南東北ツーリング(その4)/鉄道では行きづらい駅を巡る | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

鉄道全線完乗をした私は駅も好きで、気になる駅をツーリング中に訪問することが多い。本来ならば駅には列車に乗って行くものであろうが、私が行きたい駅は鉄道では行きづらい。ならばバイクでそれらを巡ってみよう。

私はいわゆる”乗り鉄”でもあり、列車に乗りながら「あっ、この駅面白そう」と思うことは数多くあるのだが、もし一たびその駅で降りたならば、次の列車は数時間後、下手をすると半日以上待たされることもあり、おいそれと降りられないのが僻地の路線。テレビの旅番組のように、「
ちょっと、この駅で降りてみましょう」なんて芸当は現実的に不可能なのだ。

 


JR只見線の主要駅のひとつ、只見駅

只見駅の時刻表

これではおいそれと途中下車できない

 

また、廃線となってしまった路線にポツンと残された廃駅も好きなのだが、鉄道の路線が廃止になってしまった以上、鉄道でその駅に行くことはできずアクセスは非常に悪い。そんな駅を巡るに最適なのがバイク。山深く入って行く私のツーリングでは、アクセスが難しい駅ほど、バイクツーリングとしての楽しみも加味されるから相性もいい。今回はそんな駅を数多く訪問してみた。

1.ミニもぐら駅(湯檜曽(ゆびそ)駅/JR上越線/群馬県)
 群馬県の水上駅を出て新潟方面に向かう一つ目の駅がここ。この駅の隣の
土合(どあい)駅はトンネルの中にプラットホームがあることで有名な、いわゆる”もぐら駅”だが、そのひとつ手前のこの駅も小規模ながらもぐら駅。この駅も土合駅同様に新清水トンネルの中に下り線ホームがあるが、462段の階段を昇り降りしないとならない土合駅とは違って、湯檜曽駅は楽。

 

湯檜曽駅下り線ホームは新清水トンネルの中にある

左に行くと駅舎、右がホーム

駅舎とホームは100mほどで土合駅と違って階段無し

長大な新清水トンネルの長さがわかる表示

湯檜曽駅はトンネルに入ったすぐ先にある

 

地下鉄の駅はほぼ全てもぐら駅だが、そんな駅に慣れていても、全国に数か所しかない鉄道本線上のもぐら駅は、誰もいないトンネル内に一人残された感が漂い、ゾクゾクするものがある。

 

駅舎はちょっと洒落たデザイン

上り線ホームはこの駅舎のすぐ上の地上にある

 

2.道端の小さな小屋(旧田子倉(たごくら)駅/JR只見線/新潟県)
 
深い深い無人の山岳地帯を走る絶景快走路の国道252号。この道を新潟方面から福島に向かって進む。ここまでずっと登ってきて、あと数キロで田子倉ダムという地点まで来ると、道路脇に小さな小屋のような建物がある。ちょうど道路は直線なので何も気にしなければすっ飛ばしてしまうほどの存在だが、これが2013年に廃駅となった田子倉駅の出入口のようだ。

 


左を走るR252のすぐ脇にこんな小屋がある

これが旧田子倉駅の出入口

板で封鎖されているが、節穴から覗ける

この階段を下って行けばホームに至るのだろう

 

周辺に以前集落があったと思えない無人の山奥になぜ駅を作ったのだろう。またそれ以上に、まだ廃駅になる以前、二度この道を走ったことがあるのに、道路横にあるこの駅の存在を全く気にとめなかった私自身にも不思議だ。


巨大なスノーシェッドが連続する深い山岳地帯の先に、旧田子倉駅があった

 

3.最高の雰囲気を醸し出す廃駅(旧熱塩駅/旧国鉄日中線/福島県)
 熱塩(あつしお)駅は1984年に廃線となった旧国鉄
日中(にっちゅう)線の終点の駅。ここは去年も訪問しており、今回は二度目。期間を置かずに再びここに寄ったのは、この駅の雰囲気が抜群に素晴らしいこと。洋館のようなデザインの駅舎と駅前にスクッと立つ大きな木。休憩に持って来いのシチュエーションだ。現在は日中線記念館として数多くの資料や品々が展示されているし、鉄道公園として周囲の整備状況も申し分ない。

 

瀟洒な雰囲気すら漂う駅舎

かつて線路が敷設されていた側から見る

 

ところで日中線とは変わった路線名だなぁ。この駅の先に知名度が殆ど無い日中温泉から取ったこともちょっと不思議。更にそんな路線名を付けながら、この路線の当時の運行本数は非常に少なく、朝と夕しか走らなかったことから、「日中走らない日中線」と揶揄されたことも笑い話とはいえ何とも皮肉。

4.重厚感抜群(旧高畠駅/旧高畠鉄道高畠線/山形県)
 かつて山形県にあった旧高畠鉄道(後に山形交通となる)
高畠線(1974年に廃線)の主要駅の一つがこの旧高畠駅。この駅舎は廃駅としては珍しい石造りの駅舎で、この重厚かつ豪奢な駅舎を見たくてやってきた。たまたま遭遇したこの駅を管理していると思われる方の話によると、この石は近くで産出された高畠石を使っており、重く硬い石だそうだが、耐震性の不安から現在は駅舎内に立ち入れないという。

 

石造りの旧高畠駅舎は高畠鉄道の社屋でもあった

赤いポストもいい味出している
 

かつて鉄道が走っていた事実の裏には、多くの場合その地域の産業と結びついている。ここも製糸産業や木材、石材などが運搬され、時代の変化で産業も輸送手段も大きく変わった。旧高畠駅の駅前通りには店は殆ど無く、人影も見られない。そんな社会の変遷をも感じさせる駅舎だった。

5.こんな山奥に駅が(面白山高原駅/JR仙山線/山形県)
 将棋の町として有名な山形県天童市の市街地から天童高原に向かう。ここにあるスキー場の中を突っ切る道を進むと、道は狭まり険道になり、更に山深く入って行く。こんな
熊が出没しそうな山奥に本当に駅があるのかと思いながらも突き進むと、あったのが面白山高原(おもしろやまこうげん)駅。

 

険道の先は仙山線を跨ぐ陸橋

その下が面白山高原駅

宮城県と山形県を結ぶ仙山トンネルを出た先にこの駅がある

 

狭い峡谷沿いに位置した観光目的の駅で、そこそこの大きさだが、紅葉の季節の時ぐらいしかこの駅で乗降する人はいないのではないか思えてしまうほどの地にある、正真正銘の秘境駅だった。

 

面白山高原駅の隣(かなり離れているが)は有名な山寺(立石寺)がある山寺駅

ここに来ると多くの観光客がいる
 

バイクの機動力を活かして、鉄道の旅では容易に訪問できない駅を数多く巡ったツーリングだった。アクセスも良く、設備も充実した「道の駅」の存在はツーリングでも重宝しており、私もトイレや食事でよく使わせてもらうが、鉄道の駅には道の駅には無いその地域の歴史が詰まっている。多くの人で賑わう道の駅を離れ、誰もいない小さな駅でかつてのこの地の姿に思いを馳せるのも、私のツーリングでの楽しみのひとつとなっている。