをガラリとやってのけた

吉田恵理香の脚本の巧みさよ。


これまで朝ドラ主人公は

善良で健全なイメージで

描かれるのがセオリーだった。


だけど

どんなに善良で健全な人でも

無意識に他者を傷つけたり踏んずけたり

不用意な言葉が口をついて出たりする。


それは「誰もが持っている加害性」

『虎に翼』はそれを描いているのだと思う。

特に5月3週はこれまで以上に強く感じた。

寅子だけでなく両親、優三さん、雲野先生…

みんな善人だけど

みんな等しく加害性を持っている。


それからもう一つ

直言が銀行を退職した後に転職した

「登戸火工」という会社は

発煙筒や信号弾を作っていると言っていた。

長閑な工場で

従業員は和やかに作業しているが

火薬を扱う工場が戦争と直結していることを

忘れてはいけない。

直ぐに戦争に飲み込まれていくだろう。


猪爪家のご近所でも

金属供出が盛んに行われ始めた。

笹寿司の大将は材料が入らなくなり

店をたたみ田舎へ越していった。



しかし猪爪家はといえば

花岡のお祝いディナーに着ていくため

寅子はワンピースを縫っていた。

(ほとんど花江がやってたけど)


田舎へ越す稲さんが

お別れを言いに来てくれた時

ティーポットで紅茶を振舞っていた。


寅子は見合い相手に喜ばれようと

ハルに教わりながら

オーブンでクッキーを焼いていた。



「お国のため」

「挙国一致」

「ぜいたくは敵」がスローガン。

世間は「国」を中心に回っていたが

猪爪家に限っては

「家族(特に寅子)」を中心に回っていた。


それは猪爪家がブルジョワであるからで

戦時中でも豊かに暮らせたのは

直言が軍に関わる仕事をしていたから。

何不自由ない猪爪家の穏やかな暮らしは

戦争と表裏一体。

背中合わせなのだ。


遂に日米開戦。

これから戦争が容赦なく襲いかかってくる。

寅子を始め猪爪家の人たちは

何も知らなかったことの罪深さに

向き合わざる得なくなるだろう。


辛くなるのは目に見えているけど

そういう脚本を

いまから期待しているわたしなのであった。


『虎に翼』は

観れば観るほど発見がある物語。

観る人ごとに感想が違うのも面白い。

「X」で考察してる人がたくさんいて

毎日感心しきりだ。

こんな朝ドラもまた初めてじゃないかな。



↓『虎に翼』について4月に書いたブログ