火の用心!! | 酔渓の山暮らし日誌

酔渓の山暮らし日誌

釣り日誌でしたが諸事情から山暮らしの日記に変更します。また釣りに行けばその事も書きますが、回数は少なくなります。

明けましておめでとうございます。
新年もよろしくお願いいたします。

さて皆さん正月忙しかった方、ゆっくりされた方、

私の暮れは、火で締めくくりの年となりました。



以下は私の遭遇した火事の実録です。

(家主さん近所さん出動した消防団に村の皆様
皆大変ですが、今後何かの参考なればと書いておきます。

また写真は全て鎮火確認後、翌日に撮影しました。)




今日も世間では火事のニュースですが他人事ではありません、それは木屋平村でも・・・・・


12月28日
今年もこの日は仕事収めでした。

積もっていた雪も二日前の雨で集落周りは大方溶けて、朝から乾燥した北風の強い日でした。


朝から仕事で使うトラックやピックアップの洗車をして、現場を見回り、


大掃除も一段落
一息ついてコーヒーを啜っていたその時に事は起こりました。



その時、私の隣でコーヒーを啜っていたわが社のボス兼消防班長の電話がなったのです。


「もっしも~し」


「火事だ!日が出たぞ!」


「え?どこ!?」


わが社の社員の半数は
各地区の消防団に加盟しておりますので各員に緊張が走ります。



「T地区!A宅だ!」




マジですか?
・・・私の所属分団の地区です
・そして知り合いの家だ・・・・





火元がわかった時点で
消防団員社員は蜘蛛の子散らすように
飛び出し自分の車へ走ります。



私も、大慌てで飛び出して

徒歩30秒の自宅へ
(私の家は事務所と同じ敷地です)



常時、部屋の入り口に掛けてある消防の制服とヘルメットをひったぐり

消防長靴抱えて車を発進させます。



火事場は私の地点からは谷を挟んで向かいの集落です。


T集落入り口まで来ると
我々、第一分団の消防車が準備をしているのが見えました。

移動ポンプ登載の消防団車輌です。


どうやら駆けつけ第一陣のベテランさんが
消防車を車庫から引っ張り出して来たところのようです。


先ずは消防車が行かなくてはどうにもなりません。


私も、ヘルメットを抱えて消防車に飛び乗り
続けて到着した若者の先輩団員jさんも
車内に飛び込みました。


ベテランF氏の運転する消防車は狭い山道を爆走します。
このあたりは道に馴れたベテランでなければ出来ません。



そして消防車のいく先は、火事場ではありません。

消火には
水がいります。


何よりも速く大量の水を確保することが最優先なのです。


(今回は第一報で、人は全て逃げ出しており要救助、怪我人は無しの確認が出来ていました。)



もっとも近い「水源になりうる場所」

これは地元、とくにベテランのおじ様方が一番良く知っています。


今回は火事場から50mの沢に狙いを決めました。
直近の防火水槽よりも100m以上ホース距離を短縮出来ます。

今なら雪と一昨日の雨で雪解け水が入り水量もあるはずです。



(後で知りましたが念のため、先回りでベテラン1名が消防車より先に水利確認に走っていました。)




(写真は取水ように
土嚢と地形を利用して応急の取水堰を作った状態です。)


沢に到着!狙い通り水も充分流れています。
が!?しかしポンプの取水を沈めるには水深が足りません(>_<)

何処に淵はないかと上下を見回りますが有効な場所はなし


仕方がないないので
私とjさんの若手二人で
小さな橋の上流に飛び込みます。

(12月の暮れに1000m以上級の山から流れる、雪解けの谷=バカほど冷たいのです)




そこら辺の石やら流木やら板っ切れを手当たり次第に移動して、

取水出来る応急の淵を作りました。
僅か10分程度ですが
雪解け水は寒すぎます。

足が痺れて這い上がるのが上手くいきません。


這い出るように谷から、道に出ると
今度はポンプの設置



車載ポンプを消防車から降ろしてホースを接続します。




このくらいの時点になると第2陣も駆けつけ人数も増えて来ます。


ポンプ操作に不慣れな私は

ホース延長に走りました。
(つまり頭より体力のいる仕事です。)




ポンプから消火場所までホースを抱えて次々に接続しながら走るのですが


ここは急勾配の山村集落
狙う放水予定場所は急斜面のはるか上


しかも歩道側は風に煽られた火が回っていて接近不能
40度以上勾配の山の斜面を直登するしかありません。

ホースを担いで、靴底に鉄板の入った消防靴で駆け上がるにはきつい斜面です




ほんとは風上から近づきたかったのですが、風上では母家が燃え
朝からの強烈な風に煽られているので危なくて近づけません。


火は既に裏のヒノキ山に飛び火していて山火事が始まっています。

現在展開しているホース1本では
母屋まで手が回りませんし。
本職の消防でなければ危険過ぎます。



この時点で消防団の仕事は山の延焼を食い止めること

(実は本職の消防隊は朝から飛び込んだ救急搬送で村から出払っており、麓の本署から応援部隊が駆け付けるまでには最短でも1時間以上かかり、
それまで村の消防団だけで持ちこたえて食い止めなければ行けないのです。)

一度山火事が広がれば
次々に飛び火して一週間や二週間は燃え続け、被害はどれだけになるかわかりません。


まさかの休みなしで
年越し消火活動は勘弁です。





火はここから山の中に入って行きました。





頑張ってホースを延長して行きますが

既に林内は煙りが充満し
視界もだいぶ悪くなっております。

うっすら見えるトロッコのレールを手掛かりに
私と若手のKさんベテランのFさんの3人でホースを延長していきます。

下からは続々到着する応援の団員が
追加のホースを運んでくれています。

村の消防団にマスクなんかないので
皆ゴホゴホむせかえりながら
僅かな煙の切れ目で息をついで作業しています。

そしてなんとかベテランFさんの指示した放水ポイントまでホースを延長して
「筒先~!!」と怒鳴ります。



ホースは延長出来ても
放水の筒先(放水銃)がなければ放水開始出来ません。


ところが筒先が上がって来ません。
放水ポイントから下を見ても煙りで視界がないので全くわからない。



私はその場をKさんにお願いして確認に降りると
中腹地点で筒先を背負った団員が喘いでいました。

急斜面を駆け上がり煙りで息が続かず
限界だったようです。

その場で筒先を引き継ぎ
一旦煙の薄い所まで退避して貰います。


ふたたび煙と火の粉を突っ切ってへ上へ上がり放水準備はなんとか完了。



いよいよ放水を開始するのですが
私はまだ先頭で筒先の経験はありません。何度か出た火事の出動でも後方支援ばかりですが、
ビビっては要られません、事態は急を要します。
自分に気合いを入れてから



「放~水~!!開始~!!」
思い切り号令を飛ばします。




「放水~!開始~!」
下の方から
復唱と伝令を繋いで行く声が聞こえます。


しかし水が来ない
ポンプのエンジン音は聞こえますが、高低差が大きいのでなかなか水圧が上がらない様です。



こちらは炎の前まで前進して水を待ちますが
何せ本職と違って
化繊のウィンドブレーカーとヘルメット一丁で、ボンベもマスクも防火服も無しです。
(ぶっちゃけ焦げる、熱い)


思うように水圧が上がらず何度目かの後退したとき水が来ました。








もう必死で寒さとか疲れとか全然わりません。
とにかく手当たり次第
火を消しますがさっと消しただけでは
しばらくするとまた燃え上がります。


地面ごとじゃばじゃばにする気で放水しないと鎮火しないのです。



大まかな作戦は
「風による延焼を食い止めるために
進んで行く炎の先頭から潰す

放水の届く範囲を消したら
またホースを繋いで延長して火元の奥へと攻めて行く。

この間に本署の消防が到着してくれたら母屋は本職に任せる」のが現場で建てた作戦です。


このとき我々は必死だったので気づいていなかったのですが

対岸の山に入っていた別の団員から電話で
対岸から見ると消火中の場所から東へずれた別の山からも煙りが見えると
緊急連絡が入っていました。



前線からは人手は裂けない

後方支援隊から別動班が向かいます。



消防団到着から2時間後、ようやく本署の消防隊の準備が整い母屋の鎮圧が始まりましたが、既に殆ど焼け落ち燃え尽きています。

さらに応援のヘリコプターも既に離陸急行していて山火事の鎮圧に向かうとの連絡が入りました。


我々も第一の山火事を大方鎮圧したので、残火処理は本職に任せて
飛び火地点へ応援に回ります。



ホースの引けない山火事をどうやって消すかと言えば

先ず日の進む先の
落ち葉、枯れ枝を地面から退けて
簡易の防火帯を作ります。

そうすると火は進みが鈍り勢いが落ちますので
そこで叩いたり、踏み消したり、スコップで土をかけたり

とにかくあるものと、思い付く限りの方法で消して行きます。



こうして先行した別動班が火の拡がりを抑えてくれている間に、我々若手要員が「ジェットシューター」と言われる
でっかい背負い式水鉄砲を担いで上がり
残った火種をやっつけるのです。

このシューターは満水でおよそ20kg

水源から道なき急斜面を行くには効いてくる重さです。


先程までの消火で既に体力を8割方消耗していますが、若いもんが動かない訳には行けません。

ついでに燃えているのは去年わが社が切り捨て間伐に入った山

地形の利も知っているので
本職も我々消防団を頼りにしている様です。



先程のシューター1個は
使い方にもよりますが
10分少しで使いきります。

そうすると、また下まで降りて給水して火事場まで登り返すのです。

このため比較的歩きやすいルートに
シューターを背負った団員の補給線行列が出来て来てます。



このあと4往復目の消火を終えたとき
膝から力が抜けてへたりこみました。

時間は約15時
出火、駆けつけから大方4時


緊張と疲労
長時間の煙の吸いすぎでついにダウン(>_<)


ほぼほぼ消火も終わり
本職の隊員も残火処理に回って来てくれましたので、持ち場と注意事項を引き継いで私はリタイア


その30分後に鎮火宣言が出て
消防団も解散

被害は母屋、納屋含め3棟が全焼
山林3㌶(新聞発表)が延焼


人的被害は無し


そしてなんと
このお宅、私も交流のあった移住者さんのお宅で山村ゲストハウスを作ろと
2年以上かけてセルフリホームされていて、


なんと!なんと!2週間前に完成したばかりだったのです!(゜ロ゜;




怪我人がなかったのが救いですが

なんと言ってよいのやら・・・・






まだまだ寒い季節、
火を使うこともおおい時期ですが
くれぐれも火の扱いには注意してください。
私も気をつけます。