マンション大規模修繕奮闘記(その3)/いったいいくら掛かるのか | 直球オヤジの自由奔走生活

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座右の銘は「"行きたい"、"やりたい"、"欲しい"と思った時が"その時"」。55歳で早期退職し、高齢者と呼ばれるまでの今が"その時"。趣味のバイクや自転車は年齢的に待ったなし。エコノミーな生活で趣味を楽しむ。これをどう追い求めるかが、このブログのメインテーマです。

マンションの大規模修繕工事で起こったこと、知ったこと、感じたことは数多くあるので書き切れない。そんな中でも最大の関心事は、やはりお金のこと。いわゆる「老いるマンション」における修繕積立金不足問題が社会問題化しつつある昨今、私の住むマンションではどうだったのか、いくら掛かったのかその点に触れてみよう。

マンションの大規模修繕工事における苦労は多い。例えば、工事用の足場を組む駐車場に停めてある車をどこに移動させるか、ベランダの内側も塗装し直すが、そこに置いてある私物を全て片付けてもらわなければならない。こういうことを全世帯に徹底するのは管理会社の役目だからまあいいとして、やはり費用、つまりお金のことは最大の気掛かり。果たして今ある修繕積立金で賄えるのか。前回書いた
エレベーターのリニューアル工事で1000万円使ってしまったし、大丈夫だろうか?

大規模修繕工事にいくら掛かるのか、総額で述べてもマンションの規模で大きく違うので、ここからは一戸当たりに換算して書く。ネットや本で調べると、一般的に概ね
100万円前後と書かれているが、マンションの形態や規模、何回目の修繕かで大きく異なるし、今や物価上昇に伴い人件費や資材もその影響を受けているはず。私の住むマンションは戸数が非常に少ないし、今回は二度目の修繕だから、1回目の修繕時より手を付ける部分も多く、痛みも進んでいる。つまり費用がかさむ要素が多い。これは心配だ。因みに17年前に実施した1回目の修繕工事では約90万円(消費税5%込み)だった。今回はどうなるか、見積りが出るまで気が気でない。

正確な見積りのための業者によるチェックだけでなく、マンション側としてはこの機会に日頃不便に感じている点にも手を加えようと、駐輪場の屋根の増設や、駐車場の整備、古くなった網戸や表札の取り替え、共用スペースの照明の変更などいくつもの追加工事を元請けに要望する。

そういうやりとりを経て、詳細な見積り原案が出て来た。一項目づつ説明を受け、チェックしながら質問を繰り返す。そこに
元請けから管理会社へ支払う手数料のようなものが含まれていた。管理会社は工事に直接関わらないが、代替駐車場を探したり、各戸への連絡などで手を煩わせることになるのだから、それをタダでやってくれとは言わない。「払うべきものは払うから、バックマージンのような不透明な形にしないで見積書に明記して」と事前に要望していた。しかし改めて考えると、管理会社がやる仕事ってそれほど多くない。近隣からクレームが来ても、元請けが飛んでいくそうだ。それなのに、見積りの案には元請けから管理会社へ「総合管理渉外業務」の名目で100万円近い手数料がシレっと入っていた。その場に管理会社も同席していたので、「管理会社がやる仕事ってそんなにあるの?代替の駐車場を見つけるくらいじゃないの?」と追及する。結果、最終的に半値に落ち着いた。私からすればそれでも多過ぎると思うが、まあ管理会社との今後の関係もあるから、その程度で矛(ほこ)を収めた。

こういうやり取りを繰り返すが、基本的に値切ろうという気は無かった。交渉における基本方針は、実施すべき工事には「サービスしてよぉ」などと
根拠も無く値切らず素直に支払い、無駄なところで削れるところは削る。例えば、作業者のトイレだが、歩いて数十メートルのところに小さな公園があり、そこの公衆トイレを使ってもらうということで仮設トイレは設置しないとなった。そうして出て来た最終結果は、一戸当たりに換算して約125万円。この額は決して高くないと感じた。2回目の修繕工事だし、本来なら含まれない改良改善的な追加工事も含んでいる。17年前の1回目の修繕では、大したことをやっていないのに、消費税5%時代で90万円ほど。そういうことも含めて考えれば、個々の項目の妥当性は素人の修繕委員にはわからなくても、その総額費用に違和感は感じなかった。なによりも今まで何度も元請け業者と話している中で、「この人(元請けの建築士)は俺たちをカモにしようとしていない」と感じとっており、いわゆる「ボッている」感はなく、集計された数字はそのまま受け取った。

私の住むマンションでは、1回目の修繕工事後の修繕積立金残高を見て「このままでは次回の修繕は危うい」と懸念し、
積立額を引き上げた。その成果もあり、これまで長年積み立ててきた金額で今回の費用は十分賄える範囲のものだった。しかし、いつか起きるかもしれない突発的な不具合や大地震に備え、ある程度の額を残しておきたい。見積書を手にして算段すると、それにも何とか対応できる見通しが立った。こうして修繕工事の細部仕様とその費用、工事日程などがまとまった。そして後日、マンション管理組合総会に諮り、無事に決議された。

途中は割愛し数か月後、工事開始となった。工事中に建屋外壁全面に貼られたタイルの浮きが予想以上に広いことがわかり、一部工法を変更したりして追加費用が発生したが、最終的な費用トータルに対する影響は軽微で、その他変動した費用も含め一戸当たり
約130万円ほどに収まった。

修繕委員においては面倒なことはあったが、それでも
寒い中で作業をしている職人さん達の姿を目の前にすると、その程度ことなんか大した苦労ではないと思えてくる。居住者の中には会社勤めで忙しい人もいる。ならば、私のようなリタイアした暇な人間がやればいい。長年勤めていたから、交渉やチェック(荒探し?)はお手のもの。それでもややこしいことは起きるが、かつての仕事でも煩わしいやりとりが多かったことを考えれば、この程度のことは大したことではない。こういう点においては、若い人より高齢者の方が経験豊富で得意かも。こうやって高齢者を上手く活かせれば、集合住宅という共同体の中で世代間で持ちつ持たれつの関係となっていいんじゃないかと思う。

今回の大規模修繕ではコンサルを雇わず、また管理会社にも殆ど依存せずに直接元請けと交渉や協議をしたおかげか、業者間の間接的な費用(
バックマージン)を抑えて比較的安い費用に収まっただけでなく、管理組合側の要求を直接業者に伝えて協議し、それに対して忠実に対応してもらえた。但し、このやり方は管理組合側としては第三者に丸投げできないので手はそれなりに掛かる。だから修繕委員側に意思と根気と覚悟がないと腰砕けになってしまうかも。

無事に工事を終え、マンションは再び初期頃の輝きを少し取り戻した。次回の修繕工事はより一層難しいものとなるだろうし、私はもう生きていないかもしれないが、後は次の世代に託そう。